隣の畑、そばの川、ときどき裏山

春本番。シラカバなのか、花粉も本番です。コーヒーを控える毎日。

敷地内の「公園ファーム・離れ」で、ラベンダーを発見!

5~6月は、「今のうちに」を迫られることがいくつかあって、代表格が畑。次点が薪の調達であります。雨が本格的に多くなる前に、気温がまぁまぁ高くなる時に、いざ。

6月1日、去年から始めた「みんなの公園ファーム」が始動しました。いつもカフェに来てくださる皆さんにお手伝いしてもらい、畝をつくっていく。苗は、ご近所で町内会活動でも役員同士の農家・Tさんから大量にいただいて。

トマト・ピーマン・セロリ・パセリ・ナス・ジャガイモ・トウキビ・シソを、30mくらいの区画に植えていく作業。去年は土をふるいに掛けて小石を分けて、えっさ、ほいさと高く盛っていたけれど、2年目は大進化。これまたいただきもののマルチ(保温・乾燥防止のビニル)を敷いて、その穴に植えていく。めっちゃ速い!!

汗を流したあとは、みんなで賄いごはんと、アイスコーヒーで休憩。みんなで作業するって、この時間のためにやってるんだな~と思える、ヒュッゲなひととき。

皆さんが帰られたら、管理人は里山部・清水省吾さんが管理する山へ。「裏山」として使わせてもらってて、片道10分ちょっとだから、いつでも行ける。

途中、人工の「永山新川」を渡る橋から、あまりに大雪山と手前の緑がきれいだったもんで、車を停めてボーっとする。たまたま、宗谷本線のトラス橋をDECMOことH100型が通過。車体自体はステンレスで味気ないけど、この景色だからなんでも許せちゃう。

里山部のベースの「突哨山(とっしょうざん)は、旭川市と比布町にまたがっていて、カタクリの群生で有名。ゲストハウスで器を使わせてもらっている陶芸家・工藤和彦さんの「ウラヤマクラシテル」もこの山にありまして。駐車場のある「カタクリ広場」を過ぎてちょっと行ったところに、「里山部」の入り口がある。ここからは軽トラがおススメ。なんてったって清水さんに触発されて軽トラ買ったようなもんだから、四駆でアグレッシブに走らせる!

昨シーズンに取りにこれなかった分の薪は、ちょうど荷台満載くらいの量。ヒグラシや鳥の鳴き声をBGMに、筋肉痛覚悟で猛烈にポンポン載せて、ほどよく汗をかいて。重さでブレーキの利きにくくなった軽トラを駆り、ゲストハウスへ。

この前日には、ご近所さんからも大量の薪の差し入れがあったので、今年の冬の7割くらいはなんとかなりそう!

それにしても、畑が歩いてすぐあって、食べるもの(の一部)を自分たちでつくることができて、少し足を延ばせば永山新川も石狩川もあって、森があって。あぁ、この場所を選んでよかったーと思えた1日。この近さこそ、豊かさ。しかも人にも恵まれて・・・。

旭川、やっぱいいなー!

「ド」「レ」「ミ」と、つながるチカラ

今はやりの音楽はおろか、有名な歌手の名前もあまり知らない。眠気覚ましのYouTubeくらいしか日常的に聞く音楽がない、あんま褒められたもんではないわが身でも、年に何度か、たまたまご縁をいただいて耳にした音楽に、強く打たれることがある。書かずにはいられないことが家具メーカーのショールームであったので、ごくごく簡単にお伝えするのであります。

9月12日の夕方、旭川家具を代表するメーカーの「匠工芸」であった恒例の「星空コンサート」で、長尾匡祐さん(ヴォーカル)、せらよこさん(ピアノ)ご夫妻の「ドートレトミシー」さんのライブがあった。 ご夫妻は旭川公園にも来ていただいていて、東川町の地域おこし協力隊としてご活躍の幅を広げていらっしゃる。行かないわけにはいかない。

憧れていた星空コンサート。匠工芸さんから案内のDMをいただいて、「これは!」と思いたったものの、アナウンス直後に締め切られるほどの人気ぶりらしく。 ぜいたくな自社のチェアーを距離を離して置き、50名限定というプレミアムチケット! YouTube生配信もあったけど、直に聞く機会に恵まれたので、喜び勇んで軽トラを30分走らせた。

一曲目は、オリジナルの「̪̺̪̺Bridge」という曲。

「昔々の遠い国」で、思いを寄せ合いながら大きな川を隔てた別々の村に暮らす「娘」と「若者」が、橋が架けられたことで結ばれ、「小さな舟」で故郷を離れるという物語。なぜか四国の四万十川を思い浮かべて、「娘」と「若者」の着ているものや年頃合いとか、いろいろ想像を巡らせた。 じーんときて、思わず涙がなじむ。

別に悲しい内容ではないのに、魂のこもった言葉と、過剰に主張しないピアノとギターの音色が、鼻の奥のなにかをつついてくるような感覚。

「Bridge(橋)」も音楽も人をつなぐものだけれど、つなぐことで良くも悪くもいろいろ引き起こす、でも川の流れのように、時間の流れによって全てが良い方向に向かうし、それを楽しんで受けれていこうよ、っていうメッセージであるように聞こえて。この歌は「若者と娘は子供たちに連れられて いつかきっとこの橋に戻るだろう」という言葉で締めくくられる。いいなぁ。

長尾さんの声は、伸びやかで、澄んだなかに時折男声らしい力強さも顔をのぞかせる。その表情は、ほんとうに嬉しい、楽しいよという感じで。コロナで、大勢の前での表現を封じられていただけに、どれほどの幸福感なんだろうと、じわじわきてしまった。よこさんのピアノは、いのちの喜びに満ちているようで、そっとそばに寄り添い続けてくれるような優しさと速さが、じん、と心に入ってくる。何を思い浮かべて声を出しているのか、どんなシーンを描いて鍵盤をはじいているのか、気のせいかもしれないけど、鮮明に伝わってくる。

歌声と演奏はもちろん、西日本出身らしい、お二人の軽妙な掛け合いもめちゃ楽しかった。

よこさんは、今回、いつも使っている電子ピアノではなくて、匠工芸さんに置いてあるアコースティックピアノをギリギリまで調律して使ったという楽屋話を教えてくれた。これがとっても素敵で。「楽器も家具も、生きている木から生まれたもの。どこの森の木が切られたのか、枝にどんな鳥が止まっていたのか、下で鹿が座っていたのかと想像してしまいます」「木を使っているから、時間とともに変わっていくのもいいですね」とも。

これってすごく本質的なことで、なんとなく木はいいよね~じゃなくて(入り口はそれでもいいけど)、なんで木に惹かれるのか、森から木のことを考えている人からしか出てこない言葉。音楽を通して、人とのつながりや、自然・生き物への共感とリスペクトがビシバシ伝わってくる。「ドレミ」が世界共通なことから、「ドートレトミシー」になったらしいけど、音楽もMCも聞いてみて、「あー、このお二人なら!」と膝を打った。ライブは2時間弱だったけど、あっという間で、いつまでも包まれていたい感じだった。

旭川公園にお越し下さったよこさん(左)、長尾さん(右)  (2020年4月)

このまま、良い思い出に終わらせたくなかったので、 アルバム「星の地図を探して」を家に持ち帰りました。星空コンサートにぴったりなタイトル(笑)。サインもらったけど、写真忘れて悔やまれるー 。(※ドートレさんは、オンラインで「うたごえ喫茶」や「こども歌広場」もされてます)

そして、匠工芸の桑原社長の締めの挨拶が、しびれるくらい良かった。コロナ禍で、恒例のコンサートを開催するかどうか、社内で議論があったという。「いろんなことが中止になっている。やめることは可能だし、やめたことに文句は言われない」と。うんうん、本当に。それしか選択肢ないのかな?と思うくらいに。で、こう続けていらした。

「こういう時だからこそ、心地の良い暮らしってどういうことか、考えようと。音楽や芸術、自然があって心地よい暮らしはできる。コロナウイルスという化け物が、人の暮らしはどういうものかを見直そう、どうしたら仲良く、心地よく生きられるかを教えてくれる気がします。みんなで楽しい生活を過ごせますように」。これは匠工芸のファンになるよねー。ものづくりは「心」から、ということがライブでも伝わったし、作り手の思いから理解して買いたい、置きたいなーとあらためて。こういう素敵な取り組みは、お客さんはもちろん、社員の皆さんにとってもかけがえのない機会な気がする。

当麻のココペリさんで7月に聞いた、アイヌがルーツのトンコリ奏者・OKIさんのライブも衝撃的だった。世界的に有名で、知り合いにもファンがたくさんいると後で聞いたけど、恥ずかしながらまったく存じ上げなかった。

ご近所には、宝物があるふれているんだな。じっとしているのは時間がもったいない。

プライベートな森だからこそ。スノーモービルで走り放題!

木こりの清水省吾さん(里山部)の森を旭川公園では「裏山」と呼んでいるけれど、冬はやっぱりスノーモービルが一番楽しいかな~、ということで、お客さんと一緒に風を感じてまいりました!

適度に高低差があって、くねくねの道もあるので(清水さんが自分でつけた)ので、スノーモービルやスノーシューの散策にめっちゃいい。清水さんから、木ごとに違う生存戦略とか、それぞれの役割、森全体の生態系とか、いろんな話を聞きながら、激しく、時にゆっくり楽しむ贅沢といったら、、、

速度はそんなに出ていなくても、ゴーカートと一緒で体感速度はなかなかのもの。バイクくらいに感じる。思わず「ウオー」「キャー」と声が上がる。乗る前までは寒い寒いと言ってても、その寒さが楽しさに変わるっていうのは快感ですらある。道交法も関係なし!

ちなみにお邪魔したのは2月2日。記録的に少なかった雪は、3日以降にちょっとずつ増えていって、どんどんいい状況になってます!積もれば積もるほど気持ちいい!

モービルの後は、お決まりの薪割り体験。ちょっと時間でもみるみるお客さんは上手になって、記念に破片を贈られてました。人力・環境フレンドリーを身上とする清水さんの薪、エネルギーを自然からいただくありがたさが身に染みる~

それにしても、子どもたちはいつ清水さんの森に行ってもいきいき。次男はカシワの葉っぱで「葉っぱ屋さん」。1枚100円で、2枚買うと300円のお釣りがくるという素敵な経営をやってました

ウェルネスな気分になれる当麻の森!

「自分の心身と時間をデザインすることを楽しむ」をテーマにした新ウェブメディア「Design me」(デザインミー)で、旭川公園を紹介してもらえることになり、第一弾の動画が公開されましたー

当麻町の森であった森遊びや木工の体験会のようすをスマホで撮影して、耐えられるクオリティに編集してもらいました。プロの動画力ってすごい。。。第一弾が当麻っていうのはいいなぁ〜。当事者だからか、なぜかウルウルする感じになりました。

森に入って綱引きみたいに白樺を引っ張ったり、搬出した白樺で木工をやったり、火を起こしたり、まるごとなんでもできるんだなー。そしてそれを支えるプレーヤーがそろってる。やっぱすごい当麻。当麻にいちばん近いゲストハウスとしてもっと繋がっていきたいわ!

ついに目覚めた「白樺プロジェクト」 (動画つき)

旭川で6月にあったデザインウィーク(ADW)で、去年からお邪魔していた「白樺プロジェクト」がお披露目になった。一般に公開される初めてのタイミングで、東川町の「木と暮らしの工房」の鳥羽山さん、美瑛の樹凛工房の杉達さん、デザイナーの田中さんたちがもの凄いエネルギー量で間に合わせた。そのブースがこちら

会場になった旭川デザインセンターの、二階に通じる階段を上がって正面という好立地も手伝っただろうけど、その圧倒的な存在感に客波は絶えず。切り株やチェーンソーがどーんと中央にあって、だれもが「森とのつながり」を直感できる空間だわ。

思わず「かわいーー」と唸るスツールやベンチ、「白樺がこんなきれいだなんて」と見惚れるテーブルはもちろん、樹液の化粧品や飲み物、白樺で染めたフェルト作品などなど、いろんなタッチポイントがあるのもすごい。

最終日には最強のキコリがブースに立って、お客さんにダイレクトに説明していた。いい意味での異様な光景で素晴らしき哉。

ADWの期間終了後も、さっそく7月1日には幌加内町にある北大雨龍研究林で視察・採取したし、9日には旭川大学で今後の方針を話し合った。大きなイベントがあった後こそ、しっかりじっくり持続させることを考えることが大事!

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そして旭川公園としての白樺プロジェクトも、地味に進行中。清水さんに切りだしてもらった里山部産の白樺は乾燥・製材が終わり、岡山県西粟倉の「ようび」へ送られた。完成が待ち遠しすぎる!!!

なんでもできる当麻町 (動画つき)

「うちのまちには何にもない」と嘆く自治体にだって、絶対あるはずの森。余計な垢(あか)のついた大人が「素」に戻れる森。それを、人の力で人の集まる場所に変えているのが当麻町というところ。

トマムで有名な占冠村、層雲峡が知られる上川町、そばの産地・幌加内町などいろんなエリアの地域おこし協力隊が集まった「地域づくり研修」が当麻であって、記録係としてお邪魔してきた!

森の楽しみ方といえば昔は森林浴だったイメージ。木育といえば、既に製材した木を加工して楽しむイメージがある。

でもせっかくなら、森に精通した個性豊かな人に教わりながら歩きたいし、クラフトをつくるなら、森で木を切るところから始めたい。そうすれば、全部がつながって丸ごと楽しい。いいプレイヤーがいれば、これができちゃう。どこだって。

当麻のまちづくり関係では木育マイスターが3人いまして。原さんと協力隊の長多さん、振興公社の石黒さん。全員がこの研修会の主催者側で、松本も普段から公私ともにすっごく遊んでもらってます。

町による植樹事業の失敗とその原因、かつて里山として活用されていた山の歴史、樹種ごとに違う個性、一斉に伐採するのではなく価値を増大させるための森の管理法・・・。尖った木こり・清水省吾さんや木育マイスターが歩きながら熱弁し、頂上を目指す。展望台からは「世界で二番目に美しく見える」と言われる大雪山を望む。達成感!

下山の途中で、あまり太くない白樺をみんなで囲み、縄を投げて幹にまき、ナイフで切り込みをいれて、伐倒準備。木工体験のために使う材を伐りだすのです。

「せーの、せーの」でみんなで息を合わせて、運動会の綱引きみたいに縄を引っ張る。倒れた瞬間は、そりゃもう、歓声が上がるわけで。運び出し、みんなで収穫を祝い。知識と技術があれば、まさにどこにでもできる楽しい伐倒体験。

翌日は、クーピーを挿入した巨大な色鉛筆をつくったり、「小さな家」で並べて自分たちの「まち」をつくったりとグループに分かれて白樺を細工。白樺の樹皮を焚き付けに、メタルマッチで火を起こしたり、テントを張ってみたりと、サバイバルっぽいことも清水さん監修の下、体験した。まさに、ブッシュクラフト。

身近な資源で、なんでもできる。プレイヤーがいれば、どこでもできる。当麻町はおもしろくて能力がハンパないプレイヤーが集まりすぎてるだけの話。参加者の皆さんは「うちのまちでもできそう」と手応えと可能性をお土産にされたのでした。

「コミュニティ」がついた木工キャンプ

ずーっとずーっと前から気になっていた旭川木工コミュニティキャンプ(AMCC)に、初めて参加してきた。(初だけど実行委員として…)今回で11年目だけど、わけあって「0回目」という位置づけ。

6月22日からの一泊。旭川駅やデザインセンターで集合してバスに乗り、当麻町の地域おこし協力隊の原弘治さんの森「IKAUSI CLASS」へ。

キハダって本当に肌が黄色い。歓声があがったわ
雨でも何度も空を見上げて

丸太の上へ順々にあがって自己紹介。雨の中みんなでゆっくり歩いて、原さんが木それぞれの個性や生き残り戦略、森の成り立ちと使い方をガイドしてくれる。

お昼は当麻の奥のほうにあるRICOのカレー。辛い中にもココナツの甘味がいいバランスなんだよなー。

特筆すべきは、このお昼ご飯の後。薪割り、木の色鉛筆づくり(講師:協力隊の長多さん)、チェーンソー体験(森ねっとの中村さん)、火おこし(とうま振興公社の石黒さん)、足踏みロクロ(協力隊の荒木さん)。一級のプロたちがそろい踏み。この層の厚さが当麻であり、旭川! 参加者の皆さんはもう没頭につぐ没頭で、笑い声がいろんな所から聞こえてきた。

お宿は東川町のキトウシ森林公園。「ミーティング」としてグループワークがあって、森を使ってどんな新ビジネスをつくるのか案を出し合う。「ツリーハウスホテル」「森の図書館」とか、10分ちょいで斬新で実現できそうなアイデアが続々、ゾクゾク。すごい。

これまでAMCCは「10年やろう」ということで続けてきた。でも一区切りを迎えたことで、立ち止まって次の10年を考えよう、という趣旨で「0回目」になった。だから「AMCC」ではなく「AMCC2」になっている! ミーティングでは、この辺も話し合った。個人としては、「木工」という切り口で、ほかの産業や地域ともっと絡んでいこうというアイデアにグッときた。

アイスプレジェクトの小助川泰介さんのリーダーシップや場の取り回し方、バランス感覚、すげー。これが実行委員長かー

夜の懇親会は、わが地元・永山の前坂精肉店のジンギスカンで実に誇らしい。この懇親会とキャビンでの2次会はAMCCの中ですごく大切にされている。それは、ホストもゲストもない「キャンプ」であり、交流によって「コミュニティ」をつくるものだから。家具とクラフト、メーカー同士、道内・道外、職人とデザイナー…。あらゆる垣根を超えて、産地だからできる体験をして、想いを紡ぐ場所。

確かにこれは、「コミュニティ」をつくる場だ。だから響く。ゲストハウスづくりにも通じるなぁー

絵を描くように、植物たちをデザインする。ナチュラルな上野ファームについて



4月下旬、いよいよ旭川が誇る上野ファームがオープンした。全国のガーデナーの憧れの地で、このゴールデンウイークもさっそく賑わっている。連休中は2回、ヘッドガーデナーの上野砂由紀さんが案内するガーデンウオークもあって、すごい人気だった。

この時期に咲いている花は、まだまだ少ない。特に今年は雪解けが遅かったことも影響してるんだとか。最盛期ではないからそりゃそうなんだけど、けっして背伸びせず、それぞれの季節ならではの見せ方をしている表れでもある。

5月4日のガーデンウオークには50人超が参加。上野さんは冒頭「この時期のガーデンを知ると、もっと咲いた時の感動が大きくなります。100倍楽しめますよ」と切り出した。

ガーデン内は植物の名前が書かれたラベルがない。来園者からは表示を求める声もあるけれど、「自然な雰囲気で楽しめるようにしたいので」とあえて対応していないんだとか。だからこそ、上野さんから直に聞ける機会はまたとないチャンス。いつもより100倍耳の穴を大きくして、ゆっくり歩いた。


左右対称に植えている「ミラーボーダー」のエリアでは、チューリップが開花を待っていた。ここの球根類は植えっぱなしで、掘り上げることはしない。花が終わったら周りのほかの植物が伸びて、自然とバトンタッチするようにしているんだとか。

前後左右に植えることで開花期を調整し、6月~9月に「なんかしらが咲いている」状態をつくりだしている。「調整して、結果が出るのが一年後。それを繰り返していきます。気の長い作業ですが、うまくいくと嬉しいですね」と上野さん。

気軽にできるガーデニングのコツも教えてくれた。同じチューリップでも早咲き、中間咲き、晩成咲きの3種類を組み合わせることで、色が変わって長く楽しめるガーデンがつくれるという。

来園者が小人(こびと)になった気分で楽しむ「ノームの庭」でも、季節ごとに見せ場を変えている。チューリップが終わる頃には、アリウムが存在感を増すように演出。通路に近いところには常緑の植物を置き、花が終わっても楽しめるよう計算している。



「毎年同じ庭はありません。雨や気温で高さ(丈)も変わる。デザインは生きているので、日々変わるのがガーデニングの一番の面白さですね。絵を描くようなガーデニングです」

1時間のガーデンウオークも終盤。かつて屯田兵が訓練をした「射的山」のふもとでは、上野さんはクリスマスローズとルピナスを紹介した。「本州なら、クリスマスローズは日の当たるところはNG。でもここならどんどん大きくなります。植物は暑くなるとエネルギーをつかうので、それほど大きくならないんですが、北国では本州の2倍くらいになるのもあります。ここの植物を関東に持っていっても、3分の1くらいは枯れるはず。北海道だからこそのガーデンがつくれるということを知っていただきたいです」とまとめた。「北海道ガーデン」という言葉が、これまでで一番しっくりきた。

季節に逆らわず、花の組み合わせをイメージして長く楽しむって新鮮。上野ファームでやっていることを、普段の暮らしにも取り入れることができそうだし。草花の織り成す景色は春から夏、秋にかけての季節の変化だけでなく、1週間単位でめまぐるしく変わっていくというのも、生き物らしくて楽しい。農家の上野家が、お客さんをもてなすために始めたプライベートガーデンだからこその、自然体の魅力も大きいんだろうなーと思う。

暇さえあれば、季節ごとのグラデーションを見にいこう。準備するのはカメラと年間パスポートだけでいい。

森林公園ステイから科学館、クラフトショップ

ビジネスコンテストを見学したあと、急いで帰宅してみんなで東川町にあるキトウシ森林公園に向かう。キトウシ山のふもとに広がる、ケビンやキャンプ場、高原ホテルやスキー場が集まっているところ。ここで、突哨山の清水省吾さんや当麻町の地域おこし協力隊の原弘治さんたちが関わっている、「YAMABITO’S」が感謝祭をひらくということで。

このヤマビトーズは、木こりさんや山主、山好き、家具職人さんとかいろんな面白い人が集まっていて、今夜は山じゃなくてケビンに集まって鍋パーティー。初参加のわれわれ家族も温かく迎えていただき、すごく気持ちいい距離感で一緒にテーブルを囲む。お酒も進む。

子どもたちも興奮して、長男と次女は12時くらいまで寝付けず。次男は8時すぎにダウンしたけど、自分は不覚にも寝かしつけで一緒に落ちてしまい、激しく後悔。。。

朝は昨夜まったく見えなかった周囲の景色が見えて気持ち良い目覚め。雪はないけどクロスカントリーの練習をする人たちがたくさんいた。11月とは思えないほどあったかい空気のなか、颯爽と駆け抜けて気持ちよさそう。われわれも、パンとか残りの鍋を囲んで気持ちの良いご飯。みんなで手分けして後片付けして、11時にチェックアウト。

その後は、旭川駅の近くにある旭川市科学館「サイパル」へ。サケの特別展示がしてあると聞いていったはいいけど、待合室みたいな狭いところで資料置いてあるだけでがっくり。でも常設コーナーがすっごく充実していて、大人も一緒に楽しめる。巨大なシャボン玉に体が包まれるやつとか、プリ宇宙体験ができるやつとか、驚くほどのクオリティ。旭山動物園の年間フリーパスで何十円か安くなったし、また来たいなここー。

体を動かした後は、旭川家具の道産材を積極的に使うプロジェクトに賛同してコラボ商品のバウムクーヘンを売っている「壺屋」の本店へ。敷地内にはガーデンがあって、気持ちのいいイートインショップや、ブックラウンジも素敵な雰囲気。浜松でいえば、うなぎパイファクトリーで有名な春華堂がやっている「ニコエ」(浜北区)の小ちゃいバージョンっていう感じかしら。

お昼は、超有名な「福吉カフェ」へ。もう、間違いない感じの空間づくりに脱帽。にぎわっているのも納得!

夕方は、「北の嵐山」と呼ばれている観光スポットに。京都の嵐山みたいな風情あるエリア、ということでこの名前がついてる。住宅街に焼き物の窯とかギャラリー、カフェが並んでいる。お目当ては、「ブラウンボックス」という木工クラフトのセレクトショップ。もともとは自分の住んでいる永山地区で全国への卸業の会社をされていて、この嵐山に移転してショップを開かれたらしい。

間違いない感じのセンスいいクラフトがこれでもかと売られてて、ゲストハウスの準備でかなりお世話になりそうな予感。子どもが3人とも寝てたので妻とゆっくり見学。この日は丹野製作所の名刺ケースを入手して、満足満足。

 

ビジネスコンテストを客観的に見てみると

旭川信用金庫が毎年開いている「旭川しんきん創業アワード」の最終プレゼンと表彰式が開かれるので「見に来ませんか?」とお誘いをいただき、見てきた。

いつもお世話になっている、近くの里山「突哨山」で木こりをやっている清水省吾さんが出ているというのもあって、楽しみにしていて。

結果、清水さんは受賞ならなかったけど、たぶん一番若くて、エネルギッシュで熱量があって、いつもながら楽しませてもらった。審査員からも「これから大切になってくる事業というコメントがあった。「いかに収益を上げるか」「成長する」という点から考えれば、ビジネスコンテストに求められる要素とはちょっと違のかもしれない。

最優秀賞の方は、退院後のリハビリ環境を高い質で提供しようというもの。二位の方は、離農や後継者不足が深刻な問題になっているカボチャ収穫について、機械による自動化と集荷サービスを展開しているというもの。どちらも、確実に今後は需要の拡大が見こめるだろうし、目のツケどころが面白い。特にカボチャの現状は知らないことばっかりだったので、参考になった。

ひるがえって自分はというと、「なんとなく面白いこと」はやろうとしていて、旭川でも応援してくださる方が増えている感じはするけど、「事業がうまくいく確度」「堅い需要がどれだけあるのか」という点はまだまだ弱い。という事をあらためて思い知ることになった。

とはいっても、新しいことはなんでもそういうものだし、清水さんたちのやろうとしていることは、これから地球と人間にとって欠かせないし、「小さくて持続できる経済」を回すモデルにもなるはず。だから手を取り合って、うまくいくモデルを確立していかなきゃ。という使命感を勝手に感じて会場を後にしたのであります。

ちなみに会場になったリサーチパークは、文字通り公的な研究機関が集積していて広く企業支援もしていて、面白い製品や会社を紹介してた。旭川に限らないと思うけど、あんまり派手じゃないけど目を引く事業者っていろいろあるなー。商工会とともに、経営相談にも乗ってもらおうかな。