木下斉さんを迎えます!

11月9日、全国のまちづくりの現場を渡り歩いてこられた地域活性化伝道師の木下斉さんが旭川と鷹栖町にーーー! 

めちゃ楽しみなので、近著の「地元がヤバい…と思ったら読む 凡人のための地域再生入門」(ダイヤモンド社)の読書感想文を勝手に書いちゃいます。ついでに、関係者じゃないのに勝手にイベント告知します。

補助金をもらったことのある身なので、帯にある「補助金が地方のガンなんや!」にドキッとするけれども、気にせずページをめくる。

気付けば一気に300ページくらいまで来ていて、やばいヤバいもう終わっちゃうと焦る。瀬戸さん(33)という主人公が、実家の家業の整理で帰省していくうちに衰退した地元の再生に関わっていくというストーリー(小説)仕立てなので、読書家になったと勘違いしちゃうくらい紙をめくるのがめちゃ速くなる。

307ページに、子どものころ瀬戸をパシッていて今は飲食事業で大成功している同級生の佐田が、こう言う。「地方やと『地元はダメだ、未来がない、何もできることはない』って大人たちが思い込んでることはまだまだあるんや」。

うんうん!

308ページでは、瀬戸が佐田の言葉を受けるように、「地方に生まれても、地元で何かをするのは無理だと諦めて東京に出てしまう子どもも多いからね。それは結局、大人たちが諦めているからなんだよね」。

ほんまそうそう!

旭川に自分が移住したのは、2018年の10月だった。いま、ちょうど1年が過ぎたところ。

これまで旭川市の経済事情の厳しさをいろいろ見せつけられ、十勝地方の盛り上がりとの比較をよく聞かされ、「旭川で商売なんてできっこない」「なんもないし、みんな諦めてるよ」みたいなことをさんざん聞かされてきた。普通に暮らしてる、それこそ本であえて表現されている「凡人」の皆さんが、そう言う場面に何度も立ち会ってきた。

「旭川ってこんなとこがすごいでしょ」「なんでもあるでしょ」っていう声は、自分で動いて多くのご縁をいただいて初めて、耳に入ってきた気がする。やっぱり少数派だと思う。

自分のまちに対するネガティブな思いや意見って、その子どもたちにも確実に伝染する。「地元で就職を」「流出を防げ」とかお題目をとなえる前に、まず大人たちがちょっとマインドや目線を変えてみることのほうが要るはずやけど。

そういう意味では、移住者のほうがまっさらな目で観察しやすいし、業界とか地域の常識も知らないので、ある意味やりやすい。でも無知すぎるし、勢い先行なもんで、いろんな忠告を受けてきた。「もっと普通のスタイルで着実にやったほうがいい」「こんな立地で人が来るわけないし、理解できない」「最初からこんな大きなリスクを背負うべきじゃない」とか。

確かに、木下さんのこの本でも「事業は小さく始める」こととか「確実な収入をまず確保する、営業の先回りを」というセオリー的な指摘があって、この点、自分のゲストハウス業は危ういところがある。それも自覚はしているつもり。

と同時に、76ページで佐田で瀬戸に迫る、「地方で事業やるゆうたら、誰もが反対する。おれと銀行、どっち信用するんや」という言葉にはちょっと救われる思いがした。木下さんによる解説コラムでも「不安を感じない人はいない。さらにまわりからは親切心で確実に反対される。いろいろな人の意見を聞く人がいるが、特段関係ない人たちに意見を聞いたりして回っているうちに、マイナスの意見ばかりを言われて諦めてしまうケースも多い(中略)不安があるからといって人の賛成を精神安定剤にしようとせず、自分で覚悟を決めてやるしかないのだ」とあった。

スーパーマンの登場を待つんじゃなくて、「凡人」がなにかで刺激を受けてきっかけをつくって、誰と組むかを意識して、とりあえず動きだしてみる。(と本で書いてある)そうそう、それが大事なんだよなーと自分で正当化してしまったわ。動きだしちゃったし、あとはやることでしか危うさを緩和する術はないし!

で、たぶん、大事なのは刺激やきっかけなんだろうけど、それは旭川や周辺にめちゃある。実は。

木こりの清水省吾さんがやっている里山部と自伐型林業だったり、旭町で展開されているnest co-livingだったり、江丹別で始まる熱中小学校だったり、まちなかの遊休不動産を取得して安く貸し出してエリアの価値を高めようとしているパターソンのむらさんの動きだったり。

でもいちばん手っ取り早いのは、9日に木下さんの講演を聴くことでしょう!

鷹栖町主催のまちづくりセミナー「稼ぐまちが地方を変える」は14時から鷹栖地区住民センターで、木下さん自主開催の「狂犬ツアー」は午後7時からJA上川ビルで。かなり突っ込んだ北海道ローカルな話が出てくるみたいですよ!

ウェルネスな気分になれる当麻の森!

「自分の心身と時間をデザインすることを楽しむ」をテーマにした新ウェブメディア「Design me」(デザインミー)で、旭川公園を紹介してもらえることになり、第一弾の動画が公開されましたー

当麻町の森であった森遊びや木工の体験会のようすをスマホで撮影して、耐えられるクオリティに編集してもらいました。プロの動画力ってすごい。。。第一弾が当麻っていうのはいいなぁ〜。当事者だからか、なぜかウルウルする感じになりました。

森に入って綱引きみたいに白樺を引っ張ったり、搬出した白樺で木工をやったり、火を起こしたり、まるごとなんでもできるんだなー。そしてそれを支えるプレーヤーがそろってる。やっぱすごい当麻。当麻にいちばん近いゲストハウスとしてもっと繋がっていきたいわ!

那須から仙台経由、陸前高田ゆき

(つづき)

Chus(チャウス)で眼が覚めると、あたりは真っ暗だった昨夜とはまったく違う光景に驚いた。こんなにたくさんのショップが張り付いているなんて! しかもどれも、「丁寧な暮らし」が好きそうなお店ばかり。パッと見る限り11時開店のとこばかりだったので行けそうにはないけど、首都圏からわざわざ足を運ぶお客さんがいるのも頷ける。

憧れの上げ床式の花壇。ゲストハウス「旭川公園」でもいつかやりたい!ハーブとか植えたい!

昨晩も見た、小さな古本屋やさん。夜もいいけど、昼もいい。景色になっている

チャウスだけではない、人気のスコーンショップ「SHOZO」とか秀逸なショップがいくつもあわさって、一つの「景色」になってる。ここの場合はお店だけど、「ここに行けばなんか面白いできそう」と思わせる仕掛けとしては最高なクオリティだなぁと思った。

チェックアウトして、また東北道で仙台へ。ちょうど息継ぎするのに良かったのと、ぜひ見たい公園があったので。

あまりにも当たり前すぎて恐縮しちゃうくらいだけど、東北随一の繁華街・国分町に車を停めて、にぎわっている商店街の一角にある牛タン「利休」でランチ。なんか普通の旅行みたいになってきた。でも安定してうまい。

たくさん頼んで子どもが食べきれず、けっきょく自分がご飯を3杯くらいいただくことになってパンパンにお腹が膨らんだので、小走りで「肴町公園」を目指す。

肴町って、浜松にもあってよく行ったから懐かしいなぁ。ほどなくして到着。観光名所でもなんでもないけど、センス良さげな若い男子2人組や、若い子連れ数組が憩っていた。

実はここ、2016年に コーヒーやお菓子の屋台を並べて、ハンモックも置いて、ブランコのペンキ塗りワークショップもするイベントが開かれまして。代表の本郷さんという有名な方たちが、公園のような自然に人が集まる、セミパブリックな場所をつくろうとコーヒースタンドを作り、その流れでイベントも企画された。ひと気の少ない公共空間を活用しようという、公民連携の分野では知られた取り組み。

百葉箱をつかったライブラリー。子ども向けの本が手に取れる。これはやっぱ楽しい

SENDAI COFFEE STAND さんでコーヒーをいただく。チャイとかお菓子もある

 

で、コーヒーを飲みながら自分たちも一服してみた。百葉箱を使った文庫「フリーライブラリー」で次男が本を読みたがって泣きじゃくって、憩いどころじゃなかったけど。どんどん北上しないといけないので、許しておくれ。

後ろ髪を引かれながら一気に一関市まで東北道でいき、そこから延々と下道を通って、陸前高田に到着。峠を越えて、なかなか疲れる道中だったけど、真っ暗な中にも、この一帯が津波で更地になったことを感じさせるのには十分だった。工事中だと分かる自発光式のコーンに導かれる道路ばかりで、大きな大きな空き地が道の両側に広がっていた。

震災の爪痕は翌日見ることにして、とりあえず今宵の宿「箱根山テラス」へ。暗闇の中、急な山道をのぼってたどり着く、静謐な空間。貸切で、よけいに静かに感じられたのかも。チェックインしてまた車にのってご飯を食べ、きょうは早く寝て疲れを取ることにしようー。

このゲストハウス、この空間で一泊7000円ほど。地元の建設会社社長が、震災の後にエネルギーの循環の大切さを痛感して、「木と人を生かす」をコンセプトに始められた、すごいところ。詳細はまた次回に。                          (つづく)

 

「公共R不動産」より②〜理想の公共空間〜

だーいぶ時間をあけてしまったけど、名著「公共R不動産のプロジェクトスタディー公民連携のしくみとデザインー」で刺さったところのメモ。1回目から1ヶ月ぶり。

本の終盤で、岩手県紫波町のオガールプロジェクトで広場を手がけた、ランドスケープアーキテクトの長谷川浩己さんのインタビューがあった。オガールプロジェクトは、公民連携で収益をあげていく大成功例として知られてて、盛岡市のベッドタウンの紫波町の駅前にある元空き地に、図書館、産直、体育館、エコ住宅、宿泊施設、保育園を集約させていて、デザイン、土地活用、ファシリティとかいろんな分野で賞を受けてる超有名な事例。

長谷川さんはこう言っている。「僕はよく、オープンスペースにおける『空き地性』と『庭性』について考えます。この双方をどういうバランスで確保するか、デザインの大きなポイントの一つ」。開かれた庭にしないと人を呼べないし、空き地性とは多様に展開するための余地、みたいなものだという。この、「開かれた庭」っていう考え方がめちゃくちゃしっくりする。ゲストハウスを〝公園〟と呼んでるけど、開かれた庭、と呼ぶ方が分かりやすいかも。オープンガーデンはたくさんあるし、そこに「遊び」の要素を強くだす、という感じになるし。

photo:鈴木裕矢 庭のような空き地。ここにゲストハウスをつくります

しかも特色あるオープンスペースをつくるために大事なのは、誰がオーナーなのか、なんだって。「公園や広場でも、そこに家守みたいな存在がいて、その人のセンスや趣味が反映され、価値観に共感した人がやってくる。デザイナーは、そのセンスや趣味を形にするサポートをする。そうして公共空間がおもてなしの場所としてまちに開かれているのが理想だと思います」

めちゃくちゃ理想。ドンピシャの理想。まさにこんなところを作っていきたいなーとおもってる。

住民向けワークショップでは、「何が欲しいか?」ではなくて「どう過ごしたい?」と訪ねていたそうな。希望を議論すれば揉めるので、できることや予算は限られているし、アクティビティを考える場所にしていたんだって。

ゲストハウスの公園でなにが欲しいかといえば、そりゃなんでもほしい。いまある(必須だと思っている)のは、管理棟を兼ねた住宅、ゲストが宿泊する小屋(中にも遊具あり)、共同棟、キャンプファイヤーみたいな焚き火、井戸、木製ジャングルジム、自転車、落書き看板、イス、テーブル、飲み物やお菓子を出す屋台。

ゆったりしたい人にはそうしてほしいし、遊びたい子どもは動き回る。近くの里山「突哨山」の薪や大雪山の伏流水を汲み上げることで、自給的な暮らしを感じてもらいたい。

お風呂とかまだまだ欲しいなと思うけど、なんでもできるわけじゃないし、やりすぎると何がなんだか分からなくなるので、「何がしたいのか」ちゃんと考えないと。

どうありたいのか、どう過ごしてほしいのか。そして、事業として持続可能なように、どうすべきなのか。考えることが山積み!!

 

 

最高な住民アンケート

年度末のことし3月、ゲストハウス予定地がある永山地区でされたアンケート結果が発表されたみたい。最近知ったけど。まちづくり協議会、商工会、地元信金や旭川大学、商店街とかでつくる「永山地域経済活性中長期計画策定検討会」として、地域住民に聞き取ったもの。

サンプル数は100ほどと少なくいのがあれだけど、面白い結果が出てた。自分のためにあるかのような    ♪(´ε` )

今後の永山商店街のあり方に対する自由記述なら、こんなかんじ。ちょっと長いけど、引用↓↓↓

  • 大学が近くにあるのでもっと若者向けの店やおしゃれなカフェがあったら、若者の暇つぶしにもなると思うし、永山も少しは活性化するのでは(20代女性)
  • この地域は若者が遊ぶところが全くない。喫茶店のような落ち着ける場所が欲しい。(20代男性)
  • 古い建物、汚い景観。学生が寄り付かない理由の一つだと思う(20代男性)
  • 学生が空きコマを過ごせる場所がない。講義のない空きコマに行けるようなカフェがあったらうれしい(20代女性)
  • 市民の共有スペースがあるとよい。旭川大の学生の参加。(30代男性)
  • 買い物困難者への支援。移動販売車による販売活動(40代男性)
  • 愛されている老舗店舗の閉店に心が痛みます。月に一回マルシェの開催(50代女性)
  • 飲食を伴い多くの人が集まれる場の設置。(公民館は飲食ができない) (60代男性)
  • 人が集まれてふれあえる場の創出(60代女性)

ゲストハウスは子どもたちが遊びに来る公園みたいな場所をつくりたいと思ってるけど、子どもだけってことじゃなくて、お母さんたちも、おじいちゃんおばあちゃんも来てもらって、混ざり合ってもらえるのが理想!  ここで大事なのが学生さんの存在で、時間にも余裕があるし、勉強したことを実践してもらいたいし、中立的で利害関係がないから、どんどん来てほしい。学生もローカル資源

そう思ってたところに、このアンケート。学生さんは、時間がつぶせて楽しい、美意識が満たされる場所を求めてる。自分が学生の時も確かにそうだった。空き時間は背伸びして行くようなカフェか図書館か、バイト。机にコーヒーがあれば、なんでもできるし、くつろげる。

それに学生さんだけじゃなくてオトナも、コミュニティスペースを求めている。人が集まれる場所をほしがってる。ヒントが詰まりすぎたアンケートに感謝!

予定地は旭川大学から歩いて5分かからない。やっぱいい立地だわ。なんでもできそう。

 

 

 

 

「泊まれる◯◯」

きょう6月 5日の静岡新聞夕刊一面と、5月30日の朝日新聞に、静岡市葵区七間町・人宿町のゲストハウス「泊まれる純喫茶   ヒトヤ堂」が紹介されていた。

武蔵野美大をでた女性2人が、セルフリノベーションで喫茶に新たに息を吹き込んで仕上げたらしい。人宿町は、東海道の旅籠として栄えたんだそうで、ネーミングにも込めたみたい。そうか、ヒトヤド→ヒトヤ堂。おもしろいなー

頭に残ったのは「泊まれる◯◯」というワード。全国で似たような言い回しが多くて、これからは使うのが難しそう。

自分も今年1月くらいの時点で、ゲストハウスの形を考えていた時、妻の茜がパンが好きなので安易に「泊まれるパン屋」にしようと思って、競合がなさそうな地域を探してた。まぁその構想はすぐに潰えるのだけれども。。。

沼津には、「少年自然の家」をリノベーションした、泊まれる公園「INN THE PARK」もある。ここはグランピング的な雰囲気も楽しめるし、ものすごい人気になってる。最新号のmonoマガジンにも載ってた。

「泊まれる◯◯」は、◯◯の部分がオリジナリティある資源や価値に当たると思うけど、それと宿泊を掛けわせて「新しいよ!」ってニュアンスを出すには手っ取り早い。

旭川のゲストハウス構想でも、地域の子どもたちが遊びにくるハイクオリティな「公園」をつくろうとしているので、言っていれば「泊まれる公園」には違いない。表現やコピーはまだまだ考えを深めないといけないな〜。

静岡新聞(新聞記者はシズシンと呼ぶ)の記事には、「地元の人と宿泊者が自然に混じり合えるのがゲストハウスの魅力」とある。完全に同意。濃〜く混じり合える「公園」をつくってこー。

とりあえずヒトヤ堂、ふらりと行ってみよう。静岡だけみても、行きたいところが多すぎて困リ果てる

旭川にゲストハウスをつくる3つの理由② 最初の挫折

北海道で人生の大逆転を狙おうと思ったはいいものの、悩んだのが場所選び。180近い市町村があって、良さげな自治体をしらみつぶしに調べていった。

条件はJRの駅があること。競合が多くないこと。空港から3時間以上かからないこと。通える学校があること。病院があること。

今や「くらしごと」みたいな、センスのいい道内の移住情報を紹介するサイトも多く、情報収集はそんなに苦労しなかった。ただ、条件に合うものを絞っていくのに時間がかかり、最初にヒットしたのが、沼田町というところだった。

旭川から45分、深川から20分ほど(確か)、留萌本線が通っていて今はその終着駅は留萌。その先の留萌~増毛が廃線になったばっかりのことは知っていたけど、沿線については全然知識も印象もなかった。

調べてみると、豪雪地帯で、「天然の冷蔵庫」「現代の雪室」とも言うべき、雪を活用した貯蔵施設が普及していた。雪で寝かせて一年中が「新米」と売り出せる雪中米とか、同じようにした酒、農産物とかが人気。〝寝かせる文化〟があり、「発酵」にも通じるな、と気になってどんどん興味がわいた。ネットで石狩沼田駅を見ると、乗降に使っていないホームがあって、コンテナのゲストハウスを置くのにぴったり!ときた。待合室も、交流スペースにふさわしい風情。

旭川から沼田町への道中。石狩沼田駅での、とんでもない着雪がある列車の写真とか、いろいろ消えてしまった

さっそく一カ月後の2月25日に家族5人+(なぜか)おかんで沼田町に行き、視察。役場で「駅活」のプレゼンをして、教育委員会に小中学校を案内してもらい、検討を深めていった。JR北海道本社にもお邪魔して、協力をお願いした。

でも、話は進むどころか、すぐ暗雲が立ちこめた。

まず、特別支援学校に通っている長男の大滋(中1)の受け入れが、事実上不可能で、原則的に60キロ離れた美唄市まで送り迎えする必要がでてきた。

それに、ゲストハウスをやる上で当時一番重視していた、駅ホームの活用が厳しい状況だった。留萌本線はものすごい赤字を抱え、老朽化した設備の維持更新ものしかかる。JRとしてはバス転換を訴えているものの、地元との協議には入れていなかった。しかもこれといった打開策・妙案もない。よくある話だけど、1つの自治体だけでは動けず、事実上、膠着状態になっていた。この厳しさは想定していたものの、沿線自治体はまったく動きがなく、現実的ではないと思って、なくなく断念したのでした。

ただ、ここで大きな収穫があった。面白いローカル資源はどこでも掘ればいくらでもあるし、なにより、何がやりたいのか輪郭が少しずつ明確になってきたことが大きかった。

沼田の場合は駅がキーワード。公共空間、メディアとしてもっとも好きな場所。これを豊かに彩りたい、いろんな人がまじって楽しくしたい、子ども達がふるさとを「いいな」と思えるきっかけにしたい・・・。「公民連携」というとおおげさかもしれないけれど、公共の空間に、自分のアイデアや「いいな」と思うものを加えて、みんなの力でデザインしていくプロセスにこそ興味があるんだと思い知った。そして、その思いがなぜ強いのかを認識することができた。

これまで10年間、新聞記者として取材したきた中で、少なからず心を揺さぶられる経験があった。まさにそれが、「多くの人が混じり合い、公共空間を豊かにしたい」という自分の価値観をつくっていた。                      (つづく)