愛される「アイスプロジェクト」

ゲストハウス「旭川公園」のテーブルづくりで相談しているのは、アイスプロジェクトという商号で個人事業をされている家具職人の小助川泰介さん。脂ののった30代後半で、家具の世界に入る前に、大切な木材が短寿命で使命を終える状況に違和感を感じられ、「無駄なく、長く愛せるものを」という思いで制作されている。

工房はゲストハウス予定地と同じ旭川市の永山地区にあって、今まで2度お邪魔した。ほんと、繊細な手仕事の数々を作り手のそばで見られるって、幸せな気分になる。旭川家具工業協同組合がやってる旭川デザインセンターのショールームを見に行くのもいいけど、オープンファクトリーみたいな形で、それぞれのメーカーや職人さんの生産現場を訪ねてみるのも楽しい。これは産地ならでは!

できあがった家具って、家具屋さんやセレクトショップで見たとしても、その産地や、作り手のストーリー・思いなんてほとんどの場合、分からない。いまの流通のシステムからうするとなかなか難しいところはあるから仕方ないけど、いかにももったいない。〝ロス〟が大きすぎるし、消費者は生産者の顔まで知れると嬉しくなるはずなのに。

ゲストハウスでは、旭川家具をばんばん置いていく。そんで、それを作ったのはどんな人でどんな背景をもって、どんな技術がそれを可能にしているのか。できる限り全部見せていきたい。産地やエリアのファンを増やす上ではめっちゃ大事なことだろうと思うー。

初めての冬

旭川に来る前、地元の人に「冬は経験あるの?」「厳しさを知らんっしょー」と散々言われたもんだけど、一度経験してみて(1シーズンしか知らないこそ)、そんなめちゃくちゃなものじゃない、と断言できる(今のところ)。よく言う話だけど、本州の風の強い地域のほうが、震えるほど寒い感じがする。

旭川公園ゲストハウスの予定地の周辺

もちろん、いろんな準備は必要で。子どもの分まで含めた手袋・帽子・スキーウェア・タイツなどなど。あと車も大変。FR(後輪駆動)のミニバンで旭川にやってきたけど、これまで秋口に2回、雪や泥にはまり、周囲の皆さんにレスキューしてもらった。いまどきの高性能チェーンをしていても、まったく歯が立たない局所的な場面はあった。借金を長い間払うのも、自営業を始めるうえで健全ではないので、12月頭に4WDに乗り換えた。これまで仕事用としてはスズキのスイフトに乗っていたけど、ちゃんとした4WDのあるスズキの軽トラ(キャリイトラック)に換えて、事なきを得た。ただ、4WDのミニバン(日産・ラフェスタ)に換えても3回、はまって立ち往生してしまったけども。

除雪道具もリサイクルショップで買って、毎朝雪かきして、車2台の雪や氷を落として、暖房をかけて外出に備えないといけない。暖房のない徹夜構内バイトや、スノーキャンプ、森遊びをするには、それなりのギアもそろえないといけないし。

会社員をやめて、こういう出費はめちゃくちゃ辛かったけど、それくらい。毎朝の労働は慣れてしまえばアパートなのでたいしたことはなし。「冷たい」と思うことはあっても、鼻毛はついに凍った体験はしなかった。外でおしっこをするわけでもないし。あ、二回ほど経験したホワイトアウトは冗談じゃない危険さだったけど。

やっぱり大変なことより、身近に見えるダイヤモンドダストや霧氷、たまにくっきり見える大雪山系なんてのは、辛さを吹っ飛ばすほど、息をのむほど、美しい。移住して良かったと思える。

北海道の人は寒がりで、暖房がんがん効かせて半袖でアイス食べてるみたいによく言うし、あんまり外に出ない人が多いのも確かだろうと感じた。ただ、どう楽しむのかについていろんな機会があれば、もっと身近な魅力に地元の人が気付けるんじゃないかなー。雪は厄介なものだし、雪山が生活道路にせり出して交差点が危ないし、雪下ろしで人命が失われる。でも、雪が降ることはどうにもならない。じゃあ、エイヤで楽しむしかない。

2月10~11日に当麻町でやったスノーキャンプで、参加者が感想として話していたのが「地元の人の中で、冬を楽しさに気づく人をどう増やしていくのかが大事だと思う」と。まさにそれ。外から、冬の魅力を求めてやってくる人に対して、地元の人で楽しんでる人が一人でも多ければ、間違いなくいい作用があると思う。

と偉そうなこと言っておいて、何年かたってここの生活に慣れてしまって、違うこと言ってるかもしれないけど・・・・

ご迷惑をおかけしました

公式サイトを新しく公開したはいいものの、なんらかのトラブルで閲覧できない状態が続いていました。ウイルスの可能性が指摘されたものの、それも確認できず、理由はよく分からないままで、少し気持ち悪いですが・・・。 でも気を取り直して更新していきますので、引き続きよろしくお願いします!

ずっといたくなる地元の愛されカフェ

いま仮住まいしている永山地区のアパートから10分くらい行くと、東旭川町ってところがあって、旭山動物園もあるし、永山よりもカフェがたくさんある。どこかのタイミングで開拓しないといけないなぁと思っていたけど、地元の農家でデザイナーの坂井寿香さんと顔合わせする時に、「りむカフェ」を紹介してもらってお邪魔した。

すごくゆったりしたシンプルな空間、とかではない。開放的なガーデンがあるわけでもない。周りは幹線道路と住宅という立地。本や雑誌、雑貨がたくさん置いてある。なのに、というべきか、だからこそ、というべきか、適度な「包まれ感」と「迷いのない空間づくり」があって、気持ちいい。雑貨屋さんでもあり、まるでお菓子やさんや図書館でもあり、店主の人柄がダイレクトに伝わってくる。

「仕事でも読書でも、一人の時間を大切にしてほしい」という思いから、一人ひとりがじっくり時間を楽しむ空間づくりがある。読書や作業に適した机、ほの暗い照明、薪ストーブ、どれをとっても心地よい。

そして、お客さんとの距離の取り方がすごくいい。一人で静かにしたい人にはそれほど干渉せず、お客さんからアプローチすると、いろんな話に花が咲く。地域の、おもしろい人たちを楽しんで紹介されているのも◎。店主夫妻に「また会いたい」と思える。なかなかこんなお店ないので、「りむカフェ、行きたいなぁ」とほぼ毎日思う。

上川に富永さん来たる!

11月の終わりに、八王子で公園経営をされている「NPOフュージョン長池」の富永一夫さんと、同じく公園づくりの活動をされている牧野ふみよさん、札幌在住で月形町で「コテージガーデン」を経営されている三石浩司さんが、こっちのほう(上川地方)にいらっしゃった。

富永さんは多摩ニュータウン南西部にある八王子市の長池公園を中心に管理・運営されている。豊富な経験をいかして「公園経営学校」なるものを主宰されていて、全国各地に出向いて、すてきな公共空間をつくる同志を育てていらっしゃる。この業界ではとっても知られた方。その富永さんが小ブログをご覧になって連絡をくださり、上川駅前に投宿するというので、お会いすることになった。恐悦至極とはまさに、このためにある言葉だわ。

大雪森のガーデンのガーデナーさんたちも集まって、おいしーい居酒屋で一次会。富永さんの即興講義が始まる。人財育成、マネジメント、公共空間のあるべき姿、行政とどう一緒にやっていくか・・・。次々に淀みなく言葉が紡がれ、もう圧倒されるしかなかった。(恐れ多くて写真撮りそびれた・・・)

二次会は近くのスナック「男」。このほかにも魅力的な名前のスナックはあって、上川楽しいなぁ。至るところに高梨沙良さんの応援のぼりがあって、地元感がある。宿は、鉄道マニアも秘境駅を訪ねるために利用するという、「くうねる たにぐち」さん。お世話になりました。 

富永さん、牧野さん、三石さんの力強い応援をもらて、もう百人力だわ。三石さんは同じ道民として、その後もあちこちでその後もお世話になりっぱなし!

薪を運べば、いるわいるわ

ゲストハウス「旭川公園」の予定地の近くにある、陶芸家さんの登り窯でお手伝いした時のこと。農業用のコンテナにぎっしり積まれた薪(カラマツ)をひたすら窯の中に入れる作業があって。そのまませっせせっせと入れたらいいんだけど、けっこうな確率で、いろんな虫さんに遭遇して、燃やしたくないのでガン見してしまうのであります。

薪ストーブを導入する家庭でも、例えば旦那さんは大好きなのに、奥さんは虫が部屋に入るのがいや、というのはよく聞くもので。虫は薪のわすかな隙間ですやすやと越冬するので、これは避けられない。クモとか、なんかの幼虫とかが多いのかなぁと想像していたけれども、実際はそんなもんばかりじゃないんだと、薪運びの作業で知った。

一番多かったのは、トンボ。糸トンボみたいなやつで、ウィキペディアによると、「オツネントンボ」というらしい。トンボが越冬するなんて、知らなかったなー。最初は感動して、じっくり見ていたけれども、あまりに多すぎて作業効率が悪くなるので、すぐに食傷気味に(笑) けっきょく、30匹くらい軽トラの荷台に入れて持ち帰ったけど、知らない間に行方不明になったり、雪の中でお亡くなりになったりしてしまった・・・。

あと、多かったのはハチ(ジバチというらしい)、それとクモ。蛇の抜け殻なんてのもあってびっくり。ある程度、心しておかないと、いきなり想定外の虫や小型生物がわんさか出てきたらびっくりするわね。それにしても、気持ちよさそうに越冬している彼ら彼女らには、申し訳ないなぁと感じてしまうわ。

それにしても、昼休憩の時に、陶芸家の奥さんにいただいたカレーのうまさといったら。。。お代わりしまくってしまった。優しさがにじんでて、芯からあったまる。

プレーパークとは何する場所ぞ

旭川市民にとってのセントラルパーク・常盤公園では年になんどか、「プレーパーク」なるイベントが開かれていまして、移住してからずっと気になっていたのであります。しかも、とてもお世話になっている旭川大学短大の清水冬樹先生(幼児教育)が関わっていらっしゃるというので、よけいに。

プレーパーク? パンフレットには、こう書いてある。「あそぶ時間がない。あそぶところがない。外でどうやってあそんでいいかわからない。そんな子どもたち。そして、お母さん・お父さんの声をよく耳にしませんか?外で子どもたちが自分らしく遊べる場所を作りたい。そんな思いでときわプレーパークをはじめてみました。」 そう、何をやってもいいところ。自分で遊びをつくるところ。大人はちょっと、その手伝いをするだけ。

プレーパークは東京・世田谷に有名なところがあって、全国でもちらほら実践例がある。考えてみれば、子どもが遊ぶ場所ってどんどん減っていて、公園ですら「べからず集」ばっかりになった。火を使ってはいけない、ボール遊びしてはいけない、ペットを連れてきてはいけない。遊具は画一的な、危険を過度に排除したものばかり。これでは子どもはのびのびできないし、何よりつまらない。

北海道でも、冬になると「子どもを遊ばせる場所がない」という親御さんは多い。でも、雪の上だって無限の遊び場になるし、子どもはちゃんと遊ぶ能力が備わっている。それを大人がスポイルしてないかどうかのほうか、大事な気がする。どこまでできるか分からないけど、ゲストハウス「旭川公園」の広場も、プレーパークのような場所にしたい。清水先生、よろしくお願いします。

木工体験ならデザインセンターへ

このブログにも何度か登場している、ゲストハウス予定地から車でじ10分くらいの「旭川デザインセンター」。家具組合(正式には旭川家具工業協同組合)が運営している、共同ショールームの位置づけで、1000坪のフロアに各社の自慢の品が並んでいる。

ただ、はっきり言ってそんな入りやすくないし、お値段もまぁ高い。いいものだから、何世代にもわたって直しながら使えるものだから、道産材などいい材料を使っているから、確かな技術があるから、安くなくて当然。何十万もするテーブルにちょいと触れる、なんてなかなか勇気のいること。

そんな人におススメなのは、毎月のように(定期ではないと思うけど)開かれているワークショップ。使い捨てない、長く愛すをテーマにした「アイスプロジェクト」の小助川泰介さんが講師となって、巣箱型の貯金箱、クリスマスオーナメントとか、干支とか、親しみやすいものの木工体験を提供していらっしゃる。

家具職人の小助川はとっても気さくで、優しくて、老若男女一人ひとりの進み具合をみて、丁寧に教えてくれる。おひとり様でも、小さな子どもがいても安心。わが家も何度かお世話になった。

ちょっとでも地域の人に家具や木工を気軽に楽しんでもらえたらー。そんな思いをもつ一流の職人と直接にものを作れるなんて、なかなかない。旭川に旅行で来た人も、都合が合えばぜひ参加してもらいたいアクティビティだわ。

薄い木片を北海道みたいな形にしてみた。誰にも気づかれなかった。ちなみに下は、下北半島と津軽半島です

スナックざくざく

ゲストハウス「旭川公園」の予定地近く、そしていま仮住まいしているアパートの近くには、JR 永山駅を中心にした旧市街地で、往時のにぎわいはもちろんないけど、まぁまぁ飲食店がある。その中でもありがたいのは、スナックがいくつもあること。

なかなかお金が苦しくて回数は重ねられていないけど、2018年11月下旬からスナックの開拓を始めた(といっても二回だけ、しかも同じ店)。いつも常連さんが楽しんでいる「スナック沙希」では山崎12年のウイスキーをショットで頼んだつもりがボトルになったので、蒸発しない限り何度も行く口実ができた。ママは優しくて気配りがすごくて、すごく居心地よく飲めるお店。料理もおいしい! そして申し訳ないくらいに、めちゃんこリーズナブル。

紗季さんのところで通い慣れたら、徐々にほかのところにも広げていきたいなー。情報の集まるスナック回りは新聞記者の基本。新人時代は二日に一度は瀬戸のスナック「Wink」に行ってた。楽しかったし、そのつもりはなかったけど仕事でもすごく助けてもらった。

日本遺産からアイヌを思う

北海道のお店や施設をぐるぐる回っていると、これでもかというくらい、アイヌ語が多く使われていることに気づく。中身はたぶん玉石混交で、本当にアイヌの皆さんの思想を理解して共感して、リスペクトしてるところもあるけど、安易に「北海道らしさが出るから」と使っているところもある(気がする)。

あらゆるものに神を見出して、自然崇拝するアイヌは奥が深すぎて今までちゃんと理解しようという機会がなかったけど、上川町(層雲峡のあるところ)などでつくる大雪山麓上川アイヌ日本遺産推進協議会が開いたシンポジウムは、考えるいいきっかけになった。

旭川を含めた上川地方のアイヌは、厳しい環境を生き抜くためにクマの木彫りを生み出したらしく、一口にアイヌといっても地域ごとにさまざまなんだと知った。無知すぎて恥ずかしくなったけど・・・。旭川にある、唯一の私設アイヌ記念館・川村カ子ト記念館の川村久恵さんは、「ブームの陰でアイヌが置いてきぼりになっている」と指摘して、アイヌの皆さんの生活にしっかり還元するような仕組みが大切だと説いていた。川村さんは、旭山動物園でアイヌの視点からみた動物の解説なんかもされていて、めちゃくちゃ面白いと感じ入った。どこかでお力を借りたいなぁ。

講演の後は、市博物館でアイヌの歴史にも触れられて、大満足。なかなか見ごたえあった! アイヌも昔とは違ってきているという指摘はあるけれど、自然崇拝やら共生、持続可能な暮らしとか、アイヌの哲学が現代でも最先端を行っている。学ぶことは多い。