ドラマ「北の国から」で知られる富良野市・麓郷に、懐かしい木の香りが立ち込める作業場がある。主は、北海道で唯一の桶職人として知る人ぞ知る、高岡一男さん。天皇陛下と同年だそう。「私はもうちょっと頑張ります。無理しないように」と現役を続けている。
北海道新聞の記事によると、父親が東大演習林の演習林にあるイチイ(オンコ)に惹かれて豊浦町から移住した。イチイは富良野市の木でもあり、堅くて狂いが少ない。高岡さんは14歳から職人として桶を作り始めた。演習林が払い下げた樹齢500年の木目の詰まった高級品を使い、乾燥から一か月以上かけて完成させる。国土緑化推進機構の「森の名手・名人」に、道内から初めて選出された。
かつて周辺に桶店はいくつもあったが、プラスチック製品が普及し、立ち行かなくなる同業が相次いだ。それでも本物の逸品を求めるファンに支えられ、注文を受けて品がなくなったら制作している。作業場横の棚には、お櫃や寿司桶、湯桶が布をかぶって来客を待っている。「来てもらえると、本当にありがたいんです」と身を小さくする。
桶以外も作っていて、「知床太鼓」や、名寄市の高さ2mの大太鼓も手がけた。長く大事に使ってもらうために、修理して付き合うことが欠かせない。「どうしても、うちでやってあげないといけないところがあるんです。やめられないんです」と衰えないプロ意識ものぞかせる。
「北の国から」では、高岡さんが作った水桶が使われたという。旭川公園ゲストハウスでは、高岡さんが丹精した2合のお櫃2つと、3合のお櫃1つをご用意して、朝食で提供します。