学生も大学もローカル資源

今朝の読売新聞一面(https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180530-00050152-yom-soci)をみてびっくり。私大が公立化することによって志願倍率が上がり、全国的に経営改善ができている傾向があるんだと。

へー。そんなこと想像もしたことなかった。

公立大の運営費は行政経費とみなされるので、規模に応じて国から地方交付税交付金が充当される。だから授業料を抑えることができる、そして・・・というからくり。

ふむふむ確かにそうだよなー

これとは別に国立大でも動きは加速している。

5月29日には小樽商科、帯広畜産、北見工大が、2022年度の法人統合をめざすことで合意した。少子化が進むなか、運営費の削減が目的。名古屋大と岐阜大、浜松医科大学と静岡大など、各地ですでに検討がはじまっている。運営交付金を減らしてきた国が再編を促してるので、今後も増えるんだろうと思う。

という風に大学業界はいま、本当に忙しい。

まぁこれまでと同じ状態ではいられない、という意味ではどこの業界も同じなのかも。

冒頭の読売の記事では北海道内の動きとして、旭川大学が公立化を検討していることと、千歳科学技術大が2019年度に公立化される、とある。

千歳の例は知らなかったけど、ゲストハウスの予定地から歩いて5分かからない場所にある旭川大の件はずっと気になってるし、地元ではけっこう大きなテーマになっている(地元住民になったつもりで言うと)。

地元で経済・社会の担い手になるような若者を増やしたい旭川市、学生を確保したい大学側。この点では思惑は一致してるようで。

私学だからこそ思い切って自由にやれる利点もある気もするけど、大学が公立化を求めてるってことは、なかなか現状は厳しいんだろうなー。でも公立化となれば、税金を投じる大義と丁寧な説明も求められるはずだし。。。と漠然と勝手に思っていたけど、調べてみるとけっこう前から、市民(民間)レベルの動きもあったようで。

旭川は日本の「五大家具産地」に数えられるほど家具づくりが盛ん。業界には地域色を押し出したい、っていう考えがあったようで、ずっと「旭川に公立『ものづくり大学』の開設を目指す市民の会」が活動している。地元の名士の方々も名を連ねていて、けっこう影響力がありそうな気がする。

どうしても縮んでいく新聞業界と同じで、他の会社とお客さんを取り合うようなやり方はもう意味がないし、疲弊して息切れするだけ。ファンは育たない。だから「市民の会」が打ち出した明確な方向性はおもしろいと思った。

北海道新聞によると、5月18日には市と大学、市民の会による3者協議が始まり、「ものづくり系学部案」について意見を交わしている。6月には方針をまとめて、市長は任期の11月までに公立化するかどうかの判断をするらしい。

どうなるか楽しみで、ウオッチしてきたい。

その一方で、いま現にいる学生さん、大学に対して地域は何を求めてるやろ?と興味がわいた。旭川大学は地域連携でいろいろ面白いことをやっていらっしゃるイメージが強いけれど、地域から見たら、どんな風に映っているんだろう。

逆に学生さんは地域や大学に、何を求めているんやろう。旭川大がどんな範囲で学生を集めているのか、学生は何を求めてここを選んだのか、どんなブランドイメージなのか、まだまだ知らないことだらけ。

地域⇆学生・大学、お互いの求めていることはちゃんとマッチできてるのか知りたくなった。地域は学生・大学を活かしきれているのか。公立化となると、お金の問題だけじゃなくて、そんな点も問われる気がするもんで。

これまでの記者生活で、いくつかの大学で、地域との連携を模索している様子を見てきた。愛知淑徳大、愛知県立大学、愛知県立芸大、名古屋学院大、南山大、愛知産業大、金沢大、石川県立大、金沢工業大学、金沢美術工芸大、静岡文化芸術大、静岡大・・・。

いちばん強烈な印象が残っているのは、かつて金沢大の学生で、今は「学生×地域」の挑戦を後押しする「株式会社ガクトラボ」を経営する仁志出憲聖さん。まちなかの古民家を改装して学生たちが活動する拠点「金沢学生のまち市民交流館」のコーディネーターもされてる。学生時代からもう、とんでもない能力と人柄で、あらゆることとつながってるイメージだった。フォローしきれないくらいの活動の幅。仁志出さんたちの活動は間違いなく、金沢市や地域を動かしてきたし、金沢=学生のまち、のブランドをつくってきたと思う。

いま浜松市にいて取材する機会の多い、冒頭の読売記事にもでていた静岡文化芸術大学も、すごいなあと思うことが多々ある。本当によく学生さんや先生たちが地域に出て活動している。今年2月には、国内で初めて「フェアトレード大学」に認定された。このフェアトレードひとつとっても、いろんなレベルで、組織で、草の根的に動いている。学生団体は市と協働して駅前とかでカフェを開いたり。いつもそのバイタリティに圧倒される。

学生さんたちの力はすごい。でもそれだけではなくて、大学側も自分たちの役割を認識して、地域になにが求められるのかを探ってる気がする。

地域の中で自分たちの大学がどうあるべきか、公立大だからこそ深く考えられるんだろうなーと、勝手に思ってる。金沢大はこのエリアを引っ張っていく使命があるし、県立の静岡文芸大も、市との連携もうまくいっているように見える。

その上で、じゃあどんなリソースを使うのかというと、やっぱり学生の力を置いて他にないと思う。

学生はニュートラルな立場なので、利害関係がやっかいなオトナ同士だけでやるよりも、間に入ることでスムーズにいくことも多い。別に失敗したってご飯が食べられなくなるわけじゃないし。

「こんなことをしたい」と学生が熱くなって、きっかけやヒントを授ける先生がいて、それを地域の大人たちがどう活かして、地域の課題を解決しようとするか。戦略的に考えるといろいろできる気がする。というか、したい!  旧市街地でのコミュニティづくり、地元林業と家具産業の深いコラボレーションとか。それで地域が楽しく、豊かになっておカネとヒトが回っていくのなら、税金は無駄にならないはず!

学生も大学も、地域(ローカル)資源なのは間違いないと思う。

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