「とんこ」が旭山動物園に来た理由

旭川に住んでからは、ヒマさえあれば子どもたちを連れて行こうと心に誓った旭山動物園。年間パスポートを取得したはいいものの、誓いが徹底されていなかったので、11月2日に長男が札幌の北大病院に通っている間、幼稚園帰りの次男と長女を動物園に連れて行くことにした。冬準備を前にして、夏季開園がまもなく終了する時期だったのもあって。

動物園に行く途中、左手に山が見える。大雪山系は冬支度が進んでいた

いつもと同じ正門の無料駐車場に止めると、コンテナ(たぶん12m長)が二本置いてあった。カフェができるらしい。いまもカフェっぽいのは園内外にパッと見えるだけでも3つはあるのに、それほど需要を見込んでいるのかなあ。すごい。

年間パスで入るのは、なんとなくいい気分。移住してからまだ2回目だけど、ご近所の常連さん気分。

とりあえず外から、もぐもぐタイム中のペンギンを見て、なにやら賑わっている猛獣館のヒグマの檻へ。

こちらももぐもぐ中だった。ここで飼われているヒグマは「とんこ」といい、1999年に中頓別町で母親のそばにいた時、人間の安全のために母親は射殺された。飼育員の方は、ハナコが柵によじのぼってリンゴを力強く噛み砕く姿を見せながら、人間とクマがどうやって共存していくか、ハナコのようなクマを出さないようにはどうすればいいか、柔らかく来園者に語りかけていた。人ととんこの母親が出会わなければ、とんこが旭山に来ることもなかったのだから。

旭山動物園のコピーでよく使われるのは、「伝えるのは、命」。もぐもぐタイムだけでじゃなくて、至る所にあるポップで、動物の命や生態系を守ること、生きるとはどういうことか、人間が動物界にとってどんな脅威になっているのかを、噛み砕いて説明している。貴重な環境教育の場だなあとしみじみ思う。冬もやっぱり子どもを連れて行きたい。

帰り際、抱っこされず門の近くでふてくされる長女

キムチホルモンラーメンからの、旭山動物園かじり

10月21日のお昼は、近くにあるそば・ラーメンの「鬼はそと」。地元をよく知る人によると、ここは昔「福は内」というお店だったそうで。おもしろい。

妻はどんぶりからはみ出した巨大なのが乗っている「鬼かき揚げ丼」を頼み、子どもはもりそば、自分は「キムモン」(1000円)をオーダー。文字通り、キムチと、モツ煮込みの入ったラーメンであります。

写真では伝わりづらいけど、すごいボリューム。辛さとモツのバランスが絶妙で、麺とも相性がいい。すくってもすくっても、どんどんモツが溢れてくる。「えっ、まだ?!」とびっくりすること請け合い。こんなにたくさん入ってるの、見たことないわ。妻の鬼かき揚げ丼も三分の一くらい食べたので、お腹はパンパン。この辺、個性的なお店が多いわ。地元の人で店内もずっと混み合ってる。

そのあとは細々と買い物とか要件をすまし、夕方4時前に旭山動物園へ駆け込み。いつでも来れるし、何度も来たいので、1020円の年間パスポートを入手!イラストは市内の清掃車とか旭川大学とか、いろんなところで目にする、あべ弘士さん。マガンがデザインされていて、かわいい。

ちょうどぺんぎん館で「もぐもぐタイム」をやっていたので、ちょうどタイミングよかった。ペンギンのもぐもぐ見るのは初めてかも。

園内はどの館でもそうだけど、飼育・展示してある動物とその暮らしを通してなにを考えてほしいかを徹底的に考えてる。分かりやすいのがほっきょくぐま館で、温暖化とか気候変動でシロクマの餌や生息地がどうなってしまうか。環境の変化は何によって引き起こされているか。爬虫類館なら、マウスのよこにヘビを置いてるし、ヘビのもぐもぐタイムではマウスを餌にする。「残酷」「かわいそう」ではなく、生き物がどうしたってほかの命をいただいて生きているので、それはヘビも人間も同じだということ。子連れできて、そのポップを見るだけでも、生きた教育になるなぁ。

近くにこんな動物園があるって幸せ。時間が空いたら連れてくるようにしたい。

「神戸」は強すぎる

帰省で神戸に来ました。

あっ、「神戸」と書いたけど、実家があるのは兵庫県の西宮市。神戸と大阪のちょうど中間にあるところ。西宮といえば、「甲子園があるところ」と言えば分かってもらえるけど、知らない人ももちろんいる。

なので大学生のころなんか、勉強会(人によってはコンパというらしい)とかで「神戸出身」と名乗ってた。「買い物は神戸でしてた」、とか、「よく神戸でご飯食べてた」とか。アホらしいけど、まぁウソではないし。

効果があったかどうかはともかく、それくらい「神戸」には力がある。武器にしている事業者もいっぱいいる。

なんでこんなに神戸ブランドがあるのかは、いろんな分析が言われるけど、まずはロケーションでしょう。山があって、海がある。しかも横浜と違って、その間の免責が狭いから、一日あれば両方楽しめる。ハイブリッドないいとこどり。 山に登って海を見る、海を目の前に山を望む。高校生のころまでこれは日常だったけど、この豊かさはすごいもんだと思ってた。

山なら、ハーブ園があるし少し足を伸ばせば乳製品で有名な六甲山もある。海ならもう説明不要なくらい、きれいに整えられた神戸港がある。失礼ながら、名古屋港や大阪港とは全然イメージが違う。

今まさにハーバーランドのスターバックス(本意ではないけど)におりまして。たくさん船が行き交い、マルシェみたいなものがあり、ランドマークとしてのポートタワーがあって、みんな記念写真を撮ってる。水辺空間というコンテンツの強さに思いを馳せる。子どもたちを母や妹に預け、アンパンマンミュージアムで遊ばせて楽をしているので、よけいに気持ちがいい!

実際に外国人が多いけど、その歴史がベースになった異国情緒が自然に漂っているのも、まちのブランドを形成するのに大きなポイント。

「神戸」と聞いて、説明不要なくらい多くの人がいだくイメージがあるから、「神戸」と名の付いた商品には競争力がでてくる。

北海道でいえば、「富良野」とか「小樽」、もしくは「十勝」、あるいは「知床」かなと。「札幌」は微妙だけど、まあ当てはまるかな。

じゃあ、旭川はどうだろうかと考えた時に、まだまだイメージが沸かない。旭川はよく知らなくても旭山動物園は知ってる人は多いくらい。(移住先としてはよく知られてる)。富良野や美瑛に行くために、宿が取れなくてある程度便利だから選ばれている要素が強いと思う。

旭山動物園以外に、強力なコンテンツが必要という声は地元でも根強いらしい。でもそれだけで「神戸的なまち」になれるわけじゃない。なる必要もないかもしれないけど。ただ旭川ってどんな所?と聞かれてすぐイメージできるような存在になれば、通過型のまちから脱却できるかも(?)。

まちの玄関が駅だとすると、現状は、木の香りがする素敵な旭川駅を出た瞬間に、イオンが飛び込んでくる。ホテルが立ち並ぶ中心部は、他の都市と代わり映えしない。そして歩く人が多くない。目に見える「旭川らしさ」が駅で完結していて、もったいない。大きい市だから動きにくい点はあるけど、これどうすんだろ。引っ越したら、なんかおもしろいこと考えたい。

人とつながる旭川一泊の旅⑨ 〆の公園研究

旭山動物園の閉園が夕方の5時15分。夏期でもけっこう早いなぁと思いつつ、蛍の光が流れては、もう抗う気力もしぼんでしまうので、ゲートに向かう。

帰りの飛行機は旭川空港から、夜7時35分の便。早めにいけば、前後でしか取れなかった座席を調整できるかもしれないと聞いていたので、1時間半前に着くとしても、まだ時間はある。

ということで、また予定地のある永山地区に戻った。ちょうど十分、エクストレイルを走らせると、北海道庁の出先機関・上川総合振興局や永山小中学校、永山神社のある中心部に着いた。ここに、永山中央公園がある。

スケボーの練習に使うような台や、しゃれた色合いのブランコが見えて、気になっていた。こちらもゲストハウスの敷地内に〝公園〟をつくろうとしているので、ライバルを研究しておかなきゃと。

目を引いたのは、小高い丘に連なる謎の滑り台。断面は土管を上下で切断したようなU字型で、頂上には土管が置かれている。滑り面には緑色のブツブツがあるシートが敷かれている。段ボールかなにかで滑るのかしら?

アスレチック遊具では、京都の真っ赤な鳥居を連想させるデザインの、ロの字の木枠を重ねた渡り通路や、チップが敷かれた地下室チックな空間が印象的だった。なかなかに個性的だわ。

低学年の子どもより、高学年や中学生の姿が多い。だだっ広い巨大な敷地で、キャッチボールの練習をしている選手もいるので、幅広い層の子どもに使われてる。なかなかに強敵だわ。

自分も〝公園〟をつくる以上、こことかぶらない形で遊び道具や仕組みをつくらないと。。。と考えながら、まだまだ遊びたいとごねる次男を引っ張って、空港方面に舞い戻ることにした。

高校3年以来の旭川空港。レンタカーの事務所は隣接していて、歩いて1,2分くらいの感じ。レンタカー会社の事務所が離れたところにある新千歳空港とかと違って、送迎のときのタイムロスを考えなくてもいいし、精神衛生上、やっぱコンパクトなものにはかなわないと痛感。

やっとビールを飲める。土産店で迷わずサッポロクラシックを選び、保安検査場の行列を見ながら一気に飲み干した。シートベルトを締めてすぐ次男は機嫌が悪くなり、離陸して10分とたたないうちに意識を失った。おそらくそれから10分としないうちに、自分も一時的に記憶を失った。

着陸は21時20分。それから5分以上、駐機場までウロチョロ。運良く前から3列目に座っていたので、眠ったままの次男を抱いて猛ダッシュ。500mくらい走り、21時41分の京急電車に間に合った。人は多いし、でかいから汗だくになる。暮らしも空港も、小さいに越したことないわ。

品川駅で10分しか乗り換え時間がないのでまたダッシュ。まったく起きず。最終の名古屋行き「ひかり」は自由席満席で立ち客ゾロゾロ。新横浜の直前で、おにいさんが「次で降りますので」と席を譲ってくれて、疲れが一気に吹き飛ぶ思いだった。最敬礼。この後も次男は寝続け、23時半に自宅に帰っても起きないまま。無理をさせてごめん。そして静岡麦酒の缶ビールを開けると、あのお兄さんが本当に新横で下りたのかか、気になりだした。(おわり)

 

人とつながる旭川一泊の旅⑧ 納得の動物園

こっちを向いてあいさつしてくれる。次男はペンギンの虜になり、帰宅後もぬいぐるみと寝てる

「屯田の里」から15分かからないくらいで、旭山動物園の正門に到着した。懐かしい門だなぁ。これまで何度も旭川に来てるけど、子どもは初めて。自分も大学生以来だから、10年以上ぶりになる。ゲストハウスを旭川でやろうと思い立ってから、旭山動物園のことはあらためて気になってたので、ちょうどよかったー。

ペンギン、アザラシ、シロクマ、ヒグマ、トラ、カバ、キリンと、全部は無理だったけど主要なところを見て回った。

ペンギン館では泳ぐところ、歩くところ、食べるところと、いろんな角度から観察できたし、手書きのポップで豆知識を仕入れることができた。

アザラシ館だと縦長の円筒形の水槽を気持ちよさそうにすり抜ける行動展示が一番人気で、人だかりができていた。外国のお客さんも満面の笑みでスマホを向けていた。

キリンのところでは、キリンを囲むようにスロープが整備されていて、上から下からなめるように楽しめる。この動線がすごいなー。上の方では、柵から1メートルもない場所までキリンの顔が伸びて、草を食べてるのを真近に見られる。

周りのお客さは「近っ!!」って驚いていたけど、この近さが売りなんだろう、と思った。行動展示をやってることで有名だけど、思わず時間をかけて近くで見てしまうから、楽しいし、動物に興味がわいてくる。

別の女性2人組みは「うわ、下まつげ、長っ!!」と声を上げていた。まつ毛の長さは女性は意識するとこなんだろけど、なかなか普通の動物園だと、ここまで分からない。下から見るだけのキリンの可愛らしさと、目の前でみる瞳の愛らしさは、比べ物にならないわね。

雪のないこの時期、旭川じゃないとできない要素がいっぱいある、とは正直思ってなかった。別に旭川じゃなくても見れる動物が多いでしょ、と。やっぱり廃園間近の園が奇跡の復活を遂げたストーリーと、画期的な行動展示が、メディアで国内外に伝わった効果が大きいんだろうと思ってた。

でも園内を一通り見てみて、明らかに他と違うのは、スタッフの皆さんがすごく楽しそうにしてること。「こんにちはー」の挨拶ひとつ、車椅子用の車両を運転している人の手の振り方一つから、楽しませようという意識が伝わってくる。行動展示にしても、旭山の真似をしてやった俄か対策とは違って、ブレがないし徹底してる。多言語表記も充実してる。前に書いた、蒲郡水族館にも見比べに行きたい。

旭山の来園者数はピークアウトして一時期の勢いがないのは当然にしても、今なお、最北の小さな動物園が人気をキープしてるのは、やっぱりすごい。   (つづく)

旭山動物園のなかまたち

Yahoo!ニュースに「ショボい」水族館になぜ行列ができるのか?っていう記事がドーンと載ってた。このところ、どうやって人を集めるのか、的な本や記事にすごく反応しちゃう。https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180608-00000044-zdn_mkt-bus_all

取り上げているのは、愛知県蒲郡市の竹島水族館。愛知に住んでたころはよく聞いたし、行ってみたいと思いながら、そのまま。運営が大変で、最近いろんな工夫がされてるなんて全く知らなかったなー。浜松から近いのに。

読んでびっくり。旭山動物園のブログでも書いた、旭山動物園の工夫や再生物語と、まんま一緒!!

  • 公立施設で来場者激減→一部の人から危機感を共有
  • 専門的な目でしか見られない飼育員さんたちの、改革への反発
  • お客さんを観察し、意見を吸い上げ、楽しませるという視点を獲得。手書きのPOPの活用
  • プロダクトアウト→マーケットインへの転換
  • 飼育員さんたちが自発的に動き出す  

 ライター大宮冬洋さんは記事の最後に、「環境が悪ければ悪いほど、『お客さんが求めることをなりふり構わずにやってみよう』と開き直ることもできる。起死回生の改革案や本当に顧客に喜ばれるアイデアはそこから生まれるのだ」と書いている。まさにそうなんだろうなぁ

佐藤尚之さんの名著「ファンベース」の考えにも通じるし、自分はまだまだターゲット層の絞り込みや、お客さんの求めること、ライフスタイル、ゲストハウスに来て得られることのブラッシュアップができてないなーと反省しきり。