すぐそばにある当麻町の踏切

「旭川公園ゲストハウス」の予定地からは、レールが見える。稚内につづくローカル線。ディーゼルの一両の列車が、コトン、コトンと通り過ぎるところ。そして車で10分といかなくとも、見晴らしのよい田んぼが周囲に広がっていて、オシャレで力強い特急「宗谷」「サロベツ」や、冬に毎日運転されるラッセル車を見ることができます。お子さんに大人気。冬にゆっくりと、雪煙を上げる列車を目に焼き付けるのもここならでは。

管理人の松本がお気に入りなのは、国道39号線を当麻町方面に向かい、当麻に入ってすぐにある細い道をたどった先にある、小さな踏切。風を感じて、空気を吸い込んで、列車を待つ時間が楽しい。

||| 高岡一男さん ///北海道で唯一の桶職人。樹齢500年、富良野で育ったイチイの木で70年間手作りする「森の名人」 

ドラマ「北の国から」で知られる富良野市・麓郷に、懐かしい木の香りが立ち込める作業場がある。主は、北海道で唯一の桶職人として知る人ぞ知る、高岡一男さん。天皇陛下と同年だそう。「私はもうちょっと頑張ります。無理しないように」と現役を続けている。

北海道新聞の記事によると、父親が東大演習林の演習林にあるイチイ(オンコ)に惹かれて豊浦町から移住した。イチイは富良野市の木でもあり、堅くて狂いが少ない。高岡さんは14歳から職人として桶を作り始めた。演習林が払い下げた樹齢500年の木目の詰まった高級品を使い、乾燥から一か月以上かけて完成させる。国土緑化推進機構の「森の名手・名人」に、道内から初めて選出された。

かつて周辺に桶店はいくつもあったが、プラスチック製品が普及し、立ち行かなくなる同業が相次いだ。それでも本物の逸品を求めるファンに支えられ、注文を受けて品がなくなったら制作している。作業場横の棚には、お櫃や寿司桶、湯桶が布をかぶって来客を待っている。「来てもらえると、本当にありがたいんです」と身を小さくする。

桶以外も作っていて、「知床太鼓」や、名寄市の高さ2mの大太鼓も手がけた。長く大事に使ってもらうために、修理して付き合うことが欠かせない。「どうしても、うちでやってあげないといけないところがあるんです。やめられないんです」と衰えないプロ意識ものぞかせる。

「北の国から」では、高岡さんが作った水桶が使われたという。旭川公園ゲストハウスでは、高岡さんが丹精した2合のお櫃2つと、3合のお櫃1つをご用意して、朝食で提供します。

||| 横田宏樹さん ///森から始まる『家具づくり』を売ろう」。旭川と静岡を往復して呼びかける、木こり経済学者 

昭和52年、滋賀県彦根市生まれ。静岡大学と名古屋大大学院を卒業し、8年余りのフランス留学をへて旭川大学へ。学生時代から自動車産業を研究してきたが、地元の「旭川家具」に魅せられて研究テーマに選び、どっぷりとはまった。2018年秋から籍は静岡大に移ったが、頻繁に旭川との間を行き来し、学生を指導する。静岡も旭川も日本五大家具産地。「地域産業として持続するには」を考え続けている。

旭川では、世界的に有名な家具メーカーや木材会社、業界団体などを学生と一緒に訪問してつぶさに聞き取り、川上である森側と、川下であるメーカー側に大きな隔たりがあることを痛感。地域材の活用など、地域と家具産業のつながりを強くしていかないと、産地が持続しないと見通した。山主、製材業者、メーカー、販売業者をつなげた「森林業の6次化」「ネットワーク化」がカギになるとみて、地域ならではのストーリーを見せていく「『家具づくり』を売っていくべきだ」と説く。

だからこそ、「木こり経済学者」を名乗る。自ら山に入って材を選び、顔の見える作り手と一緒に家具を仕上げるプロセスを重視。ゼミ生と一緒に「森から始める、出口の見える家具づくり」を実践している。山主・木こりとしては自伐型林業を展開する「里山部」の清水省吾さん、家具職人としてはガージーカームワークス出身で当麻町地域おこし協力隊の原弘治さんが全面的に協力する。

旭川大の学校祭ではシラカバの木を切って店舗にした「木育カフェ」を構えて来場者の人気を集め、図書館ではナラを使ったスツールを制作。旭川家具の祭典「旭川デザインウィーク(ADW)」」でもブースを置いて発信した。横田ゼミは旭大(きょくだい)の名物ゼミに育った。

フランス留学中は常にお腹をすかせていたが、手元に小麦粉はあった。自らうどんを打ち始め、やがてパーティーを自宅で開くまでになった。

今の自宅は、ヨーロッパでも知られる旭川家具のイスや、旭川の若手職人が手がけたテーブルで彩られる。夜は研究や読書に没頭するが、ゼミ生を集めた飲み会ではワイングラスを片手に饒舌になる。マイクに握り替えると、室内は一気にパーティームード。エアロスミスになりきり、流暢な英語で全身で歌う。

||| 清水省吾さん ///持続可能な森づくりへ、ぜんぶ自分で。時には「切らない」も選ぶ、会いに行ける木こり。

昭和61年、苫小牧生まれ。旭川大学でコウモリを研究したのをきっかけに、その棲家である森の魅力に引き込まれ、2014年、ついに山を購入してしまう。「旭川公園ゲストハウス」予定地から車で10分ほどの「突哨(とっしょう)山」の一部4.7haを、「里山部」のフィールドとして管理。まちに出て「顔の見える林業」をアピールするだけではなく、森林をシェアしてもらおうと、まちの人を森に呼び込んでいる。

最近では道内外で講演をすることも多く、プレゼン冒頭の十八番は「フリーで木こりやってます」。仕事道具は軽トラとチェーンソー。重機を一切使わない〝漢気(おとこぎ)〟にこだわり、「北海道一、環境にやさしい木こり」を自任している。時折、道外に修行に出かけ、〝漢気〟を磨くとともに、自分の立ち位置と針路を客観視することを忘れない。2019年3月には奈良県・吉野で山籠もり。巨大なヒノキと闘った。

自ら山を所有し、下草刈りや枝打ち、間伐といった管理をして、顔の見えるお客に家具材や薪を販売する。こうした「自伐型林業」を広げようとNPOも立ち上げた。木の命と向き合い、森全体のことを考えて切るべきではないと判断したなら、「切らない」という選択肢も手元に残す。森の価値を最大化しないと、産業としても自然としても持続可能ではなくなると信じているからだ。

全国的に山主が森林組合や企業に管理を任せていて、「所有」と「管理」が分断されている現状がある。補助金を得るために大規模に重機を使って皆伐する現行林業に対し、強烈に異を唱える。「森を見ず、生態系のバランスを崩し、森の価値を次代へ引き継がない」。反発をいとわず、自分の信じたスタイルを貫く姿に共感が広がっている。

と書いてくると、硬派なだけの木こりに聞こえるが、さにあらず。北海道では珍しい里山を身近に感じてもらおうと、火おこしやハンモック体験、森林ウオーク、サバイバル体験、冬はスノーモービル、スノーシュー、スノーキャンプなど、お客の「これやりたい」を広く叶える。旭川のまちなかから近い突哨山だからこそ、できることがある。

スプーンを作る「削り馬」に乗る清水さん

2019年の「旭川冬まつり」では雪像が居並ぶ白一色の会場に、イメージカラーのオレンジの作業着をまとい、「焚き火ソムリエ」として活躍。シラカバの木で火を起こし、寒さで震える来場者の心をつかんだ。

農業も漁業も、消費者は産地や生産者に気を配るようになってきたのに、林業はまだまだ。「清水さんのトマト」はあっても、「清水さんのシラカバ」はなかなかない。でも、ないならやるのが清水さん。そしておこがましくも、「小規模だからこそ」の思いは筆者も一緒。「清水さんのシラカバ」で、旭川公園ゲストハウスのオリジナルスツールを作るプロジェクトがもっか進行中であります。

すてきなセレクトショップとクラフト工房が近くにある幸せ

ゲストハウス「旭川公園」の予定地はどこにあるの? と聞かれたら、けっこう答えるのが難しい。例えば旭川駅のすぐそばとか、札幌の大通公園のそばとか、だれでも分かるランドマークが近くにあるわけじゃない。永山という、旭川の一番東側のエリアで、層雲峡の方面と言うほうがまだ分かりやすい気がする。

それくらい地味だし、のどかな雰囲気の住宅街でもある。でも、最近おもしろい人が居付き始めた当麻町や移住や写真で有名な東川町、駅カフェやイチゴが知られる比布町とかのハブに当たるところなんです。そして旭川市内でいっても、旭山動物園まで車で15分くらい。実は。それと、東旭川町の桜岡っていうエリアが近い。ここは、派手じゃないけど強力にアピールしていきたいおもしろエリア。

丁寧な暮らしを体現したような雑貨屋さん「オージュルデュイ」さんは静岡に住んでいたこともある女性が切り盛りしていて、旭川周辺の作家さんの質のいい雑貨や、海外の気になったものをセルフビルドの小屋で紹介している。12月にお邪魔したときは、木こり兼スプーン職人によるアズキナシ(樹種の名前)のスプーンや、蜜蝋(ハチミツでできてる)のキャンドルをゲット。ゆくゆくは、コーヒーミルやキッチン道具なんかも買いにこよう。

あと、旭川公園のデザインにも関わってくださることになっている坂井寿香さんがいらっしゃる。坂井さんは農薬不使用のトマトや、寒締めほうれん草、お米を作られる農家でありながら、グラフィックデザイナーとしても活躍されている。まさに「半農デザイン」。めっちゃ面白いし、間違いないお人柄。一緒にいいものができそう~。

さらにさらに、親子3人で木工クラフトを手がけるクラフト&デザイン タンノ/丹野製作所も桜岡にある。またじっくり紹介せねばだけど、ほとんど芸術の域と言える作品を作っていらっしゃる。お父さんの名刺ケースは愛用してる。インスタやフェイスブックで制作工程を動画で公開されていて、その超絶技巧に悶絶する。アイヌの楽器なんかも作っていらっしゃり、お父さんは海外でも教えていらっしゃる。

馬に触れあえるクラークホースガーデンや、カフェ「グッドライフ」もある。空気もおいしく、人もおいしく、あんまり人に教えたくないほど心地よい桜岡です。もっともっとあるけど、順に紹介していきます。

愛される「アイスプロジェクト」

ゲストハウス「旭川公園」のテーブルづくりで相談しているのは、アイスプロジェクトという商号で個人事業をされている家具職人の小助川泰介さん。脂ののった30代後半で、家具の世界に入る前に、大切な木材が短寿命で使命を終える状況に違和感を感じられ、「無駄なく、長く愛せるものを」という思いで制作されている。

工房はゲストハウス予定地と同じ旭川市の永山地区にあって、今まで2度お邪魔した。ほんと、繊細な手仕事の数々を作り手のそばで見られるって、幸せな気分になる。旭川家具工業協同組合がやってる旭川デザインセンターのショールームを見に行くのもいいけど、オープンファクトリーみたいな形で、それぞれのメーカーや職人さんの生産現場を訪ねてみるのも楽しい。これは産地ならでは!

できあがった家具って、家具屋さんやセレクトショップで見たとしても、その産地や、作り手のストーリー・思いなんてほとんどの場合、分からない。いまの流通のシステムからうするとなかなか難しいところはあるから仕方ないけど、いかにももったいない。〝ロス〟が大きすぎるし、消費者は生産者の顔まで知れると嬉しくなるはずなのに。

ゲストハウスでは、旭川家具をばんばん置いていく。そんで、それを作ったのはどんな人でどんな背景をもって、どんな技術がそれを可能にしているのか。できる限り全部見せていきたい。産地やエリアのファンを増やす上ではめっちゃ大事なことだろうと思うー。

初めての冬

旭川に来る前、地元の人に「冬は経験あるの?」「厳しさを知らんっしょー」と散々言われたもんだけど、一度経験してみて(1シーズンしか知らないこそ)、そんなめちゃくちゃなものじゃない、と断言できる(今のところ)。よく言う話だけど、本州の風の強い地域のほうが、震えるほど寒い感じがする。

旭川公園ゲストハウスの予定地の周辺

もちろん、いろんな準備は必要で。子どもの分まで含めた手袋・帽子・スキーウェア・タイツなどなど。あと車も大変。FR(後輪駆動)のミニバンで旭川にやってきたけど、これまで秋口に2回、雪や泥にはまり、周囲の皆さんにレスキューしてもらった。いまどきの高性能チェーンをしていても、まったく歯が立たない局所的な場面はあった。借金を長い間払うのも、自営業を始めるうえで健全ではないので、12月頭に4WDに乗り換えた。これまで仕事用としてはスズキのスイフトに乗っていたけど、ちゃんとした4WDのあるスズキの軽トラ(キャリイトラック)に換えて、事なきを得た。ただ、4WDのミニバン(日産・ラフェスタ)に換えても3回、はまって立ち往生してしまったけども。

除雪道具もリサイクルショップで買って、毎朝雪かきして、車2台の雪や氷を落として、暖房をかけて外出に備えないといけない。暖房のない徹夜構内バイトや、スノーキャンプ、森遊びをするには、それなりのギアもそろえないといけないし。

会社員をやめて、こういう出費はめちゃくちゃ辛かったけど、それくらい。毎朝の労働は慣れてしまえばアパートなのでたいしたことはなし。「冷たい」と思うことはあっても、鼻毛はついに凍った体験はしなかった。外でおしっこをするわけでもないし。あ、二回ほど経験したホワイトアウトは冗談じゃない危険さだったけど。

やっぱり大変なことより、身近に見えるダイヤモンドダストや霧氷、たまにくっきり見える大雪山系なんてのは、辛さを吹っ飛ばすほど、息をのむほど、美しい。移住して良かったと思える。

北海道の人は寒がりで、暖房がんがん効かせて半袖でアイス食べてるみたいによく言うし、あんまり外に出ない人が多いのも確かだろうと感じた。ただ、どう楽しむのかについていろんな機会があれば、もっと身近な魅力に地元の人が気付けるんじゃないかなー。雪は厄介なものだし、雪山が生活道路にせり出して交差点が危ないし、雪下ろしで人命が失われる。でも、雪が降ることはどうにもならない。じゃあ、エイヤで楽しむしかない。

2月10~11日に当麻町でやったスノーキャンプで、参加者が感想として話していたのが「地元の人の中で、冬を楽しさに気づく人をどう増やしていくのかが大事だと思う」と。まさにそれ。外から、冬の魅力を求めてやってくる人に対して、地元の人で楽しんでる人が一人でも多ければ、間違いなくいい作用があると思う。

と偉そうなこと言っておいて、何年かたってここの生活に慣れてしまって、違うこと言ってるかもしれないけど・・・・

ご迷惑をおかけしました

公式サイトを新しく公開したはいいものの、なんらかのトラブルで閲覧できない状態が続いていました。ウイルスの可能性が指摘されたものの、それも確認できず、理由はよく分からないままで、少し気持ち悪いですが・・・。 でも気を取り直して更新していきますので、引き続きよろしくお願いします!