ビジネスコンテストを客観的に見てみると

旭川信用金庫が毎年開いている「旭川しんきん創業アワード」の最終プレゼンと表彰式が開かれるので「見に来ませんか?」とお誘いをいただき、見てきた。

いつもお世話になっている、近くの里山「突哨山」で木こりをやっている清水省吾さんが出ているというのもあって、楽しみにしていて。

結果、清水さんは受賞ならなかったけど、たぶん一番若くて、エネルギッシュで熱量があって、いつもながら楽しませてもらった。審査員からも「これから大切になってくる事業というコメントがあった。「いかに収益を上げるか」「成長する」という点から考えれば、ビジネスコンテストに求められる要素とはちょっと違のかもしれない。

最優秀賞の方は、退院後のリハビリ環境を高い質で提供しようというもの。二位の方は、離農や後継者不足が深刻な問題になっているカボチャ収穫について、機械による自動化と集荷サービスを展開しているというもの。どちらも、確実に今後は需要の拡大が見こめるだろうし、目のツケどころが面白い。特にカボチャの現状は知らないことばっかりだったので、参考になった。

ひるがえって自分はというと、「なんとなく面白いこと」はやろうとしていて、旭川でも応援してくださる方が増えている感じはするけど、「事業がうまくいく確度」「堅い需要がどれだけあるのか」という点はまだまだ弱い。という事をあらためて思い知ることになった。

とはいっても、新しいことはなんでもそういうものだし、清水さんたちのやろうとしていることは、これから地球と人間にとって欠かせないし、「小さくて持続できる経済」を回すモデルにもなるはず。だから手を取り合って、うまくいくモデルを確立していかなきゃ。という使命感を勝手に感じて会場を後にしたのであります。

ちなみに会場になったリサーチパークは、文字通り公的な研究機関が集積していて広く企業支援もしていて、面白い製品や会社を紹介してた。旭川に限らないと思うけど、あんまり派手じゃないけど目を引く事業者っていろいろあるなー。商工会とともに、経営相談にも乗ってもらおうかな。

 

 

「とんこ」が旭山動物園に来た理由

旭川に住んでからは、ヒマさえあれば子どもたちを連れて行こうと心に誓った旭山動物園。年間パスポートを取得したはいいものの、誓いが徹底されていなかったので、11月2日に長男が札幌の北大病院に通っている間、幼稚園帰りの次男と長女を動物園に連れて行くことにした。冬準備を前にして、夏季開園がまもなく終了する時期だったのもあって。

動物園に行く途中、左手に山が見える。大雪山系は冬支度が進んでいた

いつもと同じ正門の無料駐車場に止めると、コンテナ(たぶん12m長)が二本置いてあった。カフェができるらしい。いまもカフェっぽいのは園内外にパッと見えるだけでも3つはあるのに、それほど需要を見込んでいるのかなあ。すごい。

年間パスで入るのは、なんとなくいい気分。移住してからまだ2回目だけど、ご近所の常連さん気分。

とりあえず外から、もぐもぐタイム中のペンギンを見て、なにやら賑わっている猛獣館のヒグマの檻へ。

こちらももぐもぐ中だった。ここで飼われているヒグマは「とんこ」といい、1999年に中頓別町で母親のそばにいた時、人間の安全のために母親は射殺された。飼育員の方は、ハナコが柵によじのぼってリンゴを力強く噛み砕く姿を見せながら、人間とクマがどうやって共存していくか、ハナコのようなクマを出さないようにはどうすればいいか、柔らかく来園者に語りかけていた。人ととんこの母親が出会わなければ、とんこが旭山に来ることもなかったのだから。

旭山動物園のコピーでよく使われるのは、「伝えるのは、命」。もぐもぐタイムだけでじゃなくて、至る所にあるポップで、動物の命や生態系を守ること、生きるとはどういうことか、人間が動物界にとってどんな脅威になっているのかを、噛み砕いて説明している。貴重な環境教育の場だなあとしみじみ思う。冬もやっぱり子どもを連れて行きたい。

帰り際、抱っこされず門の近くでふてくされる長女

里山でなんちゃって木こりお手伝い

 

突哨山(とっしょうざん)の入り口にて。道北の11月とは思えない景色

はやくも11月。まだまだ初雪の便りが届かない。そのおかげで長く紅葉が楽しめてる。

1日には近くの里山「突哨山」で、フリーの木こりの清水省吾さんを訪ねに行く。前回、10月22日にお邪魔したときは、まだ黄色くなった葉っぱがたくさん残っていたけれど、今日はもうほとんどが落ちてしまっていて、秋の深まりというか、冬が着実に近づいていることを教えてくれた。

そして、初めてのアウトドア稼働となったスズキ・キャリイ君はさっそく、4WDの威力をいかんなく発揮! 前日までの雨で粘土質の地面はおもしろいくらいぬかるんでいて、四駆じゃないと絶対に不可能な状況だった。

それにキャリイ君はすごく森にマッチしていて、写真集にできるんじゃないかと思うくらい! やっぱりまちなかじゃなくて、自然の中に置いてこそ軽トラは映える。清水さんの軽トラ(ハイゼット)もなまらカッコいい。

清水さんは、自分の持っている山に、軽トラで材を搬出しやすいようにユンぼと人力で道をつくるということで、何日間にもわたって過酷な作業を続けていた。掘れば掘るほど出てくる大量の泥の処理に悪戦苦闘して、雨の日なんか大変なことになってしまったらしいけど、大方できあがったみたい。いちばん大変な時に手伝えなくて恐縮だったけど、地面に残った木をちょこっと運ばせてもらった。

キノコのホダ木として使うカシワやミズナラを見ていて、カシワの断面に見とれる。なんか神々しい。カシワって名前は知っていたけどあんまり意識したことはなくて、こんな綺麗だったとは。

鹿のワナを見せてもらって、そのあと、ゲストハウスに置くオリジナルのスツールに使うミズナラ探しに出た。清水さんの森には100年生のミズナラがたくさん生えていて、かなり立派な太い幹がかっこいい。(この辺からスマホの電池がなくなって写真なし)。風の通り方木を守る上で大事なこと、「光の一等地」を求めて木々が競っていること、本当に伐るべき木は何かを吟味した上でじゃないと伐らないこと、どんな木が「人間にとって良い木」なのか…。こうやって森の中で直接教えてもらうことで、体に染み込んでくる感じがするなぁ。本とかで聞くのとは全く違う。

このあと、事務所みたいに清水さんが使っている拠点の小屋の近くに行き、ミズナラ(カシワだったかな?)に生えた立派なナメコのホダ木を拝見。手伝ってくれたからということで、なんと一本そのままいただく。ホダ木が動いてナメコがつぶれちゃわないように、軽トラの荷台にあるタイヤで慎重に固定して、わがアパートへ。ちょっとだけワイルドな帰宅を演出。お味噌汁にいれたけど、風味豊かで歯ごたえもあり、なまらうまい。子どもたちも「おいしい、おいしい」とパクパク食べて嬉しかったなぁ。

 

旭川大学の横田ゼミは旭川家具の将来を考えてます

ゲストハウス「旭川公園」から歩いて5分とかからない所にある私立の旭川大学は、なんどもなんどもその前を通ってるけど、なかなか構内に入る機会がなく、9月には初めて上陸した。そのあとは、地域住民に解放されている図書館へ行こうと思いつつもなかなか実現していなかった。そんな時、10月から静岡大に籍を移られた横田宏樹先生にお声かけいただき、10月30日にゼミを覗かせてもらうことに。

冒頭、学生さんたちを前に自己紹介みたいな感じでお話しする機会をいただき、移住にいたった経緯ややろうとしていること、森や家具とゲストハウスをどうつなげていくのかーについて15分くらいプレゼン。グラノーラの試作品も食べてもらい、好評をいただいた。

横田ゼミでは地域産業としての旭川家具の業界研究をしていて、メーカーや林産試験場にヒアリングしたり、森に入って自分たちで木を切り出したり、学園祭で「木育カフェ」を展開したり。いまは、北海道らしい、ある魅力的な樹種を生かして地域・林業の活性化に向けた取り組みができないか、模索をされている。

この日は木育マイスターで当麻町の地域おこし協力隊の原弘治さんも来校。原さんは家具職人出身で、横田ゼミのアドバイザーも務めておられ、学生さんとも顔なじみ。これまでの活動をどうまとめ、咀嚼して、発信していくか悩む学生さんにヒントをあげたりしていた。2コマ目は自分も微力ながらそのお手伝いを。

学生さんたちはあまり自覚しいくいかもしれないけど、横田ゼミは相当に面白いことをしているし、旭川の関係者でその成果に注目している人はかなりいる。ほんと楽しみ。ちなみにお昼は、学食でホルモンラーメン(500円)。ホルモンの量は「鬼はそと」で食べた「キムホル」に及ぶべくもなかったけど、すごくおいしい。リピートしたい。もう34半ばなのにスープまで飲み干してしまった・・・。

ちなみに下の写真は、前日にあさひかわラーメン村で食べた、有名店「青葉」のしょうゆ。大人ちっくなラーメンかな。シックというか、滋味深いというか・・・。すごいインパクトがあるわけじゃないけど、懐かしくなった時にまた食べたくなる気がする。

長沼にある、わざわざ行きたいカレー屋さん

長沼町に行ったからには、お邪魔しないといけないカレー屋さんがあるので、中村直弘さんたちのイベント「サルベージヤード古材市」が終わってから、午後3時を過ぎていたけど滑り込んだ。「shanti nivas cafe(シャンディ ニヴァース カフェ)。田園地帯を貫く道端に、ポツンと立っている古民家を改装したかわいいお店。見過ごしそうになる。

どこを切り取ってもインスタ映えしそうだけど、このロケーションは文句なしに素晴らしい。北海道に来たなーと実感できる。このランプとショップ看板だけでも嬉しくなる。

映画に出てきそうな外観のお店。わくわくしながら木製のドアを開けると、これまた北海道らしく、室内に続くドアまではちょっと距離がある。落ち着く。

日本人の舌に合うようにつくられた、オリジナルのインドカレー。いくつか好きなルーと、好きなお米を選べるのも◎。そしてめちゃんこ美味しい。カレーって普段から進んで食べることはないけど、繊細で丁寧で、それでいてあっさりしすぎない味。これはリピートしたくなるわ。

どこに座っても居心地のいい空間。座席はもちろん、トイレも。子ども用の絵本も多くて、子ども用のカラトリーもかわいくて、家族づれでぜひ行きたいお店。

厨房手前のレジまわりもかわいい。

札幌や旭川からわざわざ行きたいなー。地元の人が強烈にオススメするのも納得。

長沼町で厚真町の古材サルベージ!

ゲストハウス「旭川公園」を施工してくれるのは、yomogi8さんこと中村直弘さん。新千歳空港や札幌からほど近い、おしゃれカフェや宿のある長沼町を拠点に、道内各地で大活躍されているー。ご自宅の敷地内にある事務所は、こんな感じ。きゃわわ。送電網につながない「オフグリッド」を、ほぼ達成されている。わくわく!

その中村さんが、北海道胆振東部地震で「自分になにができるのか、すべきか」を自問され、大工さんとして、使えなくなった廃材をどうレスキュー、サルベージ(救済)するかを考えておられた。そこで仲間たちの力を集めて、「salvage yard 古材市」なるイベントを10月28日。なので札幌に泊まって、長沼まで行ってきましたよ。

厚真町の農家さんの納屋にあった古材を選んで、これまた古物の脚に固定し、オリジナルのテーブルをつくるというワークショップ。次男・陽己(はるき)も前日の木工ワークショップの経験を生かして(?)、やる気満々で磨き、インパクトを手にしてて、最高だったなぁ。

選んだのはカツラで、幅は40センチ、長さ80センチほど。今はなかなかこれほど立派なカツラはないようで、貴重なんだとか。しかも自然にできた緑色のシミのようなかわいい模様や、たくさんの虫食いもあって、どれもが「ここにしかない」個性的な表情を演出してる!

ワークショップじゃなくても、古材だけを見に来るお客さんもたくさんいて、ほんと素晴らしいイベントに参加させてもらえた幸運に感謝。これに間に合うように移住できただけでも、でっかい意味があったわ。

この日できた机、リビングに置いて毎日大切に使ってます。すごく文化レベルが上がった気がする(笑)愛着感はハンパないしで。

ところで、会場はナガヌマ町ハナレという、カフェ兼雑貨ショップの納屋を使っていたんだけど、駐車スペースは傾斜になってて前日の雨で土がぐちゃぐちゃに。マイカーのミニバン は後輪駆動(FR)で、一度停めてからぬかるみにはまって動けなくなり、新聞紙や木枝をかませても無理で、来場者の皆さん総出で、サルベージしてくださった。たぶん45分くらいはかかったかなぁ。大変に、大変に、ご迷惑をおかけしました。早く四駆を買わなければと、夫婦そろって痛感!

そしてミニバンレスキューにも率先して加わってくれたのが、前日に旭川の我が家を出た深田氏

古材市の会場を後にする深田氏

この日は中村さんに会いたいということで、来ていたのです。すごいつながりだわ。このイベントでもちょっと話したけど、この後は十勝地方の更別村にある「熱中小学校」に行くのだそう。ここにゲストハウスがあるのを十数時間前に知ったらしく、自分も24時間くらい前に知って気になっていたばっかりだったので、どこまでも気持ち悪い偶然が重なる相手です。こんごもつながっていきそうだ。

ハナレさんのコーヒーやクッキー、優しくてすんごいおいしかった。お店の方は大人気でめちゃお忙しい感じだった。

木工ワークショップからほろ酔いでススキノへ

いま住んでいる旭川市の永山地区というところには、好きな人にはたまらない「旭川デザインセンター」がある。旭川家具の工業共同組合が運営していて、自慢の商品を並べている。ここはいつも見るだけだったけど、ときどきは木工ワークショップをやっていると前回お邪魔した時に聞いて、さっそく申し込んだ。

10月27日、「アイスプロジェクト」の小助川さんによる「巣箱型の貯金箱」をつくる催しがいよいよ開催。すごく楽しみだったー。なので、この愛らしい相棒を初出動させて、デザインセンターへ急行いたしました。

瀟洒な建物にも似合うキャリイ君

机に座ると、ちょっとずつたくさんの種類の木片が置かれていく。下の写真はまだその途中だけど、なんだか映える。

今回のワークショップは、小助川さんたちの指導をうけて、この木片にヤスリがけし、ボンドで接着し、オイルを塗り、組み立てて形にするというシンプルなもの。傾斜がかった屋根部分の細長い木片は色とりどりなので、つくる人によって個性がでる。次男・陽己(はるき)を連れていったけど、予想に反して没頭してくれてびっくりやら、うれしいやら。

時間がおしてしまって小助川さんにご挨拶できなかったけど、次回もまだまだあるので、また来ようー。

お昼は、春から転勤で同じ永山(しかも歩いて行けるほどのご近所)に住んでいるご夫婦のお宅にお邪魔して、昼飲み&ランチ会。自分でお菓子とか料理とかできちゃう凄腕ままで、息子さんも我が子たちと年が近いし、もっともっとお付き合いを深めていきたいなー。

夕方には妻の運転で札幌に移動し、翌日のステキイベントに参加する準備を。北海道胆振地震の対策でできた「ふっこう割」なのか、ホテルで6000円引きのクーポンが出てて、ゲストハウスの個室よりも安かったのでやむなくホテルへ。5人で8000円台なら高くない。痛いけど。

大都会。ミニ東京だ

申し訳ないけど子どもたちは妻に任せ、自分はいそいそとススキノへ!  石川県で勤務していたころにつながった行政関係者と久々に会い、近況を報告しながら、ああでもない、こうでもないと。地元の生の声を聞けて有意義だったー。大人しく一軒目でホテルに帰って、すぐ撃沈。

移動の車中でずっと寝てしまって、寝つきが遅かった子どもたち。いつも振り回して申し訳ない

下川町で出会った深田氏がわが家でお泊まり

笑顔でわが仮住まいを後にする深田氏

10月26日。ディーゼルの普通列車でiPadを開け、自分の資金計画をチェックしてため息を出しながら、永山駅から旭川の自宅に帰った。長男・大滋が市立旭川病院にいっているときに、下川の民泊「アナグラム」でばったり出会った深田氏からメッセンジャーで連絡が入った。

前日から、この日どこを回るべきか、どこに宿をとるべきか迷っていて、「困ったら言って」と伝えておいた。

すると「困ってます笑   公園ゲストハウス、初ゲストだったりするかもしれませんが、お邪魔したいです!」

「いや、まだ更地だよ!」と返すと、

場所が違っても、ゲストハウスってオーナーの個性のかたまりみたいなものだと思うんで、同じようなものですよ笑」ときた。

なんか面白いなぁ。よく考えたら、よくわからないけど!

たぶんこうなる予感はしてたんだけど、こんな経緯があって、深田氏はわが家に泊まることになった。親族以外では初めてのお客さん。男山のお酒と、剣淵(旭川から北に行ったまち)のパンを持ってきてくれた。

積極的に子どもたちの餌食になってくれて、こちらとしては大助かり。ご飯ができる前からビールで乾杯して、みんなで仮住まい感のある安テーブルを囲んで、寝る。深田氏はリビングで、持参の寝袋でご就寝。

翌朝は、ここから車で10分くらいの里山・突哨山で木こりとして活動している清水省吾さんのところへ弟子入り(今日限り)するというので、8時すぎには出かけていった。アグレッシブでどんどん輪を広げてるなぁー。また来てねー

森ビルつながりで森いっぱいの下川町ざんまい

浜松にいたころのはなし。東京の森ビルで六本木ヒルズのタウンマネジメントをされて浜松へUターンし、「丸八不動産」に入ってまちづくりの面白い仕掛けをされている高林健太さん(34)と知り合った。いろいろ話すうちに、北海道・下川町で頑張っている同期がいると聞いて、さっそく紹介してもらうことに。それが、下川町産業活性化支援機構のプロジェクト統括部長、長田拓さん(34)。自分と同い年で、しかも大阪出身。これは間違いない‼️

下川のすべてを教えてくれた長田さん

下川町は森林が町域の9割を占め、林業・経済・エネルギーの「地域内循環」を時間をかけて進め、移住者が増えてきているまちであります。近年は転入超過(2017年は32人のプラス)で、人口減少は緩和されてる。地域づくりの分野では全国的に有名で、しかも旭川からは80キロしか離れていない。北海道の感覚では、ちょっとそこのコンビニに行くくらい、すぐ近く。

自分の旭川のゲストハウス予定地からすぐの里山で木こりをやっている清水省吾さんたちも、伐った木を乾燥させるときは下川町まで持って行ってるし、この辺の林業集積地といえば下川は外せないので、旭川でそれっぽいことに首を突っ込むなら、下川を見ずして暮らせないのです。

なので10月25日にさっそく下川へ。この2日前に納車されるはずだった軽トラ(スズキ・キャリイ)が車検を通らず、この日はやむなく列車で行くことに。それはそれでもちろん楽しいけど、時間のロスは大きく、名寄駅からは長田さんに迎えに来てもらうことに。

最寄りの永山駅(旭川)から普通列車に乗って、和寒(わっさむ)という駅で一回おりて、後から来る特急「宗谷」に乗り換え。新婚旅行以来、5年ぶりくらいだなぁ、あの時はまだ「スーパー宗谷」で本数ももっとあった。 力強く唸るディーゼルエンジン音、軽快で小気味よいジョイント音、適度な揺れ。そのどれもが生命力にあふれていて、楽しいことこの上ない。旭川〜札幌の速達特急電車「カムイ」「ライラック」にはない楽しさがあるわ。

和寒駅にて。かっこいい。4両編成で、ぱっと見で5割くらいの乗車率。観光や都市間輸送が多いイメージ
名寄駅にて。かわいい!

「宗谷」を降りた名寄駅は、売店も旅行会社も撤退してしまった寂しい雰囲気で、駅前から続く商店街もなかなかにひっそりとしていた。道路が広い分、その辛さをより感じてしまう。名寄はスノボで来たことあるくらいだけど、下川を含めこの辺りの拠点都市なので、もうちょっとガヤガヤしてるかと思った。郊外のイオンは違うかもしれないけど。。。

11時45分、長田さんの運転するスイフトが名寄駅に。それから20分しないくらいで下川町の中心部に着いて、そのままランチ。そば屋さんの看板がかかっている「やまと屋」の暖簾をくぐる。ここ、もともと後継者がいなくて店を閉じたけど、商工会長さんが一念発起して自分で店を買い、曜日限定で開くようになったとか。

人口3400人のまち。一つの店がなくなることがまちにもたらすインパクトは大きいし、中心街の「景色」を保ちたいという志はなんともかっこいい! しかもこの日は、この店で移住者の方がチャレンジショップを開いた初日だとか。こんなステキな動きがあるなん、さすが!とさっそく感じ入ってしまった。みんな顔を知ってるんじゃないかと思うくらい、お客さん同士が楽しくワイワイガヤガヤしてて、よそ者のこっちまで嬉しくなる。しかも生姜焼き定食、味がしっかりしていてめちゃ好み。

ランチの後は、長田さんの職場である、まちおこしセンター「コモレビ」へ。NPO法人の観光協会や興業協同組合が入居して、交流スペースがあるところ。かつて駅があった場所で、バスターミナルが目の前だからめちゃ便利。

子どもたちの遊ぶ姿もあった。自分が高校生ならここでダベりたいなーと思っていたら、すでに実践者がいた

 

ちょっと分かりにくいけど、黒っぽい外壁の板には、木炭を作るときにでる煙を燻して防腐・防虫効果を持たせた「燻煙(くんえん)」処理をしている。これも、余すところなく使う精神から。

下川のこれまでとこれからについてレクチャーをいただく。2003年、北海道で初めて、流通や加工のプロセスを国際的に認証する「FSC」を取得するなど、循環型の林業経営をやってきて、2007年に町自治基本条例で「持続可能な地域社会の実現を目指す」とうたい、2008年に環境モデル都市、2011年に環境未来都市に選定。全国で徐々に知られるようになって、ことしはSDGs未来都市にもなった。SDGsは国連で採択された、「持続可能な開発目標」を示す国際的な目標で、町でも代表者がいろんな観点から現状と目標を話し合い、「誰ひとり取り残されず、しなやかに強く、幸せに暮らせるまち」を目指している。

基幹の林業では余すところなく使うことを徹底し、森林バイオマスを活用しての熱自給率は49%にのぼる。バイオマスボイラーを次々と導入し、公共施設の熱供給の68%を再生エネルギーに転換。年間で1900万円の費用を節約して、子育て支援にも回す仕組みを整えているらしい。すご!

コモレビを出た後は、森林組合の加工部門を株式会社化した「下川フォレストファミリー」さんを見学させてもらう。道北トップクラスの加工技術があり、シラカバやカラマツと幅広い樹種を扱っていて、集成材からクラフト用までいろんな製品を生産している。木材工場に入ったのは新聞記者のとき以来。丁寧につくられていて驚きだったし、木くずはボイラーに集めれらていて、やっぱり徹底してるなあとしみじみ。

木くずをボイラーに集めるための大きな配管。乾燥機の熱源になっているそう。
羽目板やフローリング材。広葉樹ならナラやシラカバ、タモ、針葉樹ならトドマツやカラマツなど多様な道産の材を使っている

フォレストファミリーさんの後は、役場で挨拶させてもらい、ボイラーを見せてもらい、チップ工場を見学。

チップに加工される、径の細い丸太が集められる「土場(どば)」
土場に集められたチップ加工用の木材。なかなかにフォトジェニック
このどデカイドイツ製の機械で、チップに加工される。間違っても、巻き込まれたくない
暮れなずむ空と役場庁舎

そしていよいよ、新しい地域づくりの動きが相次いでいるエリア「一の橋」へ。

役場を中心に半径1キロ圏内に8割の世帯が集中するコンパクトなまちだけど、限界集落はあったので、一の橋に「バイオビレッジ」をつくりだした。

お年寄りが集まって暮らせる長屋風のしゃれた「集住化住宅」、カフェ(地域食堂)、地域熱の余熱を使うシイタケ栽培施設、障害がある人の支援施設を一ヶ所に集約して、バイオマスボイラーや太陽光でエネルギーを自給している。地域おこし協力隊の方々が、買い物代行とかで暮らしやすい地域をつくろうと活躍しているのもステキ。ビレッジをつくる前と比べて、この集落の人口はほとんど変わらず、移住者が増えたことで高齢化率が下がってるのだとか!

集住化住宅のエントランス。しゃれてる
冬も暮らしやすそう。お年寄りが除雪しなくてもいいようになってる
カフェはお年寄りが使いやすいイスやテーブル。普段使いしやすいお値段とメニュー。地元のおもしろいものも置かれていた
有機ハーブやコスメを製造販売している」ソーリー工房」さんの小屋。好みドストライクでキュンキュンしてしまったー。営業時間中にまた見に行こう。同世代の地元の大工さんが手がけ、オフグリッドらしい。すご!

この「一の橋」というエリア、まだまだ面白くなりそうで。ライフスタイルに合わせて家具を修理する「家具乃診療所」というのができてくる予定だし、近くの廃校ではベルシステム24が、障害をもつ人が働けるチョコレート製造所をつくるらしい。タッグをくむのはこの分野では有名な久遠チョコレートさん! 愛知県の豊橋市に、よく買いに行ったなぁ。

他にも移住者が新しい構想を温めていて。外からでもかなり感じられるけど、「おもしろいことやってそう」という匂いがプンプンする。SDGsの流れで企業からの注目も高まっているみたい。

もともと、名寄市とくっつくかどうか、平成の大合併のころに町内で熱い議論があり、自分たちの地域を見つめ直し、やっぱり林業だ、じゃあ循環だ、と段階をへてきた。当たり前かもしれないけど、その長い間のプロセスや下地があって、いま下川町はここまで来たんだと痛感。そこを理解しないとうわべだけ真似してもダメだろうし、町民3400人のまちだからこそできた部分も見逃せないと思う。

せっかくここまで来たので、夜もじっくり楽しむことにする。コモレビから歩いて10分くらいのとこに、地域おこし協力隊の立花美咲さんがやっている民泊「アナグラム」に投宿。民家を改装した宿で、周りは普通の住宅街だし、おうちに帰ってきたようですごく落ち着く。センスあふれる空間で、江別(札幌から旭川方面にちょっといった所)のレンガで囲った薪ストーブも最高!  ここで、道内各地の木や森の現場を訪ね歩いている無職の大工さん・深田康介さんと出会い、この後の3日間連続して会う不思議な縁ができた。

日本や道北の未来について語り合う、立花さん(右)と深田さん

夜は焼き鳥屋で長田さん、立花さん、深田さんと一杯やって、アナグラムの共同スペースのソファーで撃沈!

下川町は手延べうどんで有名なので、シメにいただきました。んまい!飲んだあとに合う喉越し
次は、ここ行こ
ふかふかベッド。午前3時に入りました
朝から元気いっぱいの深田氏

朝はバスターミナルから始発バスに乗って名寄駅まで。460円。小学生から高校生、お年寄りまでほぼ満員(小学生は立ってる子もいた)。地元の公共交通に乗るとやっぱり気持ちいいし、子どもたちの元気な声にほっこりする。さすが地元の「名士バス」。

下川町のバスターミナルにて

かなり濃厚に勉強させてもらった下川ツアー。今回お会いできなかった人やお店、行けなかった場所もまだまだあるので、次回を楽しみにしよ。クラウドファンディングの返礼スツールをつくる時も下川町で木材を乾燥させる予定だけど、これからどんな形で絡ませてもらえるか、どんどん具体化してこー。楽しみ。

 

移住後はじめての「突哨山」

ゲストハウス「旭川公園」の予定地の近くには、突哨山(とっしょうざん)という里山があって、今や売れっ子になっている清水省吾さんが一部を所有して、消費者が気軽に入り、興味をもてる「オープンな林業」を展開している。

清水さんが展開する「里山部」入り口
木こりとしての貫禄十分な清水氏

「自伐型」というスタイルで、山主(所有者)が森林組合とかにお願いして終わり、ではなく、自分で所有して管理し、職人さんと連携して川下のお客さんまで届けるスタイル。これから北海道で広がっているだろうし、家具産地としての旭川にとって、森が近くにいて木々のことを知れる環境っていうのは何物にもかえがたい。

予定地から車で10分くらいの場所にこの里山と清水さんがいるっていうのは、場所を決める上ですごく大きなポイントになった。感謝!

10月22日には移住後はじめて、突哨山に来て清水さんと作戦会議。名目は、クラウドファンディングの返礼品にもなっているオリジナルスツールの候補木のセレクトだったけど、森のなかを案内してもらい、今後のことをなんやかんや話しているうちに、時間が過ぎて(笑)おかげで家族みんなで、心ゆくまで堪能させてもらいました。

「里山部」の清水さんのフィールドに唯一あるカラマツ
なんだか北海道っぽいシラカバ

木のスプーンとかを作れる「削り馬」が森の中に置いてあった。子どもたちは夢中になって乗りたがる。これ、ゲストハウスにも起きたいなあと夢想中。

当たり前だけど現行林業のうえに成り立っている家具産業。小規模だけど自分たちで所有し管理して手がける、そんな林業と丁寧なものづくり技術を組み合わせる、そんなオリジナルをつくっていきたい。(その片棒を担ぎたい)