田植えが終わり、6月に入ってからは、連日ビニルハウスにお邪魔してます。
田植えに通った理由も自分なりにいろいろあるけど、ハウスで野菜にかかわるのも、目的とか学びはたくさんありまして。
お邪魔しているのは、大雪山の麓にある東旭川の「古屋農園」。「人とつながる農業、未来につながる農業」が経営理念。1907年に初代が入植し、背丈に合った、家族でできる範囲で規模(素人からすると大規模に見えるけど)で水稲や野菜をされている。代表の古屋新さんで五代目で、すごい歴史だわ!
そばを流れるのは、大雪山から流れ出るペーパン川。全国ニュースにもなったけど、2018年7月の豪雨で氾濫して復旧工事はまだまだ道半ば。古屋農園も田んぼやハウスが甚大な被害を被り、土質が変わったりして大変な苦労をされていて。
大地の力、自然の恵みを大切にされている古屋さん一家。「農家は作物のサポーター」がポリシー。できるかぎり化学肥料を使わず、有機や生物、作物本来の力を生かしているらしい。除草剤とかの農薬もできるだけ避けて、手間暇かけて。生産と消費を交わらせるこだわりも強くて、コロナの今季は別として例年1,000人規模の農業体験の子どもを受け入れているんだとか。めちゃすごい!
奥さんの美也子さんとは石鹸づくりでお世話になり、ご主人の新さんはトークイベントで一緒に登壇し、新さんのお母さんの良子さんは、ゲストハウスで開いたしめ飾りイベントでお世話になった。というご縁があるので、初めてお手伝いでお邪魔することに。
この時期のメーンはピーマンたち。肉厚でジューシーな「ピクシー」という品種をハウスで育ててます。ハウスでは糸を幹にたぐらせたり、頭上に張った線から吊るしたりする「誘引」という作業や、余計や枝や葉を落として光を届ける「整枝(せいし)」、そして収穫など作業が目白押し。
ほかのお手伝いさんといるときは、ハウスの中でおしゃべりができる。光合成の関係で、天気の悪い日は、人間が話しかけたり、他の人とおしゃべりすると、二酸化炭素が出てピーマンに良いらしいくて、驚愕😲
楽しく、笑って作業するのは人間にも野菜にも良いのねー
そして、毎日の同じように見える作業の中にも常に発見があるから、生き物相手の仕事は素晴らしい!
整枝では、1つのベッド(畝)で一気にすいてしまうと、葉っぱの量が急激に減ってしまい、生育によろしくないのだそう。ちょっとずつ、部位を変えながら切っていくのが大事なんだって。
茂らせすぎても栄養をつくれないしストレスになるばかりだし、減り過ぎても困る。人間社会と同じなんだなー。バランスが大事。
そして収穫のときは、ある一定の重さを基準に選んでいくわけですが、わさわさ茂ってくると奥にある実が見えなくなる。そんな時、株をぐるっと見渡して角度を変えると、発見できることがありまして。
あぁそうか、角度を変えればいいんだと、ピーマンが教えてくれるわけです。
思えば農家さんのところに行くっていうのは、消費者が生産の現場を見ることだから、角度を変えることでもある。口に入れるものが、どこでどう作られているのかを体で知るって、こんな尊いことはないわけで。
しかも、複数の農家さんにお邪魔していると、それぞれの違いを知ることにもつながるし。立体的に農業の現場が分かるし、消費者としての視座も養われるはずー
慣行農法と、有機・減農薬・減化学肥料だってそう。なんとなく、意識高い系の界隈では有機系の話に寄りがちな感じだけど、どっちが良い、悪いなんて本来、誰にも分からない。それぞれの規模や狙い、思いによっていろいろなので、消費者が生産者の顔と思いを知って、それぞれの考えや状況から選べばいい(浜松時代に取材させてもらった野菜ソムリエさんもそんな風におっしゃってたなぁ)。できるだけ化学肥料に頼らない古屋農園の新さんも、「化学肥料は大事だよ」と言っていたし。
生産の現場を知らないまま、消費者が「これが全てだ」「あれはおかしい」と声高に言うのは、違和感しかない。苦労を知らずして慣行農法を敬遠するのは乱暴だし、とんでもなく手間がかかるものを安く買いたい、というのは自然なことじゃない。例えば除草剤を使わない、というと聞こえはいいけど、その分、膨大な草刈りをしないといけないので。
消費と生産の狭間を行き来する。しかも、できるだけ日常の中で。それができるのは旭川らしさだし、農業だけじゃなくて林業や家具産業でもできる。これは豊かさに直結するし、地元とか観光とか、まったく境界なく価値を提供できる。
角度を変えてお互いを知ってリスペクトできれば、質・量ともにロスは減るし、思いが循環する。そんな、顔の見える関係をいろいろな分野やフェーズで作っていきたいし、旭川公園の本懐でもあるよなぁー。農業体験を目的にするというより、農家さんの心とか食べ物への向き合い方とか、そんなことがシェアできるローカル旅ができたらいいな~