里山でなんちゃって木こりお手伝い

 

突哨山(とっしょうざん)の入り口にて。道北の11月とは思えない景色

はやくも11月。まだまだ初雪の便りが届かない。そのおかげで長く紅葉が楽しめてる。

1日には近くの里山「突哨山」で、フリーの木こりの清水省吾さんを訪ねに行く。前回、10月22日にお邪魔したときは、まだ黄色くなった葉っぱがたくさん残っていたけれど、今日はもうほとんどが落ちてしまっていて、秋の深まりというか、冬が着実に近づいていることを教えてくれた。

そして、初めてのアウトドア稼働となったスズキ・キャリイ君はさっそく、4WDの威力をいかんなく発揮! 前日までの雨で粘土質の地面はおもしろいくらいぬかるんでいて、四駆じゃないと絶対に不可能な状況だった。

それにキャリイ君はすごく森にマッチしていて、写真集にできるんじゃないかと思うくらい! やっぱりまちなかじゃなくて、自然の中に置いてこそ軽トラは映える。清水さんの軽トラ(ハイゼット)もなまらカッコいい。

清水さんは、自分の持っている山に、軽トラで材を搬出しやすいようにユンぼと人力で道をつくるということで、何日間にもわたって過酷な作業を続けていた。掘れば掘るほど出てくる大量の泥の処理に悪戦苦闘して、雨の日なんか大変なことになってしまったらしいけど、大方できあがったみたい。いちばん大変な時に手伝えなくて恐縮だったけど、地面に残った木をちょこっと運ばせてもらった。

キノコのホダ木として使うカシワやミズナラを見ていて、カシワの断面に見とれる。なんか神々しい。カシワって名前は知っていたけどあんまり意識したことはなくて、こんな綺麗だったとは。

鹿のワナを見せてもらって、そのあと、ゲストハウスに置くオリジナルのスツールに使うミズナラ探しに出た。清水さんの森には100年生のミズナラがたくさん生えていて、かなり立派な太い幹がかっこいい。(この辺からスマホの電池がなくなって写真なし)。風の通り方木を守る上で大事なこと、「光の一等地」を求めて木々が競っていること、本当に伐るべき木は何かを吟味した上でじゃないと伐らないこと、どんな木が「人間にとって良い木」なのか…。こうやって森の中で直接教えてもらうことで、体に染み込んでくる感じがするなぁ。本とかで聞くのとは全く違う。

このあと、事務所みたいに清水さんが使っている拠点の小屋の近くに行き、ミズナラ(カシワだったかな?)に生えた立派なナメコのホダ木を拝見。手伝ってくれたからということで、なんと一本そのままいただく。ホダ木が動いてナメコがつぶれちゃわないように、軽トラの荷台にあるタイヤで慎重に固定して、わがアパートへ。ちょっとだけワイルドな帰宅を演出。お味噌汁にいれたけど、風味豊かで歯ごたえもあり、なまらうまい。子どもたちも「おいしい、おいしい」とパクパク食べて嬉しかったなぁ。

 

長沼町で厚真町の古材サルベージ!

ゲストハウス「旭川公園」を施工してくれるのは、yomogi8さんこと中村直弘さん。新千歳空港や札幌からほど近い、おしゃれカフェや宿のある長沼町を拠点に、道内各地で大活躍されているー。ご自宅の敷地内にある事務所は、こんな感じ。きゃわわ。送電網につながない「オフグリッド」を、ほぼ達成されている。わくわく!

その中村さんが、北海道胆振東部地震で「自分になにができるのか、すべきか」を自問され、大工さんとして、使えなくなった廃材をどうレスキュー、サルベージ(救済)するかを考えておられた。そこで仲間たちの力を集めて、「salvage yard 古材市」なるイベントを10月28日。なので札幌に泊まって、長沼まで行ってきましたよ。

厚真町の農家さんの納屋にあった古材を選んで、これまた古物の脚に固定し、オリジナルのテーブルをつくるというワークショップ。次男・陽己(はるき)も前日の木工ワークショップの経験を生かして(?)、やる気満々で磨き、インパクトを手にしてて、最高だったなぁ。

選んだのはカツラで、幅は40センチ、長さ80センチほど。今はなかなかこれほど立派なカツラはないようで、貴重なんだとか。しかも自然にできた緑色のシミのようなかわいい模様や、たくさんの虫食いもあって、どれもが「ここにしかない」個性的な表情を演出してる!

ワークショップじゃなくても、古材だけを見に来るお客さんもたくさんいて、ほんと素晴らしいイベントに参加させてもらえた幸運に感謝。これに間に合うように移住できただけでも、でっかい意味があったわ。

この日できた机、リビングに置いて毎日大切に使ってます。すごく文化レベルが上がった気がする(笑)愛着感はハンパないしで。

ところで、会場はナガヌマ町ハナレという、カフェ兼雑貨ショップの納屋を使っていたんだけど、駐車スペースは傾斜になってて前日の雨で土がぐちゃぐちゃに。マイカーのミニバン は後輪駆動(FR)で、一度停めてからぬかるみにはまって動けなくなり、新聞紙や木枝をかませても無理で、来場者の皆さん総出で、サルベージしてくださった。たぶん45分くらいはかかったかなぁ。大変に、大変に、ご迷惑をおかけしました。早く四駆を買わなければと、夫婦そろって痛感!

そしてミニバンレスキューにも率先して加わってくれたのが、前日に旭川の我が家を出た深田氏

古材市の会場を後にする深田氏

この日は中村さんに会いたいということで、来ていたのです。すごいつながりだわ。このイベントでもちょっと話したけど、この後は十勝地方の更別村にある「熱中小学校」に行くのだそう。ここにゲストハウスがあるのを十数時間前に知ったらしく、自分も24時間くらい前に知って気になっていたばっかりだったので、どこまでも気持ち悪い偶然が重なる相手です。こんごもつながっていきそうだ。

ハナレさんのコーヒーやクッキー、優しくてすんごいおいしかった。お店の方は大人気でめちゃお忙しい感じだった。

木工ワークショップからほろ酔いでススキノへ

いま住んでいる旭川市の永山地区というところには、好きな人にはたまらない「旭川デザインセンター」がある。旭川家具の工業共同組合が運営していて、自慢の商品を並べている。ここはいつも見るだけだったけど、ときどきは木工ワークショップをやっていると前回お邪魔した時に聞いて、さっそく申し込んだ。

10月27日、「アイスプロジェクト」の小助川さんによる「巣箱型の貯金箱」をつくる催しがいよいよ開催。すごく楽しみだったー。なので、この愛らしい相棒を初出動させて、デザインセンターへ急行いたしました。

瀟洒な建物にも似合うキャリイ君

机に座ると、ちょっとずつたくさんの種類の木片が置かれていく。下の写真はまだその途中だけど、なんだか映える。

今回のワークショップは、小助川さんたちの指導をうけて、この木片にヤスリがけし、ボンドで接着し、オイルを塗り、組み立てて形にするというシンプルなもの。傾斜がかった屋根部分の細長い木片は色とりどりなので、つくる人によって個性がでる。次男・陽己(はるき)を連れていったけど、予想に反して没頭してくれてびっくりやら、うれしいやら。

時間がおしてしまって小助川さんにご挨拶できなかったけど、次回もまだまだあるので、また来ようー。

お昼は、春から転勤で同じ永山(しかも歩いて行けるほどのご近所)に住んでいるご夫婦のお宅にお邪魔して、昼飲み&ランチ会。自分でお菓子とか料理とかできちゃう凄腕ままで、息子さんも我が子たちと年が近いし、もっともっとお付き合いを深めていきたいなー。

夕方には妻の運転で札幌に移動し、翌日のステキイベントに参加する準備を。北海道胆振地震の対策でできた「ふっこう割」なのか、ホテルで6000円引きのクーポンが出てて、ゲストハウスの個室よりも安かったのでやむなくホテルへ。5人で8000円台なら高くない。痛いけど。

大都会。ミニ東京だ

申し訳ないけど子どもたちは妻に任せ、自分はいそいそとススキノへ!  石川県で勤務していたころにつながった行政関係者と久々に会い、近況を報告しながら、ああでもない、こうでもないと。地元の生の声を聞けて有意義だったー。大人しく一軒目でホテルに帰って、すぐ撃沈。

移動の車中でずっと寝てしまって、寝つきが遅かった子どもたち。いつも振り回して申し訳ない

森ビルつながりで森いっぱいの下川町ざんまい

浜松にいたころのはなし。東京の森ビルで六本木ヒルズのタウンマネジメントをされて浜松へUターンし、「丸八不動産」に入ってまちづくりの面白い仕掛けをされている高林健太さん(34)と知り合った。いろいろ話すうちに、北海道・下川町で頑張っている同期がいると聞いて、さっそく紹介してもらうことに。それが、下川町産業活性化支援機構のプロジェクト統括部長、長田拓さん(34)。自分と同い年で、しかも大阪出身。これは間違いない‼️

下川のすべてを教えてくれた長田さん

下川町は森林が町域の9割を占め、林業・経済・エネルギーの「地域内循環」を時間をかけて進め、移住者が増えてきているまちであります。近年は転入超過(2017年は32人のプラス)で、人口減少は緩和されてる。地域づくりの分野では全国的に有名で、しかも旭川からは80キロしか離れていない。北海道の感覚では、ちょっとそこのコンビニに行くくらい、すぐ近く。

自分の旭川のゲストハウス予定地からすぐの里山で木こりをやっている清水省吾さんたちも、伐った木を乾燥させるときは下川町まで持って行ってるし、この辺の林業集積地といえば下川は外せないので、旭川でそれっぽいことに首を突っ込むなら、下川を見ずして暮らせないのです。

なので10月25日にさっそく下川へ。この2日前に納車されるはずだった軽トラ(スズキ・キャリイ)が車検を通らず、この日はやむなく列車で行くことに。それはそれでもちろん楽しいけど、時間のロスは大きく、名寄駅からは長田さんに迎えに来てもらうことに。

最寄りの永山駅(旭川)から普通列車に乗って、和寒(わっさむ)という駅で一回おりて、後から来る特急「宗谷」に乗り換え。新婚旅行以来、5年ぶりくらいだなぁ、あの時はまだ「スーパー宗谷」で本数ももっとあった。 力強く唸るディーゼルエンジン音、軽快で小気味よいジョイント音、適度な揺れ。そのどれもが生命力にあふれていて、楽しいことこの上ない。旭川〜札幌の速達特急電車「カムイ」「ライラック」にはない楽しさがあるわ。

和寒駅にて。かっこいい。4両編成で、ぱっと見で5割くらいの乗車率。観光や都市間輸送が多いイメージ
名寄駅にて。かわいい!

「宗谷」を降りた名寄駅は、売店も旅行会社も撤退してしまった寂しい雰囲気で、駅前から続く商店街もなかなかにひっそりとしていた。道路が広い分、その辛さをより感じてしまう。名寄はスノボで来たことあるくらいだけど、下川を含めこの辺りの拠点都市なので、もうちょっとガヤガヤしてるかと思った。郊外のイオンは違うかもしれないけど。。。

11時45分、長田さんの運転するスイフトが名寄駅に。それから20分しないくらいで下川町の中心部に着いて、そのままランチ。そば屋さんの看板がかかっている「やまと屋」の暖簾をくぐる。ここ、もともと後継者がいなくて店を閉じたけど、商工会長さんが一念発起して自分で店を買い、曜日限定で開くようになったとか。

人口3400人のまち。一つの店がなくなることがまちにもたらすインパクトは大きいし、中心街の「景色」を保ちたいという志はなんともかっこいい! しかもこの日は、この店で移住者の方がチャレンジショップを開いた初日だとか。こんなステキな動きがあるなん、さすが!とさっそく感じ入ってしまった。みんな顔を知ってるんじゃないかと思うくらい、お客さん同士が楽しくワイワイガヤガヤしてて、よそ者のこっちまで嬉しくなる。しかも生姜焼き定食、味がしっかりしていてめちゃ好み。

ランチの後は、長田さんの職場である、まちおこしセンター「コモレビ」へ。NPO法人の観光協会や興業協同組合が入居して、交流スペースがあるところ。かつて駅があった場所で、バスターミナルが目の前だからめちゃ便利。

子どもたちの遊ぶ姿もあった。自分が高校生ならここでダベりたいなーと思っていたら、すでに実践者がいた

 

ちょっと分かりにくいけど、黒っぽい外壁の板には、木炭を作るときにでる煙を燻して防腐・防虫効果を持たせた「燻煙(くんえん)」処理をしている。これも、余すところなく使う精神から。

下川のこれまでとこれからについてレクチャーをいただく。2003年、北海道で初めて、流通や加工のプロセスを国際的に認証する「FSC」を取得するなど、循環型の林業経営をやってきて、2007年に町自治基本条例で「持続可能な地域社会の実現を目指す」とうたい、2008年に環境モデル都市、2011年に環境未来都市に選定。全国で徐々に知られるようになって、ことしはSDGs未来都市にもなった。SDGsは国連で採択された、「持続可能な開発目標」を示す国際的な目標で、町でも代表者がいろんな観点から現状と目標を話し合い、「誰ひとり取り残されず、しなやかに強く、幸せに暮らせるまち」を目指している。

基幹の林業では余すところなく使うことを徹底し、森林バイオマスを活用しての熱自給率は49%にのぼる。バイオマスボイラーを次々と導入し、公共施設の熱供給の68%を再生エネルギーに転換。年間で1900万円の費用を節約して、子育て支援にも回す仕組みを整えているらしい。すご!

コモレビを出た後は、森林組合の加工部門を株式会社化した「下川フォレストファミリー」さんを見学させてもらう。道北トップクラスの加工技術があり、シラカバやカラマツと幅広い樹種を扱っていて、集成材からクラフト用までいろんな製品を生産している。木材工場に入ったのは新聞記者のとき以来。丁寧につくられていて驚きだったし、木くずはボイラーに集めれらていて、やっぱり徹底してるなあとしみじみ。

木くずをボイラーに集めるための大きな配管。乾燥機の熱源になっているそう。
羽目板やフローリング材。広葉樹ならナラやシラカバ、タモ、針葉樹ならトドマツやカラマツなど多様な道産の材を使っている

フォレストファミリーさんの後は、役場で挨拶させてもらい、ボイラーを見せてもらい、チップ工場を見学。

チップに加工される、径の細い丸太が集められる「土場(どば)」
土場に集められたチップ加工用の木材。なかなかにフォトジェニック
このどデカイドイツ製の機械で、チップに加工される。間違っても、巻き込まれたくない
暮れなずむ空と役場庁舎

そしていよいよ、新しい地域づくりの動きが相次いでいるエリア「一の橋」へ。

役場を中心に半径1キロ圏内に8割の世帯が集中するコンパクトなまちだけど、限界集落はあったので、一の橋に「バイオビレッジ」をつくりだした。

お年寄りが集まって暮らせる長屋風のしゃれた「集住化住宅」、カフェ(地域食堂)、地域熱の余熱を使うシイタケ栽培施設、障害がある人の支援施設を一ヶ所に集約して、バイオマスボイラーや太陽光でエネルギーを自給している。地域おこし協力隊の方々が、買い物代行とかで暮らしやすい地域をつくろうと活躍しているのもステキ。ビレッジをつくる前と比べて、この集落の人口はほとんど変わらず、移住者が増えたことで高齢化率が下がってるのだとか!

集住化住宅のエントランス。しゃれてる
冬も暮らしやすそう。お年寄りが除雪しなくてもいいようになってる
カフェはお年寄りが使いやすいイスやテーブル。普段使いしやすいお値段とメニュー。地元のおもしろいものも置かれていた
有機ハーブやコスメを製造販売している」ソーリー工房」さんの小屋。好みドストライクでキュンキュンしてしまったー。営業時間中にまた見に行こう。同世代の地元の大工さんが手がけ、オフグリッドらしい。すご!

この「一の橋」というエリア、まだまだ面白くなりそうで。ライフスタイルに合わせて家具を修理する「家具乃診療所」というのができてくる予定だし、近くの廃校ではベルシステム24が、障害をもつ人が働けるチョコレート製造所をつくるらしい。タッグをくむのはこの分野では有名な久遠チョコレートさん! 愛知県の豊橋市に、よく買いに行ったなぁ。

他にも移住者が新しい構想を温めていて。外からでもかなり感じられるけど、「おもしろいことやってそう」という匂いがプンプンする。SDGsの流れで企業からの注目も高まっているみたい。

もともと、名寄市とくっつくかどうか、平成の大合併のころに町内で熱い議論があり、自分たちの地域を見つめ直し、やっぱり林業だ、じゃあ循環だ、と段階をへてきた。当たり前かもしれないけど、その長い間のプロセスや下地があって、いま下川町はここまで来たんだと痛感。そこを理解しないとうわべだけ真似してもダメだろうし、町民3400人のまちだからこそできた部分も見逃せないと思う。

せっかくここまで来たので、夜もじっくり楽しむことにする。コモレビから歩いて10分くらいのとこに、地域おこし協力隊の立花美咲さんがやっている民泊「アナグラム」に投宿。民家を改装した宿で、周りは普通の住宅街だし、おうちに帰ってきたようですごく落ち着く。センスあふれる空間で、江別(札幌から旭川方面にちょっといった所)のレンガで囲った薪ストーブも最高!  ここで、道内各地の木や森の現場を訪ね歩いている無職の大工さん・深田康介さんと出会い、この後の3日間連続して会う不思議な縁ができた。

日本や道北の未来について語り合う、立花さん(右)と深田さん

夜は焼き鳥屋で長田さん、立花さん、深田さんと一杯やって、アナグラムの共同スペースのソファーで撃沈!

下川町は手延べうどんで有名なので、シメにいただきました。んまい!飲んだあとに合う喉越し
次は、ここ行こ
ふかふかベッド。午前3時に入りました
朝から元気いっぱいの深田氏

朝はバスターミナルから始発バスに乗って名寄駅まで。460円。小学生から高校生、お年寄りまでほぼ満員(小学生は立ってる子もいた)。地元の公共交通に乗るとやっぱり気持ちいいし、子どもたちの元気な声にほっこりする。さすが地元の「名士バス」。

下川町のバスターミナルにて

かなり濃厚に勉強させてもらった下川ツアー。今回お会いできなかった人やお店、行けなかった場所もまだまだあるので、次回を楽しみにしよ。クラウドファンディングの返礼スツールをつくる時も下川町で木材を乾燥させる予定だけど、これからどんな形で絡ませてもらえるか、どんどん具体化してこー。楽しみ。

 

移住後はじめての「突哨山」

ゲストハウス「旭川公園」の予定地の近くには、突哨山(とっしょうざん)という里山があって、今や売れっ子になっている清水省吾さんが一部を所有して、消費者が気軽に入り、興味をもてる「オープンな林業」を展開している。

清水さんが展開する「里山部」入り口
木こりとしての貫禄十分な清水氏

「自伐型」というスタイルで、山主(所有者)が森林組合とかにお願いして終わり、ではなく、自分で所有して管理し、職人さんと連携して川下のお客さんまで届けるスタイル。これから北海道で広がっているだろうし、家具産地としての旭川にとって、森が近くにいて木々のことを知れる環境っていうのは何物にもかえがたい。

予定地から車で10分くらいの場所にこの里山と清水さんがいるっていうのは、場所を決める上ですごく大きなポイントになった。感謝!

10月22日には移住後はじめて、突哨山に来て清水さんと作戦会議。名目は、クラウドファンディングの返礼品にもなっているオリジナルスツールの候補木のセレクトだったけど、森のなかを案内してもらい、今後のことをなんやかんや話しているうちに、時間が過ぎて(笑)おかげで家族みんなで、心ゆくまで堪能させてもらいました。

「里山部」の清水さんのフィールドに唯一あるカラマツ
なんだか北海道っぽいシラカバ

木のスプーンとかを作れる「削り馬」が森の中に置いてあった。子どもたちは夢中になって乗りたがる。これ、ゲストハウスにも起きたいなあと夢想中。

当たり前だけど現行林業のうえに成り立っている家具産業。小規模だけど自分たちで所有し管理して手がける、そんな林業と丁寧なものづくり技術を組み合わせる、そんなオリジナルをつくっていきたい。(その片棒を担ぎたい)

 

デザインセンターで考える、旭川家具のこと

旭川に遊びに来ていた兵庫県の母を旭川駅で見送って、写真のような感じでブラブラしていると、コンコースにる「旭川家具ラウンジ」が目に入った。(使っている人が多くてブツの写真は撮れず)。

家具は日本五大産地に数えられるほど業界では有名なのに、道外の人や、地元の若い人にあんまり知られていない。自分の感覚では、静岡で「知っている」という人に出会ったことがない。それでも、いやそれだからこそ、まちの玄関口である駅にいろんなメーカーの商品を並べて、実際に使ってもらって親しんでもらおうということなのかなと勝手に思ってる。あんまりコンコースでのんびりした事がないので分からないけど、いつも学生さんが座って勉強したりしゃべったり、ビジネスマンが座ったり、いい感じの光景を何度か見てきた。この日は人が多くて、家具の「稼働率」も高かった。

それを見ていると無性に、住んでいる永山地区にあるデザインセンターに行きたくなって、行こうとなった。妻は行ったことがないし、移住してからは自分も行ってない。

そして、見てきた印象。何度か行ってるけど、商品がいつも同じところに、同じように置かれているとしか思えない。確かに高級そうで北欧風にデザインされたものが多いけど、じゃあ「旭川家具」ってどういうもので、どんなブランドなのよ?っていうのが見えてこない。旭川じゃなきゃダメ、っていうポイントというか。。。

かつて初任地の瀬戸支局で焼き物の取材をしている時に、器を生活の中に置いてどう魅せていくのが大事なのかを考えたことがあったので、このセンターでも同じようなことを感じた。似たようなデザインの高級家具を並べているだけで、どんなライフスタイルに合うのかとか、全然わからない。

そんな中でもすごく気になったのは、gauzy calm works(ガージーカームワークス)さんと、小助川さんという職人が個人でやっておられる「アイスプロジェクト」。

前者は、デザインセンターを運営する旭川家具工業協同組合の中では最年少経営者がいて、30歳台以下をメーンメンバーに擁している。道産材のナラを積極的に使っている。

アイスプロジェクトは、「使い捨てない、長く愛す」をテーマにしたもので、オリジナル・オーダーメイドの家具を制作している。この日の時点では小助川さんにお目にかかってなかったけれど、なんとなくお人柄が顔が分かる気がした。

評論家みたいな偉そうなことを言うつもりはないけど、すごいエネルギーや勢いを感じるし、「新しいことをやってくぜー」という雰囲気が伝わってくる。

これからもっともっと注目させてもらおー。帰りぎわ、ちょうど小助川さんのワークショップがあると職員の方に教えてもらって、幸せな気持ちでお店を後にしたのでした。

 

 

旭川の木と家具を考えるシンポジウム

10月13日の午前中は、段ボールの山と格闘がつづく。そんな中でも、仮住まいアパートの裏から見える大雪山系には目と心を奪われる。

細かい買い物とかをするついでに、久々に東鷹栖というところにある、「米蔵(マイハウス)」へ。リゾットやドリアうまい。多分夜のメニューになるんだろうけど、ここは自家製ベーコンが超美味。地元の若手農家さんが始めたお店で、近隣の顔の見える農産物を使っている。そういえば、まだソフトクリーム食べてない…。

夕方は、まちなかで外せないシンポジウムが。静岡大に籍は移られたけど、旭川大で家具産業の研究や木育の実践をしてこられた横田宏樹先生や、自分で山を所有し管理している「自伐型林業」の清水省吾さん、家具職人でお隣・当麻町で森を持っている原弘治さん、旭川市工芸センターの有馬有志さんが登壇! と来ては、行かないわけにはいかない。

横田先生からは、一つの(旭川圏域)の産地の中でのつながりのなさ、山が近くにあって木材やデザインできる人がいることなど、特徴の解説があった。その上で、なぜ農業のように「6次化」が進まないのか、産地の持続性を保つ上でどうやって消費者とつなげていくのかといった問題提起が。「家具」ではなく「家具づくり」を売っていくべきだというサジェスチョンもあった。大興奮!! 有馬さんの報告は聞けなかったけど、パネル討論の中で「誰がどこで作ったのか、家具でも伝えないといけない」「この木はどういう所で育って作られたかわかっていないとけない」というご指摘があった。

力説する清水さん

清水さんからは、道産材=「あ、いいな」というイメージが先行しているだけで、川上=森の現状が知られていない課題を提示。50年で一度リセットするような皆伐や、一代で終わる林業経営が木の価値を結果的に損なっていること、補助金漬けでだましだまし回っている現行林業への批判があった。小規模でオープンな林業家だからこそ、直接消費者とかかわり、産地だからこそ家具職人と林業家がつながっていくことが大事だと訴えていた! いいなー、やっぱり。

25歳で家具工場を持った原さんは「木を選ぶところから家具をつくる世の中になればいい。生えている所から(意識して)作ると、ずっと森のことが頭に残る」「どうやって(顔の見える家具を)消費者に選択してもらうか。それは教育、木育。感性や楽しさを子どもに伝えたい」と力説。

皆さんが近くにいるから、旭川市の永山地区というところでゲストハウスをやろうと思ったと言っても過言じゃない。

夜は一度家に戻り、ご飯を食べて準備して、夜の旭川駅へ。網走からの特急「オホーツク」に乗って、あした道庁主催ビジネスコンテストのある札幌へいざ出陣!

 

 

 

那須から仙台経由、陸前高田ゆき

(つづき)

Chus(チャウス)で眼が覚めると、あたりは真っ暗だった昨夜とはまったく違う光景に驚いた。こんなにたくさんのショップが張り付いているなんて! しかもどれも、「丁寧な暮らし」が好きそうなお店ばかり。パッと見る限り11時開店のとこばかりだったので行けそうにはないけど、首都圏からわざわざ足を運ぶお客さんがいるのも頷ける。

憧れの上げ床式の花壇。ゲストハウス「旭川公園」でもいつかやりたい!ハーブとか植えたい!

昨晩も見た、小さな古本屋やさん。夜もいいけど、昼もいい。景色になっている

チャウスだけではない、人気のスコーンショップ「SHOZO」とか秀逸なショップがいくつもあわさって、一つの「景色」になってる。ここの場合はお店だけど、「ここに行けばなんか面白いできそう」と思わせる仕掛けとしては最高なクオリティだなぁと思った。

チェックアウトして、また東北道で仙台へ。ちょうど息継ぎするのに良かったのと、ぜひ見たい公園があったので。

あまりにも当たり前すぎて恐縮しちゃうくらいだけど、東北随一の繁華街・国分町に車を停めて、にぎわっている商店街の一角にある牛タン「利休」でランチ。なんか普通の旅行みたいになってきた。でも安定してうまい。

たくさん頼んで子どもが食べきれず、けっきょく自分がご飯を3杯くらいいただくことになってパンパンにお腹が膨らんだので、小走りで「肴町公園」を目指す。

肴町って、浜松にもあってよく行ったから懐かしいなぁ。ほどなくして到着。観光名所でもなんでもないけど、センス良さげな若い男子2人組や、若い子連れ数組が憩っていた。

実はここ、2016年に コーヒーやお菓子の屋台を並べて、ハンモックも置いて、ブランコのペンキ塗りワークショップもするイベントが開かれまして。代表の本郷さんという有名な方たちが、公園のような自然に人が集まる、セミパブリックな場所をつくろうとコーヒースタンドを作り、その流れでイベントも企画された。ひと気の少ない公共空間を活用しようという、公民連携の分野では知られた取り組み。

百葉箱をつかったライブラリー。子ども向けの本が手に取れる。これはやっぱ楽しい
SENDAI COFFEE STAND さんでコーヒーをいただく。チャイとかお菓子もある

 

で、コーヒーを飲みながら自分たちも一服してみた。百葉箱を使った文庫「フリーライブラリー」で次男が本を読みたがって泣きじゃくって、憩いどころじゃなかったけど。どんどん北上しないといけないので、許しておくれ。

後ろ髪を引かれながら一気に一関市まで東北道でいき、そこから延々と下道を通って、陸前高田に到着。峠を越えて、なかなか疲れる道中だったけど、真っ暗な中にも、この一帯が津波で更地になったことを感じさせるのには十分だった。工事中だと分かる自発光式のコーンに導かれる道路ばかりで、大きな大きな空き地が道の両側に広がっていた。

震災の爪痕は翌日見ることにして、とりあえず今宵の宿「箱根山テラス」へ。暗闇の中、急な山道をのぼってたどり着く、静謐な空間。貸切で、よけいに静かに感じられたのかも。チェックインしてまた車にのってご飯を食べ、きょうは早く寝て疲れを取ることにしようー。

このゲストハウス、この空間で一泊7000円ほど。地元の建設会社社長が、震災の後にエネルギーの循環の大切さを痛感して、「木と人を生かす」をコンセプトに始められた、すごいところ。詳細はまた次回に。                          (つづく)

 

「あわくら温泉 元湯」の冷めない心地よさ

(つづき)

「ようび」を出てから、今宵の宿であるゲストハウス「あわくら温泉 元湯」に向かうには早すぎたので、道の駅でも行こうかとブラブラ車を走らせることに。

道の駅には団体バスツアーのご一行が複数組いて、パッと見て関西の人っぽかった。どんなルートで寄ったのか気になるところ。買い物するには良さそうだけど、道の駅自体は普通の感じ。びっくりしたのは隣にある公衆トイレであります。

こんな美しいトイレ見たことない。ここなら、飲みすぎてお腹痛くなっても自分を許せてしまうわ。

宿には5時半くらいに着いて、ゆっくり温泉に入って疲れを癒すことに。ここは「こどもの笑顔がまんなかにある大きな家」がコンセプトで、キッズスペースや遊び場「こどもばんだい」がある。廃業した温泉施設を蘇らせていて、地元に愛されているのがよく分かるところだった。

子連れに優しい配慮が随所に

お湯が気持ちいいのは当たり前だけど、湯上りにいただいた晩ご飯がおいしいのにびっくり。

リベンジかなった、タルマーリーのビール。こんなおいしいクラフト飲んだことない
棚田の米で作られたライスビールと、森のうなぎ燻製

西日本豪雨の被災地に300円が寄付される「おうえんプレート」(1500円)と、木のまちならではの、木質バイオマスを燃料に使うとか資源・エネルギー循環を意識してる「森のうなぎ燻製」(600円)、買い忘れたタルマーリーのビール(セゾン、800円台、岡山県の棚田でつくられた米をつかったビール。けっこう頼んじゃって、宿泊の3240円を大幅に上回る売り上げに貢献したのでした。村内に限らず、周辺の本当にいいもの、ストーリーのあるものを提供していて、うれしくなる。「旭川公園」のカフェスペースの参考になるわ。

共同スペースは本や雑誌、近隣のお店の情報がたくさん集まっていて飽きないし。地元の人がふらっとお風呂に入ったり、宴会をしたり、生活感が漂っていて、心地いい!

廊下には味噌も置いてる

キッズスペース
キッチンを望む
こどもばんだい。秘密基地

ドミトリーはこんな感じ。雑魚寝の湯治場みたいな感じ。

隼駅近くのゲストハウス「8823BASE」のベッドと比較して思ったけど、自分で畳の上に布団を敷くのって、縛られないかんじで、これはこれでいいなと。あらかじめ決められた、セットされた所に寝るのより、自分の意思とタイミングで場所や角度、レイアウトをカスタマイズできる。他のお客さんは長期の1人だけで、大広間だから消灯に気を使うけど。

共同スペースからドミトリーに続く廊下。味がある
ドミトリー入り口

朝ごはん(600円)は有機無農薬の卵と、出雲の古式しょうゆがお目見え。タルマーリーのパンでも思ったけど、毎日のもので噛みたくなる食べ物って、すごく幸せを感じる。価格設定は参考になる。

卵がめりこんじゃって、うまく撮れなかった。。。お代わりできるので、もちろんオーダー

昨日は大雨で周囲がよく分からなかったけど、周りのロケーションはめちゃよかった。川もきれい。

昨夜とは打って変わって心癒される空気感

宿の隣には温泉の自動販売機が

(山陰の旅はまだまだ続く)

「ようび」で美しい雷に打たれた

(つづき)

雷に打たれましたね、これで

タルマーリーを出て30分くらいかしら、次の目的地・岡山県西粟倉村に到着。雨脚はどんどん強くなって、仮に汽車が動いていてもコンビニ傘で何十分も歩くのはつらい。ちょっとした嵐。レンタカーでほんと正解。

主張しすぎているわけじゃないけど、強烈な存在感を放つこの外観にまず見とれてしまった。全国の皆さんの力が集まって建てられたというストーリーも相まって。

これに見とれない人はいないだろう(きっと)

普段はこのショールームは予約制だけど、日曜日はフリーオープンらしく。着いてから電話して、担当の方に迎えていただいた。一歩踏み入れれば、そこは息を飲む空間で。

 

この「ようび」という家具メーカー、全国手にも知られた存在で、超絶なオシャレさだけでなく、底流する森やものづくりへのマインドがすっごく美しいのです。単なる「用の美」じゃないんです。地域の材に誇りを持ち、可能性を探り、次代につなげ、循環させて意識を高めていく。トータルでのデザインをしてるって感じかしら。旭川家具で課題として指摘されている、地域との掛け算的なことを、さまざまに考えられいるんだなーと思った。

ホームページにある文言にも、それはよく現れてる。

私たちが作りたいのは、「人に使ってもらって生活が楽しくなる物」。観賞用ではなく、使い勝手の良さと楽しさがあふれる「用の美」。相手の欲しいものを本気で作るとそこに「用の美」が生まれる。  ようびが工房を置く西粟倉村は全面積の95%が森林、村民1500人強は海抜300m台の盆地に暮らす。「50年まえに将来の子どもや孫のために植えた木を、立派な100年の森に育てていく」と、村ぐるみで英断。今や清流と自然にも恵まれた地域再生の成功モデルとして名高い

「ようび」ホームページより

村と会社が同じ方向を向いてるんだな、きっと。

そんでもってもう一つ、この職能集団にはストーリーがあって。「ツギテプロジェクト」っていうやつ。

2016ねん1月に社屋が全焼し、   木材を組み合わせる「継ぎ手」の意味だけど、次の時代への「継ぐ」という意味も込められている。5500本ものスギの間伐材を格子状に組み立てていく。全国から林業の関係者がやってきて、少しずつ形にしてきた。簡単に言えばボランティアだけど、この日ショールームで応対してくださった方は「ボランティアじゃない。忘れていた『ともしび』を付けに来たような感じでした」と振り返っていた。妙にしっくりきた。

という感じで、この「ようび」は只者じゃないんです。そしてショールームでは、只者ではない感を放っているスツールを目撃してしまった。瞬間、雷に打たれたような感じに。

超絶かわいいスツール

これです。前にブルータスでも特集されていた、人気テキスタイルデザイナーの氷室友里さんの作品。座り込むほどに、おもしろい「変化」を楽しめる。そして文句なしに、かわいい!かわいすぎる。

これに一目惚れしてしまったわけです。ただ、当たり前だけどこの作品には「旭川」のあの字もないわけで。そこに「うーん」とと思いながら、担当の方と話していると、「うちはいま近くの山をきれいにしようとやっていますが、本当は日本全国でやりたいんです。各地の材を使って、デザインを組み合わせて、新しいものをつくりたい。旭川の材でやりましょう!」とびっくりするくらい瞬間的に話がまとまった!

この後、ゲストハウス「旭川公園」のバックヤードの突哨山で木こりをしている清水省吾さんに連絡してみると、「なまらいいですね! やりましょう」とのこと。一気に旭川×ようび×氷室友里テキスタイル のコラボレーション企画が前に進むようになった。これ、絶対におもしろい。

「やがて風景になるものづくり」が「ようび」のコンセプト。旭川家具ももちろん置くけど、旭川公園でもこのスツールが風景の一つになるように育てていきたい。

(山陰の旅はまだまだ続く)