数字との仁義なき戦い

土地が固まって、気付けば一週間。ここにきて、急に決算書みたいな資料づくりを勉強し始めてる。

13日(木)に土地のことを旭川の地元金融機関にメールで報告すると、すぐに電話がかかってきて「もう購入手続きをしているのでしょうか」「まだ融資の可否がでていないので、土地を購入してももし融資できないとなったら困るので・・・」と。

融資のタイミングをにらんで、というのはもちろん不動産屋さんに言ってあるし、事情も理解してくれているけど、金融機関には丁寧に説明しないと。変に驚かせてしまってよくなかったなー、と反省。

これまで「土地が決まらないと前に進まない」とやってきた。でも先立つものがなければ、どんなにいい計画も土地購入も、これまた進まない、っていう当然のことを思い知らされた。

土地の売買契約も融資の結果待ちになるし、住宅(管理棟)もそうなるはずので。融資してもらえるか検討してもらうための事業計画書を早く準備しないと!

最初に旭川の信金さんにお邪魔したのは5月28日。あんまり深く考えずに宿泊料金を決めて、ぼんやりとした経費を設定して、毎月の収入がこんだけだからやっていけそうーっていう、小学生がつくったような数字しか盛り込んでなかった。今見るともう、恥ずかしくて目も当てられない。

税金や減価償却費も考慮して、返済元金や利息も計算して、月ごとの変動も織り込んで、どれだけの営業利益や経常利益を確保するのか・・・。損益計算書(PL)、キャッシュフロー計算書、貸借対照表(BS)の3点セットの仕込みを急きょ20日(金)から始めたけど、めちゃ難しい。食わず嫌いなところもあるけど。でも利益をシビアに見て、現金の流れ(フロー)をちゃんとしないと一家共倒れになるから、真剣にやらねば。

今のところ、スタートアップに必要な総事業費は2840万円。あーーーー >。<

夢とコンテナハウスは、貨物列車に載せて。

静岡のヒトヤ堂さんをお暇した後は、JRの各駅停車に乗って八王子へ向かう。熱海、小田原、町田、八王子と4回乗り換えて、高尾駅に4時間かけてたどり着いた。

タクシーを覚悟したけど運よくバスが目的地の近くまで通ってたので、駅前のおいしくないとろろそば(850円)をすすり、西東京バスに乗り込んだ。

目的地は、コンテナハウスを扱う「IRON HOUSE TETSUYA」さん。モデルハウスをここ八王子に置いていて、何ヶ月も前に一度お邪魔して、連絡を取り合ってた。今日は、打ち合わせらしい初の打ち合わせ。

モデルハウス。自分はかわいい系にします

コンテナといっても、中古の海上輸送コンテナを使うのではなく、新造の建築用コンテナを使う。前者は信じられないくらい安くできるけど、業者によっては「あれは建築確認申請がとれないからダメだ」というところもある。(もちろん、扱っているところは反論していて、いろんな見解がある。自治体によってもまちまちで、グレーなところも・・・) ただ、住宅を業務にも使うので法的なクリアや耐久性、信頼性を考えて、知識が豊富でおもしろいことが大好きな、この会社にお願いしようかと思っているところでして。

ここのバイク好き社長さんがものすごいアイデアマンで、北海道の気候、建築条件、業界の事情ととにかく、めちゃくちゃ詳しい。経営にも明るい。コンテナは船で運ぶ方が高いから、貨物列車で青函トンネルをくぐろう、と言ってくれて「それ、めっちゃ面白いですね」と思わず声が大きくなった。

当初は「小さな家」としてちっさいコンテナハウスで1100万円くらいで収めたいなーと考えていたけど、狭すぎると動線がきつくなるし、ゲストの受け付けやワークショップ機能、保健所の許可がおりるキッチンとか、もろもろ見直すと、写真のような家にしようと思い至るようになった。

コンテナの数を増やしすぎるとコストが嵩むので、コンテナ間を構造材でつなぎ合わせる工法でどうかと目論んでた。でも二階建てにするといろんな問題があり、断熱性もその部分は失われるということで、結果的に安上がりにならないとサジェスチョンを受けた。2000万円どころではなくなる可能性が出てきた。もう卒倒しそうだったわ。

とぼとぼと帰り道、あれやこれや考えた。住宅プランは考え直さないといけないのはもちろん、初期投資の全体額をどう管理するか、収支計画にどう反映させるか、ちゃんと返済できるのか・・・。頭の中がグルグルして、久々にネガティブに。酷暑と、JR横浜線の20分遅延、大混雑、新幹線乗り遅れも重なって、こだま車内では放心状態に。現実は思い通りにいかないよなーと当たり前のことを噛みしめる。

帰宅すると2日ぶりの家族がいて、頭は平常モードに緩んだ。ご飯を食べて妻と相談しながら、うーんうーんとプランを考えなおす。そこで出てきたのがこのアイデア。これなら1500万円くらいでできそう。

とりあえず、ゲスト用の小屋(タイニーハウス)を含めた公園全体のランドスケープが出てきてから、具体的な相談や基本設計に入るけど、1500万円以内におさえて、将来に利益をもたらすところへ重点投資したい。

自分の家が青函トンネルをくぐっていくところを追跡して動画に収めたい! 旭川・永山地区のゲストハウス予定地近くには、貨物ターミナルや流通団地があって、インダストリーな雰囲気がいいなとは思ってたけど、まさか自分のコンテナハウスのために活躍することになるとは。楽しみー

静岡のまちでゲストハウスな夜

17日の夜は、静岡市への出張ついでに、念願のゲストハウスめぐりへ。オープンして3週間という、「泊まれる純喫茶ヒトヤ堂」へ。静岡新聞の夕刊1面に載っていて、ずっと気になっていた存在だった。

夜8時に到着。まわりには高級、というか超高層のマンションとか住宅、ちっちゃな店舗が立ち並んでいて、静岡駅から12分の立地ながら静かなロケーション。

扉を開けると、海外からのお客さん3人が喫茶スペースで談笑してる姿を発見。うん、いかにもゲストハウスらしい!日本語で「こんばんはー」と挨拶。台湾、韓国、オーストリア出身の3人は、その辺のおじちゃんが世間話をしにきたような雰囲気で、溶け込んでいた。

宿は女性2人でやっていて、この日は牧之原出身の村松佐友紀さんがお世話してくれた。まだ20代半ば! 純喫茶をリノベーションして、壁塗りとかをDIYして、普段はゲストハウス業をして、コーヒーや朝ごはんもつくれて、日中は喫茶営業。めちゃ大変!めちゃすごい!

宿の仕組みやサービスとかを細かく教えてくれて、ドミトリーに案内してくれた。布団を敷くスペースは広いし、なんか気持ちいいし、レトロな調度品も多くて、この日は税込み3390円(変動します)。申し訳ないくらいお値打ちだわ。

荷物を置くと、村松さんが「ご飯行きますか?」。この一言を待ってたんだな〜。喫茶スペースにいる3人にも声をかけて、自分のリクエストで静岡おでんのお店へ。

宿をでて5人になって歩き、自然と自己紹介が始まる。この瞬間がたまらない。何が起きるか、どんな化学反応が起きるか分からないのが、ゲストハウスの魅力です。

屋台が続いているところでおでんを食べまくる。ソースと醤油の違いとか、なぜ味噌文化はすばらしいとか、ダシ粉とはなんぞやとか、みんなで他愛もない話をしながら。この中で、いちばん、圧倒的にまともに英語を使えていない自分。言いたいことがあっても単語が浮かばない。ちょっと間があく。クーラーガンガンなのに、汗が出てくる。11年前が最後になった海外旅行を思い出す。でも不思議なもんで、おでんとビール、SAKEのおかげか、耳が慣れてきて、なんとなく話のアウトラインが掴めるようになってきた。

10時半に終わって宿に戻り、共有スペースで冷蔵庫に眠らせてあったという、焼津の「磯自慢」特別大吟醸をいただく。二次会。「こうじさん、寝ないで!」と何度か叱咤激励されて、25時20分ごろに解散。それぞれのベッドへ。

翌朝は朝食スタートの7時半に喫茶スペースへ。500円で、サイフォン珈琲とふわふわのバタートーストをいただく。おいしい。優しい気持ちになれる。朝ごはんはこれくらいでちょうどいいわ。プレートは、村松さんのお父さんが焼いたんだとか。写欲のそそられるブツが多い!

窓からは、静岡駅のほうに向かうスーツ姿のビジネスパーソン(と言っておく)とか、通学で自転車にまたがって駆ける生徒とかが見える。生活が見える。まちの中に、暮らすように朝を迎えている。なんとも幸せな気分になる。

村松さんには昨晩、自分がゲストハウスを開業したいんだと言っていたので、何から何まで教えてくれた。クリーニングやリースのこと、融資、地域とのかかわり、必要経費のこと・・・。実務の勉強はほとんどしてきてないので、めちゃくちゃありがたかった。しかししかし、自分の宿はヒトヤ堂さんの2倍以上の価格設定ができるんかしら・・・と急激に不安に襲われたのでした。

ゲストハウス業の大変さも楽しさも、いっぺんに感じられるステイになった。村松さん、ゲストのみんな、ありがとう!

自分が電車に乗ると、3人からメッセンジャーのグループで次々に写真を投稿してくれてた。「Hope to see Koji again in Hokkaido!!」 『Koji! Hope to see you in winter at your own Gueshouse」と嬉しいコメントがたくさん。ちなみにこの時初めて、「Asahikawa Park Guesthouse」と英語で、自分の計画を紹介しておいた。

ほんま英語なんとかせにゃー。。。

ラーメンと考える、お値段のつけ方

3日連続でラーメンを食べてしまった。旭川ラーメン好きとしては、本州にいる間に非・旭川ラーメンで舌を肥やしておかなきゃいかん、という使命感から。

800円の「黒」

17日(火曜)は静岡市に出張なので、贅沢に高額な(自分の中では)ラーメンにチャレンジ! 「沼津うまいラーメン松福 呉服町通り店」へ。お昼時で、短いながら行列ができていた。

いちばん安いやつで800円也! 普段お昼ご飯は妻・茜が握ってくれたおにぎり2個なので、なかなか抵抗があるけど・・・。前に普通のは食べたことあるので、今日は同じ800円の「黒」(マー油、焦がしニンニク)であります。

人気の、濃厚とんこつ系。麺は中太で縮れてる。スープはめちゃ濃い(麺固め、味濃いめにしたけど)。どろどろっとしたのど越しで、麺や白ねぎ、ホウレンソウによく合うわけです。これは、家系好きが喜んでくれそうな味。自分の好みとしてはどんぴしゃ!!

ちょっと残念だったのはサービスのご飯(サービスタイム以外は100円)。スープに合う固さにしてるのは分かるけど、ご飯そのものの甘みやうま味を感じない。失礼ながら工業製品みたいな印象。朝ご飯に食べたら元気出なさそう。牛丼店の「松屋米」と似た食感と食味で、一粒一粒を噛みしめるような喜びがない。ライスが最初に出てきたので、ややげんなりしたけど、でもまぁラーメンの味で挽回できた。

それにしてもこの店、前に来たときも思ったけど、高い! 「ラーメン1杯に払える値段」のアンケートで確か800円というのがあったと記憶するけど、自分の中では高い部類。いろいろ盛ってる「特製」は1000円を超えているし、客単価は800円を超えてるのでは!?(推測)。それでもいつも混み合ってるので、白シャツ姿の人たちに支持されるお店なんだろうなー。

この「客単価」というやつ、最近気になる存在になってきた。旭川のゲストハウスでも、宿泊料金を決めなきゃいけない。いろいろ考えているけど、商売についての勉強なんてしたことなかったので、戸惑うことばかり。

最初は、周辺のゲストハウスの相場から、3000円台後半~5000円くらいかなー、と安易にイメージしていた。その上で経費を差し引いて、ベッド数×日数×稼働率で数字をはじいた。しかししかい、月々の経費を考えて、家族5人が生活することを考えただけで、これは現実的じゃないことがすぐ判明。最初は6人定員だったし。

そのうちに、意識(競合)するのはどこにでもあるような安宿とは違うし、ベースをそこに置いても無意味だなーと思うように。今では、家族が暮らせるだけの手取り(役員報酬)や税金、融資返済、光熱水費、オリジナルのアメニティ、リネンなど細かい経費、そして税制上は減価償却なんかも考えるようになった(遅い!)。でもやはり、家族で目が届くという範囲で定員を8人に増やしたとしたとしても、6000円や7000円でさえ立ちゆかないことが分かってしまった。そこで今は、ある程度のお金を出してもらってもまた来たくなるようなクオリティづくりに全力を注ごう!と方針を変えた。

まだ値段は完全に決まってはいないけど、高すぎても「う~ん」、安すぎても「う~ん」の日々。みなさん、苦労されているんだなーと感じ入ってます。値段って難しい。

クルマ屋さんにある公園の研究

浜松駅からクルマで10分くらい行ったところに、スズキアリーナのお店があって、車が売っている。当たり前だけど。でも二台しか展示してなくて、半分(それ以上?)のスペースは、常識はずれの子どもの遊び場になっている。

「LimoLimoもりた」っていう名前で、玩具で有名なボーネルンドがプロデュースしているキッズスペース。ボーネルンドはヨーロッパ各国のおもちゃを扱って、行政施設とか学校の校庭とかで「遊びの場」を手がけている。

近所の子供づれがふらっと遊びにこれるような存在で、これも公園といえば公園のようなもの。遊具がいつも一緒(のはず)だけど子どもたちは飽きずに楽しそう。

一番人気はボールプールで、そのプールに飛び込める滑り台付きの家みたいなやつにも登ったりするにも大好き。あとはおままごとや屋台ごっこ、クルマ型で運転している気分になれる遊具、赤ちゃんでもできる滑り台などなど・・・。

普通の公園にある、どこにでもある画一的な遊具となにが違うんだろう。まずボールプールは普通の屋外の公園にはない。全体的にデザインがよくてコンパクトにたくさんの種類が集められていて、素材の手触りがいい。子どもは飽きやすいからハマるし、親としても安心できる。雨の日も酷暑の日も遊べる全天候型。自然の中で体得するような遊びの要素はないけど、このコンテンツはめちゃくちゃ強い。この施設をつくってから、自動車関連の売り上げも伸びたとか。静岡市駿河区のお店にも、リモリモが導入されるようになった。

この日は猛暑日で1時間以上もお世話になっちゃった。快適で便利で、ほんと助かってます。

でも夕方の4時半を過ぎていったんお店を出て、長男がトイレに行きたいというので、もう一回入ろうとしたら、トイレでも断られてしまった。LimoLimoの時間が終わるから、とのこと。まあ企業のお店の中だからしょうがない。

自分のつくろうとしている公園ゲストハウスも、地域に開かれた場所にしたいけど、こっちにも生活があるので、24時間開放するわけにはいかない。家族でやるので人的資源には限界があるし、宿泊者との兼ね合いもある。決められた時間じゃない時に「トイレを貸してほしい」と言われたらどう対応するがベストなのかなーと考えこんだ。うーん

「公共R不動産」より②〜理想の公共空間〜

だーいぶ時間をあけてしまったけど、名著「公共R不動産のプロジェクトスタディー公民連携のしくみとデザインー」で刺さったところのメモ。1回目から1ヶ月ぶり。

本の終盤で、岩手県紫波町のオガールプロジェクトで広場を手がけた、ランドスケープアーキテクトの長谷川浩己さんのインタビューがあった。オガールプロジェクトは、公民連携で収益をあげていく大成功例として知られてて、盛岡市のベッドタウンの紫波町の駅前にある元空き地に、図書館、産直、体育館、エコ住宅、宿泊施設、保育園を集約させていて、デザイン、土地活用、ファシリティとかいろんな分野で賞を受けてる超有名な事例。

長谷川さんはこう言っている。「僕はよく、オープンスペースにおける『空き地性』と『庭性』について考えます。この双方をどういうバランスで確保するか、デザインの大きなポイントの一つ」。開かれた庭にしないと人を呼べないし、空き地性とは多様に展開するための余地、みたいなものだという。この、「開かれた庭」っていう考え方がめちゃくちゃしっくりする。ゲストハウスを〝公園〟と呼んでるけど、開かれた庭、と呼ぶ方が分かりやすいかも。オープンガーデンはたくさんあるし、そこに「遊び」の要素を強くだす、という感じになるし。

photo:鈴木裕矢 庭のような空き地。ここにゲストハウスをつくります

しかも特色あるオープンスペースをつくるために大事なのは、誰がオーナーなのか、なんだって。「公園や広場でも、そこに家守みたいな存在がいて、その人のセンスや趣味が反映され、価値観に共感した人がやってくる。デザイナーは、そのセンスや趣味を形にするサポートをする。そうして公共空間がおもてなしの場所としてまちに開かれているのが理想だと思います」

めちゃくちゃ理想。ドンピシャの理想。まさにこんなところを作っていきたいなーとおもってる。

住民向けワークショップでは、「何が欲しいか?」ではなくて「どう過ごしたい?」と訪ねていたそうな。希望を議論すれば揉めるので、できることや予算は限られているし、アクティビティを考える場所にしていたんだって。

ゲストハウスの公園でなにが欲しいかといえば、そりゃなんでもほしい。いまある(必須だと思っている)のは、管理棟を兼ねた住宅、ゲストが宿泊する小屋(中にも遊具あり)、共同棟、キャンプファイヤーみたいな焚き火、井戸、木製ジャングルジム、自転車、落書き看板、イス、テーブル、飲み物やお菓子を出す屋台。

ゆったりしたい人にはそうしてほしいし、遊びたい子どもは動き回る。近くの里山「突哨山」の薪や大雪山の伏流水を汲み上げることで、自給的な暮らしを感じてもらいたい。

お風呂とかまだまだ欲しいなと思うけど、なんでもできるわけじゃないし、やりすぎると何がなんだか分からなくなるので、「何がしたいのか」ちゃんと考えないと。

どうありたいのか、どう過ごしてほしいのか。そして、事業として持続可能なように、どうすべきなのか。考えることが山積み!!

 

 

甘酒と祝福の味

三連休に入ってしまった。落ち着かない。先週まで三週連続で旭川に行ってたので、現地にいないことに強烈なる違和感が!   なんにも準備してない!っていう不安に駆られる。

きょうはゆっくり寝て、甘酒教室へ。妻の茜は金沢に本拠地がある「発酵食大学」の通信制で勉強してきて、自分もこれまで何度か試飲したけど、あの甘さがはどうも苦手。でも「飲む点滴」って言われるほど体にはいいし、夏に冷やして飲むとけっこういい感じだし、味を工夫したら苦手な人でもちょっとずつ入りやすいなぁとは思っていて。

旭川のゲストハウス予定地のすぐ近くには「屯田の里」っていう、農家のお母さんたちの店があって、ここの麹(こうじ)を作って甘酒とかスムージーを作ろうともくろんでる。

屯田の里は、屯田兵だった先祖から脈々と伝えられてきた手づくりの味を生かして、味噌とか醤油、麹、ラーメン味噌、漬物とかを販売してる。添加物を使わないことにこだわって、農薬を使わなかったり減らして、自分たちの家族がつくった大豆や麦、米を原料に使ってる。味噌しか食べたことないけど、リピートするおいしさ。しっかりした味付けで、コクがあるけど、優しい。身近な資源をつかった自給的な暮らしっていうのは、ゲストハウスの世界観の象徴の一つ。

ということで、おいしい甘酒づくはマスターしないと。旭川でも商品化されてる缶の甘酒はあるけど、やっぱ自家製でやってみたい。(地ビールならぬ「自ビール」もやりたい)

ところで今日の甘酒教室で、部屋に入るなり「おめでと〜〜」って祝福された。先生が京都でゲストハウスを開く女性なんやけど、ブログを読んでくれてて、土地が決まったことを我が事のように喜んでくれた!

この先生だけじゃなくて、この数日「おめでとう」って言ってくれる友達がけっこういて、ほんと泣きたくなる。そんな友達多いほうじゃないのに、急に増えてきた感じ(笑) それもフェイスブック上のコメントだけじゃなくて、LINEとかメール、メッセンジャーとかでも。

「ついに進み始めたね」「OB会ぜひ旭川で。クラウドファンディングとかぜひぜひ協力させて!」「おめでとう!!」どなど。過酷なことを乗り越えた経験のある人から「思いを貫き続ければ、少数でも必ず理解してくれる人は出てくる」と言われた時には、そうそう、そうだよなーと膝を打った。自分も、結婚がまさにそうだったし…

こんなエールだけでも嬉しいけど、「最後はカネ。『引っ込みがつかないからやる』というのは絶対に避けて。勇気ある撤退であっても支持する」という友人もいた。なかなかこういう事を言ってくれる人は少ない。ありがたや。シビアであるべき所は絶対に気を抜いちゃいけない。

人によって言うことやアドバイスは違うし、関係が近い方が遠慮して都合の悪いことを言いにくくなる。でもそれを全部引っくるめて、自分で咀嚼して、判断していくことが、今までもこれからも続いていくんだな〜。

始めるのは簡単で、続けることこそ難しい。元気玉をもらって、いろんな声をいただいて、悩んで、行動して・・・。そんな積み重ねが、持続可能な暮らしや事業につながるはず。

夕方は次男の強い希望でプールへ。たまには頭を真っさらにしてゆっくりするのもいいな〜

古橋廣之進記念浜松市総合水泳場「トビオ」にて

 

 

 

最終出社日を宣告した金曜日

5月中旬、所属長や会社に退職したい旨を告げていたものの、じゃあいつ辞めるのかは言えないままでいた。なのでなんとなく、多くの人に言えないままだった。聞かれたら答える、くらいでなんとなく申し訳ない感じだった。

なんでかというと、やっぱり土地が決まっていなかったから。もし十分な広さが確保できなかったら、「かつての公園」じゃないところで妥協せざるを得ないのなら、越冬して勇気ある撤退も考えないとあかんかな、思ってたので。

でも土地のメドはたった。後は前に進むだけ。ということで昨日から就業規則を熟読し、今日、9月7日を最終出社日として、10月17日付で退職することを伝えてきた。少し緊張したけど、思ったほどではなく。「撤回してもいいぞ」と幹部に言われていたものの、迷うところは一切ないし、別に何言われても構わないから、少し肝っ玉がすわったかも(笑)

会社側に「今週中には言いますから」というのを3回延長してもらってたので、ようやくという感じだけども。大きな異動が絡む時期なので、ご面倒をおかけました・・・

住宅(管理棟)の打ち合わせは来週から本格化する。完成まで3ヶ月以上はかかるし、順調に進むかどうかも分からない。どうせ分からないなら、ということで、10月中旬からは、旭川市・永山地区のアパートに仮住まいすることにした。移住体験住宅よりも家賃安いし、地元を知るのが大事だし。

さぁ、ケツが決まった。記者業のほうでは悔いのないようにやることをやっていこう。移住&ゲストハウスづくりのほうは、引き算してスケジュールをしっかりこなしてこ。

 

ついに「地元」ができる!

パンパカパーン!決まりました、ついに。土地が。

photo:鈴木裕矢 ゲストハウス予定地の目の前を走るディーゼル列車

きょう夕方、会社で仕事をしていると、若手が駆け寄ってきた。「ハアハア。松本さん、旭川のFさんからお電話です!」

なんのことが分からず、「ん?ああー」と反射的に受話器を左手で取ろうとした。その瞬間、ギリギリのところで「地権者の娘さんからや!」と気づいた。

会社で移住の話が丸聞こえになるのも〜と思い、大声を出したかったけどグッとこらえて(笑)、落ち着いてハキハキと中くらいの声で電話に出た(つもり)

先方は、不動産屋さんに行って評価額を調べ、ご兄妹や、地権者であるご高齢のお父さんにも相談したことを教えてくださった。その上で「松本さんにお譲りしようと思います。そちらもいろいろ大変だと思いますし、値段も、もっと安くてもいいんじゃない?という話になりましてね。駆け引きするのは嫌なので、★★万円ならと思うのですが」

これを聞いて信じられないくらい驚いて、言葉に詰まりながら、深く深く深く、感謝を申し上げた。だって、8.6%引きなんですよ。消費税もびっくり!不動産屋さんに仲介手数料を払っても、往復の飛行機(正規運賃!)が払えるくらいの値引き額。このお心遣いに感激してしまって、デスクで頭を下げていると目が真っ赤になり、恥ずかしながら別室へ深呼吸しに行った。

なんでわざわざ、役所に書類を取りに行く労力をかけてまで、複数の親族の同意を得てまで、不動産屋さんに何度も連絡してまで、軽自動車の新車価格ほどの土地を譲ってくれたのか・・・。持っていても仕方ない、というのはあると思うけど、なんで大きな値引きをしてくださったのか。

実は不動産屋さんから、先方の思いや考えを聞いていた。前日に来店された際、「応援したい気持ちが少しある」と担当の方におっしゃっていたらしい。松本が生活できるのか、資金繰りについても気にかけてくださっていたという。

この交渉の取りまとめをしてくださった地権者のご長女とは、電話でしかお話したことがない。それも7月1日に次女さんのところに突撃訪問、翌週末の7日にも無理やり押しかけ、早めに見通しが立つとありがたい旨を申し上げた。それからわずか5日で、売買の運びと。

もし自分が逆の立場だったら、同じように振る舞えるかしら。いきなり「土地がほしい」とアポなしで来て、気候のいい静岡から移住すると。聞けば、なんでも〝公園〟をつくって小屋を並べると。どう考えても怪しいし、宗教関係かと思っちゃう。手紙やらプレゼン資料でどれだけこちらの思いが届いたのか分からないけれど、「応援したい気持ち」があるというだけで、これまでの2ヶ月、5回北海道に渡ったことが報われたーーー!

そんでもって、この不動産屋さんの担当者さんもアツい人で、うれしくなってくる。「(先方の)最高の言葉は、まるまま松本さんのエネルギーにして下さい!」「旭川を面白い街にしたいですね!」「値引きは、応援の気持ちだと思います!(^ ^)」「応援して下さる方がいらっしゃいますから何とか形にして成功させましょう!!」。温度の伝わる言葉が、メールにたくさん綴られている。

子どもができて、成長するにつれ、早く「地元」をつくってあげなきゃ。次男が小学校に入るまでに固めなきゃ、と何年も前から思っていた。ここにきて、ようやく「地元」になる地面が固まった。

photo:鈴木裕矢
このL字型の土地を使います

あとはどれだけこの地面に魂を込められるか。持続可能な事業と生活のあり方を、早い時期にデザインできるか。かつて町内会の管理していた公園のあった区画に、新しい〝公園〟をつくる準備ができる。絶対に成功させないと!

今宵は発泡酒じゃないビールで乾杯!  やっとスタートラインに立てた。明日からがいよいよ予選リーグ。

膨らむのは夢だけじゃない。総事業費も

地権者さんの側と相談中の土地の問題は、なんとなく良い方向に進んでる感じがする。なのでそれを前提に、総事業費を洗い直している。でもいろいろ考えてると、頭の中がお花畑になってきまして。

photo: 鈴木裕矢   かつて公園だったゲストハウス予定地の周りに咲くお花

おっきなところだと、土地は三筆で560~600万円ほど、住宅は1100~1500万円ほど、小屋は400万円以上・・・。ほかに謝礼のたぐい、申請費用、各種工事、井戸掘削、自転車、暖房関係、宣伝・広告・・・。3カ月はまったくお客さんが来なくても食っていけるようにしないといけないし。

最初にソロバンをはじいたのが五月の半ばだったような気がするけど、その時はなんやかんやで、2100万円くらいが総事業費のイメージだった。当時は土地は1筆。でも現実的にいろいろ詰めていくと、そんなんじゃ無理で、冬を生き抜くには計画性のある暖房システムが欠かせない。長い目で見たら、エネルギーとカネの地域内循環について手を抜くことはできない。

「借りれるだけ借りて、キャッシュを残しときなよ」「初期投資は過剰にならないように」「最初の集客が命。そこを削るなよ」・・・。ありがたいことに、いろんなアドバイスをいただく。いっぺんに何もかもできないとは思うけど、一方で走り始めこそが肝心だとも。

う~ん。逆立ちしても、酒絶ちしても、お金が足りない。使えるお金を集めるにはどうするのか。

①地元金融機関からの融資額を増やす

②政策金融公庫にもお願いする(そのつもりではいたけど)

③クラウドファンディングを頑張る

④フェアレディZに続いてファミリーカーを売る

⑤施設・設備を妥協する

うーん。。。確かにいろんな方法があるけど、本質的じゃないような気も。「持続可能な暮らし」とかカッコよさげな事をうそぶいているけど、そもそも事業として持続可能なのか。

売り上げや、本当の粗利がこんだけ見込める→だからこれだけ投資できる、という考え方が必要なのでは?

たとえ土地がうまくいっても、壁は絶え間なく立ちはだかりそう。まだまだスタート地点にも立てていない。

photo: 鈴木裕矢  予定地から見える宗谷本線の列車。毎日毎日、確かに前に進んでいる。でもそれは、どこで下車してよいか分からない各駅停車の旅