「こだま」のススメ

東京出張からの帰り、八重洲地下街の北海道アンテナショップ「北海道フーディスト」に寄った。有楽町の交通会館にあるアンテナショップより、買い物を楽しむ場という雰囲気は弱いけど、新幹線に乗る前に駆け込むに便利で、できるだけ足を運ぶ。

ここに来れば、道内のどんな地域でなにを押し出しているのか、地味だけどおもしろいものがないか、何が人気なのか、いろんな発見がある。この日は鮭とばスライスと、ハスカップのケーキ、うまい棒みたいな「なまら棒」、焼き下足を買った。いつも通り、できるだけ札幌にはないようなマイナーなものを選んだ。

今日はこだま号にお世話になる。車内では、自分の後ろの席にカップ酒なんて飲まないようなすごく清楚でナチュラルメイクの女性がいて、鮭とばも焼きゲソも、食べるかどうか悩みまくった。新幹線車内での551は許せるかどうか、激しい議論になったことがあったけど、乾物はどこまで嫌がられないのかと悶々としていた。

そうこうしているうちにこだま号は走り出し、となりのスーツ姿の男性は、崎陽軒のシュウマイをむさぼり始めた。ほのかな香りがただよう。明らかに、同調を誘う香りで、カラシの袋が「みんなで食べれば怖くない」とメッセージをこちらに伝えている。

たまらず、右手でプレミアムモルツの缶を開け、左手で鮭とばスライスを手に取った。イカよりもまだ臭いがましかな、と合理的に判断。鮭とばは、一口食べたらチャックを閉めよう徹底して、背中を丸めるようにして食べた。止まらない。ペースアップする。品川駅に着く頃には、ビールも鮭とばもお腹の中に消えた。

仕事ができるくらいに程よく気持ちよくなると、まわりをキョロキョロしてしまう癖がある。ここが大事なのだけれど、心なしか優しい気分になれることが多い。

この日は右斜め前のほうに、子ども2人を連れたお母さんが乗っていた。下の子は2歳くらいの女の子。駄々をこねられてお母さんが通路に立って抱っこしはじめた。女の子は荷物棚にあったカーキ色のボストンバッグを見つけて、「パッパー」といきなり笑顔で指差した。すると、すかさずお兄ちゃんが「おっきいものはなんでもパパって言わないの!」とたしなめる。けっこうな怒気を込めて。文字面だけだけみたらムチャな八つ当たりのようだけど、完全にうちと一緒で、吹き出しそうになった。

わが家の4歳の陽己(はるき)は、妹だからよけいになのか、2歳の七海(ななみ)に向かって「ごはんちゅうでしょ」「歩きながら食べないの!」、と口をギュっと結んで叱りつける。時にすごい剣幕で、指導したがる。数分後に、自分の発言がブーメランになって返ってくる、という点においてはまったく学習能力がない。

「どこも大変だなあ」と気楽にほっこりしていたけど、今まさに大変な思いをしている件のお母さんを遠巻きに見ていて、申し訳ない気持ちになってきた。自分だけビールとつまみで気持ちよくなってて、ごめんなさい。

自分もあるなあ、汗だくで赤ちゃんを抱っこしてる時に、気持ち良さそうにしている夕方のおじさんを恨めしくなったこと。

くだんの親子3人連れは、熱海駅で下りた。下の女の子はベビーカーに乗っている。3人は赤ら顔のスーツ姿のおじさんたちに次々に抜かされ、徐々にスピードを上げた「こだま」にも置いてかれてしまった。心の中で「がんばって!」と応援した。

「こだま」は、いろんな層のお客さんが混じり合う。乗る区間や装いもさまざま。途中の停車駅が多いぶん、たくさんの人の出入りに目を凝らす楽しみがある。「のぞみ」がつまらないと感じるのは、始まりと終わりしか目に入りにくいからでもある。

2 Replies to “「こだま」のススメ”

  1. 最近よく見られる観光列車についても同じようなことを思います。
    もちろん純粋に鉄道が好きな鉄オタですが、鉄道は車内の人間ドラマに触れられるのがよいですよね。
    がらがらのローカル線に、高校の最寄り駅からどばっと学生が乗ってきて部活の話をして盛り上がったり、新幹線との接続駅でディズニーランドの土産袋をさげている家族連れを見たり。。。
    そんな人の生活を感じられるのがイイネですね

    1. 観光列車も、いろんな形で地元の人と接点をもつ場所があればいいよね。乗客だけで完結するなんてナンセンス。
      トワイライトクスプレス瑞風だって沿線の保育園?かなんかリノベーションしてレストラン作ったりしてるけど、列車や鉄道はメディア=媒体にすぎないんで。大好きな「おれんじ食堂」なんて、各停車駅で、いろんな仕掛けをつくってた。特産品=モノだけじゃなくて、生活を見せていかないと旅行者も満足しないと思う。これからは

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