最後の東京出張(すごいチェアを見つけた編)

ドトールできんきんに体を冷やした後は、夜の待ち合わせまで時間があったので、表参道・青山に向かうことにした。

ぶらぶらしたり服を買いたいわけではなく、旭川が世界に誇る家具メーカー「カンディハウス」の東京ショップに行きたかったのです。

ひっさしぶりに表参道交差点に出て、コムデギャルソンの方面に歩く。それっぽい感じのオネエサン、オニイサン、メルセデスやアウディ、アルファードなんかが道を支配している。完全に旭川とは空気が違っているー。浜松とも。

奇異な建物が目を引くプラダのある交差点を、表参道ヒルズから見て右手に曲がり、ぐんぐん行くと、わがゲストハウスの総事業費のたぶん3倍は行くであろう超高級(そう)なマンションがあり、その向かいに東京ショップはあった。

東京ショップ外観

佇まいも、明らかに旭川ショップとは違う! そして確実に入りにくい(笑)脂汗がでてきていったん通り過ぎるも、「これを避けては成功はない」と自分に言い聞かせて、シャツがズボンの中に収まっているか確認して、深呼吸して、この異世界へ足を踏み入れることにしたのです。

エントランス近くで最初に目にしたテーブルに、どこかで見た黄色いシールが。そう、道産材をもっと使ってこーよ!っていう「ここの木の家具プロジェクト」です。うれしい。これを東京で見られるなんて。

ただ目を奪われたのはこのテーブルではなくて、そのそばにあった、木工品。

これでどのお酒を呑もうかしら・・・

静岡県出身で北海道に移住し、森林が9割を占める下川町で創作されている「クラフト蒼」の臼田健二さんの作品。ナラやサクラとかを使って、ショップの人によると、生木をくり抜いて作っている。大きいものはサラダボウルになるし、小さいものはぐい呑みにしてもいいんだと。洗った後にちゃんと拭くなど、丁寧なケアが欠かせないのも、愛着が増すようでうれしくなる。迷わず購入。

ショップ内をグルグル見渡して、本気で欲しいものにもう一つ、出会った。下の写真のイージーチェア。

なんとこれ、座面と背面に馬の革を張っているのです! 知る人ぞ知る、日本で唯一の馬具メーカー「ソメスサドル」(砂川市)とのコラボレーションってこと。憧れのソメス! 新千歳空港にもショップを構えてるので目にする機会は少なくないけど、いろんなストーリーがあって、一度本社のファクトリー・ショールームに行きたいとずっと思ってる。

このチェアは38年前に商品化されたものを復刻させたとか。当時よりより丈夫な革を使ってるのだそう。勧められたので、厳かに腰を落としてみた。張りがあって厚くて固くて、でも座るほどに体になじむ。多分これは、無二の座り心地。ストイックではないけどシャキッとくつろげる、っていう新しい感じ。真剣に欲しいけど、34万円ときては数年単位で考えないと(笑)

いろんな所にバックルがある。しなりを受け止めることで、なじんでいくんだろうなー  ※いずれも撮影、掲載許可済み

店を後にする時は、店員さんやフロアに立たない社員さん?、搬入の方々?とかいろんな人にお見送りされて、気分はすっかり青山のオシャレ住民。「ソメスサドルさんは青山にお店ありますので、お時間ありましたら是非」とショップカードを渡された、家具と馬具、パートナーとして互いに高め合ってるんだなと感じて、ほっこりした。素敵。

夜は日本国の中枢を担う人物を日夜追っている、金沢時代にお世話になった超多忙な先輩記者とアメリカンなお店で乾杯。ご縁に感謝!

東京、ありがとう

「里山部」に入りたい。木こりに会う旅

ゲストハウスの予定地から車で10分もしないところに、知る人ぞ知る里山がある。「突哨山(とっしょうざん)」という、かつてアイヌが生活していた場所。遠く望める大雪山のような知名度はないけど、まわりは農地やほどよい人家や刑務所があって、暮らしの一部になっている感じのところ。

観光的には、国内最大のカタクリの群生地として有名。日本酒の「男山」が一部を所有して「男山自然公園」を管理、公開している。(見ごろは4月下旬~5月上旬くらい)

でも自分としては、この山で「自伐型林業」をやっている木こりさんがいるのが、最大のコンテンツ!  1986年生まれの清水省吾さん。「里山部」っていう商号で活動されている個人事業主。突き抜け感があって、めちゃくちゃ面白いし、勉強になるし、地球にとって大切なことをされている。

「自伐型」っていうと聞きなれないけど、近ごろ静かに、じわりと浸透してきた。山林を所有したり借りたりしてる人が自分で森林管理をすること。枝打ち、伐採、販売まで。川上から川下まで見通しているので、まちの消費者も、山主さんの現状も身体で分かっていないといけない。森林組合とか企業のやるような、委託を受けてガバッと皆伐してしまったり、大規模にやったりとは真逆の林業。自分の中でのイメージとしては、として木を見つめ、どう活用することが地球や山にとっていいのかを考え、持続可能な形で次代につないでいこう、というスタイル。小さな林業

里山部のホームページには、こう自己紹介されてる。

「地域資源としての魅力と文化を、地域の子どもたちを含め、観光に訪れた方たちにも広く知っていただき、旭川の魅力の一つとして発信していきたいと思います。」

「異業種のワカモノを中心としたチームYAMABITO’S(やまびとーず)メンバー。里山部の森をシェアしながら、地域の里山コミュニティの形成を目標に、個の表現・生きる喜びを里山を通じて見いだすような活動を行なっています」

観光で来た人にも魅力を感じてもらう、山林シェア里山コミュニティ・・・。もう、よだれが出そうなキーワードが並んでいて、会いたくないわけがない!

三月、「米蔵(マイハウス)」でご飯食べた時に店内にあったチラシで里山部を知って気になってた。ゴールデンウィークに母と義母も連れて旭川に行った時には、直前にムリを言ったにもかかわらず、清水さんは時間をつくってくれて、里山部のフィールドでお会いした。マシンガントーク。山主さんの置かれた現状、旭川家具の業界に対する思い、エネルギー問題、観光、教育・・・。木や森を軸にした話は尽きることがなくて、「あぁ、ここに決めた!」と直感した。ゲストハウス周辺のコンテンツとして、一番打ち出させてもらいたいなと思うほど、ドキドキした!

ちょうどこの時、別の山にいたヒグマさんが高速道路を渡って突哨山に迷い込んできたようなんだけど、そりゃヒグマも居心地いいわな、と思える空間だった。わが子らも、ほんと楽しそうにしていて。

泣くほど楽しい里山

ゲストに、この里山や清水さんに会いに来てほしいし、森で遊んで何かをつくったりしてほしい。そんでもって、ゲストハウスや〝公園〟でも突哨山や清水さんを感じられるような仕掛けをつくりたい。遊具の一部に使うとか、ファニチャー類に材を使わせてらうとか。薪を買わせてもらって、割ってみるとか。思わず山や清水さんを見てみたいと思ってもらえるようなモノを置きたい。誰が、どこでどうやって作ったか分かるって豊かなことだし、小さいからやりやすい。自分の日常に戻ってからも、暮らしのヒントになる。というか、おかしな経済社会ができる前はみんなそうだった。

将来的には、あんなことやこんなことも考えてます。突哨山と清水さん、よろしくお願いします。

 

地球は怒ってる。なので新しい暮らしを考える

たまには観念的なことも。

今回の西日本の「記録的豪雨」の被害のすさまじさと言ったらない。テレビの映像や新聞の写真グラフを見るのがつらくなってくる。

ちょっと前まで、「局所的なゲリラ豪雨に注意」とか叫ばれてたけど、今回みたいな超広域で特別警報が出て、100人以上の命を奪う雨って、いったいなんなんだ。こんなことあっていいのか。ついこの間、北海道で大雨が降って全国ニュースになり、心配していたのが嘘のようなひどさ。

7月8日付の産経新聞の一面コラム、「産経抄」に、膝を打つ指摘があった。

「平成最後の夏を迎え、『異常気象』と呼ばれたものが日常となりつつある。防災も減災も、地球の異変に鈍感では成り立たないと、増え続ける犠牲者の数が教えている」

ほんとその通り。ずっとそう思ってた。地球がおかしくなっている。「このままではまずいだろ」って、地球が怒っているような気がする。

たぶん小学生か中学生のころから、地球温暖化と異常気象については学校で習ってきたし、気候変動が一躍世界的なテーマになって、広く知られるようになった。省エネから始まって、低炭素社会をつくろう、持続可能な開発をめざそうと、いろんなフェーズで叫ばれてきた。

でもどうやら、人間のここ数年、数十年の努力と変化は、地球の怒りと病気を癒やすには至っていない。スピードが追いついてない。科学的な知識はないけど、そう考えないと「異常気象の脱・異常化」は説明つかない気がする。

といってもすぐクルマを手放すことはできないし(一台は別の理由でお別れしたけど)、化石燃料をゼロにして文明を拒絶するなんてできない。ちょっとずつ、できる範囲で暮らしを変えることしかできない。だから同じ北海道でも、周囲に何もない、まちと隔絶された原野に移るのは難しかった。

移住を考えだしたときに、今までとは違う暮らし方ってどんなんやろーと、けっこう考えた。そこで目指したいと思ったのは、「できるだけ自分で作りだす、小さな暮らし」。助け合うのは大事だけど、無理のある既存のグリッド(網)に依存しすぎない。食べ物、建物、水、木、エネルギー。できるだけ近いところで、自分や近い人の手で賄える暮らし。

福島の原発事故を目の当たりにした日本人は、なんとなく、この大切さに気づくチャンスも多かったし、ある程度、実践する人も増えてきた。

「サステナブル」(持続可能)、「地産地消」、突き詰めて大げさに言えば「パーマカルチャー」(豪州発祥で、、永続可能な農業をベースにした文化、デザイン)・・・。言い方はいろいろだろうけど、かっこよくしたいわけじゃない。具体的に、ゲストハウスを予定する旭川・永山地区でやりたいことはいくつかある。

★近くの里山から木を切り出す。薪をエネルギー源にして暖房をとり、無垢材や端材で家具や遊具をつくる。

★太陽光で小規模発電、太陽熱で給湯

★屯田兵の時代から続くやり方でつくられた味噌や醤油、こうじ、漬物の素を日々いただく。

★井戸を掘って、遠望できる大雪山の伏流水の恵みをいただく(飲用できればいいけど・・・)

★ご近所さんと同じように、〝公園〟の敷地内にミニガーデンをつくって、食べたい野菜をちょっとだけつくる。そんで、ご近所さんと「おすそわけ」する。

★近くのJA直売所や、元気な農園さんで、永山の作り手の顔が見えるコメ、野菜をいただく

★大雪山の伏流水を汲める「男山」の日本酒を毎日飲む

「わがままじいじぃ」でおやつを食べる

★自転車でいける生活圏を確立する

★建物は断熱性を突き詰め、余計な冷暖房を避ける

★繁華街に飲みに行く時は鉄道で(旭川←永山駅は14分)

どこまで実現できるか。できれば全部やりたい。お金はどうしてもかかるけど、本当の問題はそこじゃないし。こういう暮らしが実現できたら、それもローカル資源になる。

 

 

三週連続の旭川へ④ 女子のハートに止まるバード

旭川デザインセンターを出ようとしたら、「モクモクフェスタ」なるイベントのチラシを発見。JRの宗谷本線の線路を挟んですぐ裏手にある団地(旭川木工センター)で、各社が協力して木のイベントをやってるんだって。ちょうど今日やってる。行かないわけにはいかないでしょう。

木工体験とか、カンナ体験、木を使ったゲーム、木製品のチャリティオークションとか、イベントの主だったコンテンツはよくあるやつだったけど、収穫が3つ。

スズメ、虫を食べんとすの図。バードカービング初飼育

収穫① 地元の生活道具メーカー「コサイン」の本店ショップで、地域の活動に熱心な社長さんの活動の片りんを知ることができた。

子どもが思わず遊びたくなる玩具とか生活雑貨に混じって、奥の方でやけにオトナ女子を引きつけているコーナーが。「アトリエSUBAKO」として活動している、宮西隆生さんのバードカービング。「キツツキいいなぁ」「あたしはピンクの鳥がいい」「スズメ最高」と手に取っている女子たち。 店員さんに聞いたら、なんでも社長が富良野のクラフトフェアでかわいさに目を奪われて、店で取り扱うようになったんだとか。この小さな鳥と、置いている商品の世界観がマッチしてて、すごい効果的だわ。勢い余ってスズメを飼うことにしました。飛行機のことを考えて、厳重に梱包してもらう。

3人分、お土産でいただきました

コサインのホームページによると、「家具を作るときに出る木の切れ端をどうにか有効利用できないか、という思いから会社が立ちあげられています」だって。面白いなぁ。東京・青山にも素敵なショップがございます。

コサインの本店ショップ

収穫② 当麻町(旭川市の東隣)にある、おしゃれで素敵な農園さんがカンディハウス前でマルシェを出展。この辺はおいしいトマト農家が多くて、この日も「トマトどうですか」と声をかけてもらった。「実はトマトだめで・・・」と言ったけど笑って対応いただけて、楽しくなってハーブやズッキーニ、髙橋農園さんというとこ。マルシェの女性によると、しゃれたデザインの包装は30代の園主が自分でやってるらしい。すごい!

旭川や和寒(わっさむ)、士別とか、近郊には絡みたい農家さんが多すぎる! コサインのバードもそうだけど、イベントは人と人をつなげるなぁ

③駐車場に誘導する砂利の上に、チップが敷かれていた。すごい珍しいものじゃないけど、かわいいし、分かりやすい。素敵な意匠になるなぁ。

久しぶりに見たチョークアート。ゲストハウスでは、落書きし放題の黒板を、どこかの小屋に置きたいな~
最近インスタを始めたので、せっかくだから投稿しようと思ったけど、背が足りなかった。親に似て目が細い

会場を後にして、JAの直売所「あさがお」へ。ここ永山地区は屯田兵が開拓した地域で、その時代から自給的な製法でみそや麹、醤油とかが脈々と作られている。それをやっているのが「屯田の里」というところなんだけど、午後は休みなので、「あさがお」で「屯田みそ」を購入。これはコクがあって優しい味噌で、もはやわが家のマストになってる。久々に買えてうれしい。

そろそろ約束の4時が近づいてきた。旭川ふるさと旅行株式会社の喜久野夕介さんのもとへ!

 

 

三週連続の旭川へ③ デザインセンターで木を考える

お腹が満たされた後は、旭川市の永山地区に移住して長い、旅行関係の方にお電話。アポを取って急きょ、1時間50分後にお時間いただくことに。ありがとうございます。

向かう途中、これまで行きたくても行けなかった旭川「デザインセンター」に寄ってみた。駐車場は札幌や函館のレンタカーが。レンタカー以外も、けっこう広域から来てる。

旭川は日本の五大家具産地で、協同組合のやってるセンターはその発信拠点。旭川市や近郊の30社以上が製品を展示している。バイヤーとか実際に家具を探してる人にとっては、めちゃくちゃありがたい存在なんだと思う。

一通りぐるっと回ってみた。確かに洗練された、スタイリッシュな家具がそろってる。スイッチパネルやバインダー、カードケースとか小物類もちらほら。ただ自分の好みからすると、世界観やデザインに引き込まれたのは数えるほどで、全体としてみたら、ちょっと洒落た家具屋さんとそんな変わらないかな、という感じ。怒られそうだけど、同じようなデザインが多かった。

収穫だったのは、「ここの木の家具 北海道プロジェクト」なるものを知れたこと。旭川から始める、「日本の森を守る家具づくり」といったイメージ。

「明和地所」ホームページより

黄色いポスターには、「できることなら、近くの山から伐り出した木で、家具をつくりたい」「実は、ないと言われていた北海道の木材資源はここ数十年で着実に増えており、私たちが家具づくりに使う広葉樹も、日本有数の保有量になっています。」

旭川家具で、道産広葉樹がどのくらい使われてるか。プロジェクトは4年目で、2014年は26.9%だったのが。17年には36.7%に上がってきてるらしい。すごい!

できることなら、近くの山から伐り出した木で、家具をつくりたい」。

この思いは自分も一緒。旭川・永山地区のゲストハウスや〝公園〟で使う家具や遊具は、できるだけ近くの材を使いたい! 小さいからこそ、できることはあるはず。昔、アイヌの人たちの生活の場だった「突哨山(とっしょうざん)」で木こり(自伐型林業)をしている清水省吾さんの力を借りて。旭川大学では、地元家具業界の抱えるこういった課題とかを研究している先生もいるので、そちらのお知恵も借りて。  (つづく)