「ヤミ民泊」の一人歩き

いっとき時代の寵児として脚光を浴びていた民泊が、逆風にさらされている。違法な「ヤミ民泊」なる言葉が、いろんなところで使われはじめた。

6月15日に「民泊新法」が施行されて、ようやく民泊のルールづくりができたと思ったら、「厳しすぎて営業できない」「既存のホテル・旅館を守りたいだけでしょ」とか批判とか不満が噴出した。

観光庁と自治体はさっそく調査。6月15日時点で仲介会社が予約サイトに登録していた2万3000件のうち、中間段階で1000件くらいがヤミ民泊だった。最終的には数千件くらいまで膨らむ感触だという。

なんかどんどん、民泊が負のイメージを帯びているような・・・。もともとグレーな存在だったけど、エアビーが広めたシェアリングサービスは時代の要請だし、需要があるから人気を集めたわけで。訪日客からしたら、「日本人のごく普通の暮らしを見てみたい」「安く滞在型の旅をしたい」って思うのは当然で、休眠中の物件をもつオーナーさんは、活用したいはず。騒音とかトラブル、治安上の問題、悪質な業者の排除とかクリアしないといけない問題はあるけど、なんで需要があったのかを見誤っちゃ本末転倒で。

民泊には2種類あって、一つはゲストハウスとかと同じように、厚労省が所管する旅館業法上の「簡易宿所」として許可を取るもの。営業できるエリアとか設備には縛りがある。自分の「旭川公園」(仮称)もこれに沿って準備中。

もう一つは、新法に基づいて内閣府の特区制度を使って届け出るパターン。簡易宿所のような制限は少ないけど、年間の営業日数が180日以下っていう条件がある。これで食っていこうと思ったら、かなりきついはず。地域によっては禁止しているところもある。今住んでいるマンションもダメ。

7月28日付の毎日新聞で、「民泊は時代に合うか」のテーマで、日本民泊協会代表理事の大植敏生(おおうえ・としお)さんと、立教大特任准教授の藥師丸正次郎(やくしまる・じろう)さんの紙上対談があった。

藥師丸さんは、「現時点で届け出数が伸び悩んでいるのは新法の制定により、ホスト側が経済的利益だけでなく、危機管理意識を高めた結果とも評価でき、法の意図に沿う」と一定の評価をしている。見出しは「安全性の確保に課題」。

大植さんは「インバウンド(訪日客)の中には家族連れで一か所に滞在しながら素顔の日本文化を楽しみたい人たちが多い。しかし日本のホテルがこれらのニーズを無視し、ごく一部のスイートルームを除いて3人以上が泊まれる部屋を提供してこなかった」「部屋を貸す事業者と気さくに話をする機会があるので、旅の最大の楽しみである『現地との触れ合い』が楽しめる」「宿泊施設は将来的に、ホテルのような事業者不滞在型よりも、地元との触れ合いが濃い民宿のような事業者滞在型が中心になっていくだろう。価格競争ではなく、サービス競争の時代に移っていく」と訴えている。ほんとそう。

大植さんの言葉は現場感覚があるし、「民宿のような〜」っていう部分がしっくりくる。「なんかあったらどうするんだ!」と過剰になったり、既存業界への影響を考えすぎるのは日本っぽい気もするけど。(投資して厳しい規制をクリアしてきたホテル・旅館側の気持ちは分かるけど)

ソトコトの2017年6月号の特集によれば、いまの旅に求められるのは、「人との出会い」や「関わり合い」。それがあれば、楽しさが倍増して、思い出が立体化して「また来て、会いたくなる」。ゲストハウスは「きっかけやひっかかりを芽生えさせてくれる場所」と役割を定義してる。人と地域に会いにいく旅は、いっときのブームに終わらないはず。

 

 

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