森から始める家具づくり、はじまりました

ふだんお世話になっている、マニアックな住宅や店舗を手がけている㈱会社アーケンの藤原社長の企画で、新元号「令和」が発表された日に、旭川北部の江丹別に行ってきた。

江丹別といえば、「世界一の村」を本気で実現すべく飛び回る、ブルーチーズで有名な伊勢ファームの伊勢昇平さんの暮らすところ。伊勢さんはどんどん移住者を増やしていて、冬は旭川で一番寒いところなのに、最強にアツいというのはよく知られているはなし。

その伊勢さんの森に入って、地元で新築される建物に使うシラカバ材を切って、人力で搬出しようというのが今回の企画。藤原社長や、毎度おなじみの木こりの清水省吾さんとは極秘の「シラカバプロジェクト」でもご一緒していて、その一環としてもマストイベントだった。

4月1日というのに朝の気温はマイナス10度くらい。7時に雪に覆われた牧草地に集合して結団・出陣式。藤原社長は「建築や家具はどこのものを使っているのか、なかなか見えにくい。でもそれをアピールしていきたい」と挨拶された。 食べるもの、特に野菜とかお米、魚なんかはどこの誰が作った・獲ったものか気にする人が増えてきたけど、林産物はそうじゃない。でもこれってやっぱり、変だなと思う。

「木は口に入れるものじゃないから」と言う人もいるけど、これほど人間の暮らしに密接な資源で、これなしに生きていくことは不可能で、持続可能性を考えたら木質資源を効率的・合理的に活用せずに地球を延命させることはできないのに。

「自伐型林業」を〝漢気〟で展開する清水さんのスタイルもまさに同じことだし、「顔の見える、ここにしかないもの」を繋いでいくことが使命の旭川ゲストハウスとしても、ドストライクな考え方。

今回のイベントでは、家具職人や旭川大の学生さんやハンター、札幌や旭川の設計士さん、木こり見習いなど、めっちゃ幅広い顔ぶれの25人が参加。みんな、顔のみえるものづくりをそれぞれの分野で実現したいと考えているアツい方々ばかりだった。

みんなで手分けして伊勢さんの森に入り、まっすぐ伸びて6mくらいあるシラカバがないか、探し回る。いくつか候補を上げて、いざ選定。太さ、周囲の木々とのバランス、風の通りの見極めなどなど清水さんや藤原さんらが意見を出し合って、一本に決めた。

樹齢60年くらいで、径が40センチ弱もある大木。あと十年もしたら寿命を迎えるであろうこの木に寄り添い、清水さんは「木こりとしては腐らせたら負け。切らせてもらっても森への影響は大きくなさそうで、あと十年は生きる命だったとしても、大事に生かすことにしましょう」と参加者に呼びかけて作業に入った。

まずは2m弱積もっていた、根本近くの雪を掻きまくった。準備ができると、清水さんがアイヌ式の祈りで「いただきます」を唱え、その巨大な窪地に入り込んで、切り込みを入れていく。1ミリの狂いが、木の頭が着地する場所で1~2mのずれにつながる繊細な仕事。なんども目視で角度を確認する。少しずつチェーンソーの刃を差し込んで、クサビを打ち込む。木こり見習いのメンズ2人に向けて「あらゆる危険を想定する。『かもしれない』でやらないと、命を落とすから」と実地指導しながら。そして最後の一伐りで、狙い通りの角度で倒した。沸き起こる完成と拍手。清水さんはハイテンションんでガッツポーズをした。命をかけた緊張から解き放たれて、全員で「収穫」を喜ぶ。

木の命をいただく、まさに「収穫」の瞬間。ここから見て、ここでしかできない家具をつくれるとしたら、これ以上のものづくりはないんだろうなーと思う。施主は一人だとしても、それを今回みたいにみんなでシェアすることで、木や林産物への接し方も変わってくる。

伐って終わりとか、使うだけとか、そんな次元ではなく、「上流」と「下流」、木こりから製材、メーカー、販売者まで一本につながる素晴らしさ。この体験やものづくりをこそ、見せていきたいし、売っていきたい。豊かな資源があって、プレイヤーがうじゃうじゃいて、適度にくすぶっていて。その旭川だからこそできることっていっぱいある。

終了後は、伊勢さんや江丹別の「あらかわ牧場」、まちなかの「ジャパチーズ」の超絶おいしいチーズをたらふく乗せたピザをみんなでいただく。そしてみんなで、森づくり、地域づくりの可能性をかみしめたのでした。ごちそうさまでした!幸せ。