目的の本がなくても、お出かけの目的になる本屋

妻のリクエストで、札幌にほど近い江別市にある蔦屋書店に行ってきた。蔦屋は東京の代官山以来だったけど、久々にガツんときてサイコーでした。

自分の中での目的は2つ。なぜ集客力があるのかを感じることと、北海道の蔦屋書店として、旭川ゆかりのものがどれだけあるかをみること。

江別はレンガや小麦がたくさん作られてきたことで有名なまち。(江別のレンガを周りに積んだ薪ストーブを下川町で見て初めて知った😅)。だから駐車場から建物の外観をみて、「江別らしいな」とすぐ認知できた。分かりやすいのって大事。

<知><食><暮らし>の三つの棟から成っていて、まずはスターバックス以外が本棚である<知>に入り、つぎに洒落た飲食テナントが入る<食>へ、アウトドアや子どもの遊び、雑貨をメーンにした<暮らし>へと進んでいった。

入った瞬間から、キョロキョロしっぱなし。圧倒的な刺激量。目を前後左右、そして上下に忙しく動かす。「自分の興味がある本がないわけはない」という気分になって、本を買いに来たわけじゃないのに、なんとなく歩き回って探してしまう。

憎いほどいいなと思ったのは、おそらくコンシェルジュさんが作ったであろう、本のジャンルごとのおススメ文。キャッチーな写真も添えてある。ポップとは違ってスマートすぎるけど、思わず読んじゃうクオリティ。かなり力入ってる。

そして当然のように、その近くにはそれに関連するグッズが置いてある。旅行ならその行先を、お弁当ならその中身を、どうしても想像してしまう。これはもう、体験価値を提供してるようなもんだ。

そしてそして、3棟のうち、1つに足を運べば、どうしたって他も見たくなる。

すると、「食」「旅」「キッチン雑貨」「器」「子育て」「アウトドア」「洋服」と、暮らしのあらゆる要素がつながってくる。否応なしに、自分はどんな暮らしがしたいかなってイメージする。ライフスタイルを提案されてるな、自分。完全にCCC(運営会社)の術中にはまっているな…と思いながらも、まぁ楽しいからしょうがないよね。

子ども本のコーナー。いいなぁ
どどーんと贅沢にマリメッコを紹介

本に囲まれたり、本を選んでいる時間を楽しませることに主眼を置いているんだろなーと、来る前は思っていたけれど、それだけじゃなかった。

スタバのスペースで観察していると、本を持ち込んで(清算前でも読める)ドリンクを楽しんでいる人は、半分もいなかった。この「蔦屋書店」という空間で仕事したり、自習したり、おしゃべりしたり、ネットサーフィンしたりといった体験に価値を見出してるんだろな。たぶん。

ところで、にわか「おにぎり研究家」の松本家としては、フードコーナーのおむすび屋さん「Hakodate Omusubi函太郎」で大人食いしないわけにはいかない。

鮭と山わさび、二番目に高価な「岩海苔と雪たらこ」(550円)、日替わり味噌汁をオーダー。

ごはんは、道南で生まれたという「ふっくりんこ」の特別栽培米。ほんのり甘く、ほんのり塩味がして、ふっくらして瑞々しく、バランスがある。わが家で試行錯誤しているお米に比べて、透き通った感じがするし、粒感は弱くても粒ごとの存在感は生きている。うーむ! 

炊き立てご飯の水分の逃がし方、握り方、ノリの巻き方もめちゃ参考になった。調理場が丸見えなので、じーっと観察してしまった(すみません)。

おにぎり屋さんの楽しさの一つは、家庭ではできない種類の多さ。価格の幅が大きすぎて、ついつい高級メニューも食べたくなるじゃん! お米や具、みそ汁まで全体で「道南」を感じさせる演出にも驚いた。

そうそう、旭川周辺ゆかりの作家さんや商品もたくさんあった! ▼大雪木工(東川)のチェア、▼アカエゾマツのアロマ「はぐりら」(旭川)、▼旭川公園ゲストハウスでも使う瀬戸晋さん(東旭川)の漆拭きの木食器、▼ロクロ挽きで薄い質感の「kamiシリーズ」が人気の木工メーカー「高橋工芸」(旭川)、▼日本茶ブランド「USAGIYA」(旭川)。けっこういっぱいあって、うれしかったな~。

ゴールデンウイーク最終日。子どもを保育所やデイサービスに預けている間のとんぼ返りの小旅行だったけど、お腹いっぱいになれて幸せでした。

焼きそばといえば浅沼ゼミ

私立の旭川大学には、地域連携に熱心なゼミがたくさんありまして。これまで何度か紹介している横田ゼミはもちろん、食や地域産業の研究で地域に入り込んでいる学生が多いのは、すごい貴重な資源なんだなー。

浅沼ゼミは学外でも随一有名なくらいで、先生ご自身が旭川のまちなか(駅からはちょっと離れてるけど)に「常盤ラボ」というコミュニティを開放していて、子どもが勉強したり、イベントを開いたりしている。

最近は大学のある永山地区の農家さんについても調べていて、どのくらいあるのか、どんなものを作っているのかヒアリングして、食物栄養専攻のある学内での給食づくりにつなげている。そしてその文脈で、「旭川しょうゆ焼きそば」をずっと手がけてイベントで売ったりしている。

旭川しょうゆ焼きそばは、ラーメンが有名で食材や醸造品が豊富にあるご当地ならではのB級グルメ。旭川産の米粉と道産小麦を配合した麺を使い、旭川の醤油だれで味付けし、具材も地物を必ず使うことになっている。名乗るには、けっこうハードルが高いんです。

だしを加えた、特製の醤油だれ

今までゼミの活動の一環として焼きそば作りは聞いたことがあったけど、食べたことはなかったので、常盤ラボでその発表会&試食会があると聞いて迷わずお邪魔してきた。

地元の焼きそばの名店の監修を受けたオリジナルメニューで、率直に言ってめちゃおいしい。ちゃんとした写真撮るの忘れたけど。ニンジン、タマネギがちゃんとそのものの味がして、存在感がある。農家さんと繋がってる感じがする。コクのあるたれに、麺がうまく絡みついている。学生さんがやっているので、まだ慣れていない手際、500円の価格設定というのはあるけど、ちゃんとお金取れるしストーリーがあるのでめちゃ良いなと。「旭川公園」でも月に何度か出せないかと検討中!

旭川公園だけのブレンド米へ

店に立つ鳥越さん

ゲストハウス「旭川公園」で提供する朝ごはんは、和と洋の2種類を考えているけど、洋朝食は移住する前から、神戸の有名店「グラノラジャーニー」と組んだオリジナルのグラノーラにすることが決まっていて、和をどうするかが、まだだった。

いろんな宿で朝ごはんを食べて感じたのは、▽生産者の顔をとことん見せているところはそうそうない▽あ、ちょっとこだわってるなって宿で500円以上はとる▽量が多すぎても普通は食べきれないし、ロスに心が痛む▽ここでしか食べられない、っていう朝ごはんはほとんどない▽宿の最後の印象となる朝ごはんは重要すぎるほど重要 ということ。

ほかの宿との差別化をする意味でも、旭川公園は、「ここにしかない」こだわりをちりばめないといけないし、小規模だから丁寧に作り手のみなさんとコミュニケーションして、ゲストにも丁寧に伝えていきたい。

一番大事になってくるのが、白米。予定地の永山地区は稲作農家さんが多いし、意欲的なことをされている方がたくさんいて、ちょっと前までは「とにかく近くの生産者さんから」と考えてた。でも「うまい」と思えるお米はプロの米穀店さんから仕入れてることが多いし、年間通してのクオリティの維持や、季節変動・天候不順からくるリスクを考えたら、やっぱりお願いするのがいちばん。

ということで、旭川の一条通り近くにある、「上森米穀店」の門を叩いたのが11月中旬。店主の鳥越さんはホテル業界からの転身で、奥様の実家の米穀店を切り盛りすることになった。だからなのか発想がすごく柔軟でいらっしゃって、黒米をはじめとする雑穀米や、黒米茶、ギフト用の少量のお米のセットとか、話題を呼ぶ商品をたくさん送り出している。旭川でもすごく有名な、というか知る人ぞ知る名店。

鳥越さんに、旭川公園の目指すイメージや食についてお話ししてご理解いただき、オリジナルのブレンド米を提供いただく方向でまとまった。おいしい黒米茶も置かせてもらう。

旭川のお茶屋さん「USAGIYA」本店で出されている黒米茶

お米は、白米だけじゃなくて女性に人気のある雑穀米も朝ごはんで出すつもり。2種類あったほうが、楽しいし写真も撮りたくなるし。白米は、富良野・麓郷(「北の国から」の舞台)にある「高岡桶店」のおひつで出す予定〜。

器は、予定地近くの「突哨山」で、地元の素材を追求した作陶をしている工藤和彦さんの飯茶碗を。これまた楽しみすぎる!

里山でなんちゃって木こりお手伝い

 

突哨山(とっしょうざん)の入り口にて。道北の11月とは思えない景色

はやくも11月。まだまだ初雪の便りが届かない。そのおかげで長く紅葉が楽しめてる。

1日には近くの里山「突哨山」で、フリーの木こりの清水省吾さんを訪ねに行く。前回、10月22日にお邪魔したときは、まだ黄色くなった葉っぱがたくさん残っていたけれど、今日はもうほとんどが落ちてしまっていて、秋の深まりというか、冬が着実に近づいていることを教えてくれた。

そして、初めてのアウトドア稼働となったスズキ・キャリイ君はさっそく、4WDの威力をいかんなく発揮! 前日までの雨で粘土質の地面はおもしろいくらいぬかるんでいて、四駆じゃないと絶対に不可能な状況だった。

それにキャリイ君はすごく森にマッチしていて、写真集にできるんじゃないかと思うくらい! やっぱりまちなかじゃなくて、自然の中に置いてこそ軽トラは映える。清水さんの軽トラ(ハイゼット)もなまらカッコいい。

清水さんは、自分の持っている山に、軽トラで材を搬出しやすいようにユンぼと人力で道をつくるということで、何日間にもわたって過酷な作業を続けていた。掘れば掘るほど出てくる大量の泥の処理に悪戦苦闘して、雨の日なんか大変なことになってしまったらしいけど、大方できあがったみたい。いちばん大変な時に手伝えなくて恐縮だったけど、地面に残った木をちょこっと運ばせてもらった。

キノコのホダ木として使うカシワやミズナラを見ていて、カシワの断面に見とれる。なんか神々しい。カシワって名前は知っていたけどあんまり意識したことはなくて、こんな綺麗だったとは。

鹿のワナを見せてもらって、そのあと、ゲストハウスに置くオリジナルのスツールに使うミズナラ探しに出た。清水さんの森には100年生のミズナラがたくさん生えていて、かなり立派な太い幹がかっこいい。(この辺からスマホの電池がなくなって写真なし)。風の通り方木を守る上で大事なこと、「光の一等地」を求めて木々が競っていること、本当に伐るべき木は何かを吟味した上でじゃないと伐らないこと、どんな木が「人間にとって良い木」なのか…。こうやって森の中で直接教えてもらうことで、体に染み込んでくる感じがするなぁ。本とかで聞くのとは全く違う。

このあと、事務所みたいに清水さんが使っている拠点の小屋の近くに行き、ミズナラ(カシワだったかな?)に生えた立派なナメコのホダ木を拝見。手伝ってくれたからということで、なんと一本そのままいただく。ホダ木が動いてナメコがつぶれちゃわないように、軽トラの荷台にあるタイヤで慎重に固定して、わがアパートへ。ちょっとだけワイルドな帰宅を演出。お味噌汁にいれたけど、風味豊かで歯ごたえもあり、なまらうまい。子どもたちも「おいしい、おいしい」とパクパク食べて嬉しかったなぁ。

 

長沼にある、わざわざ行きたいカレー屋さん

長沼町に行ったからには、お邪魔しないといけないカレー屋さんがあるので、中村直弘さんたちのイベント「サルベージヤード古材市」が終わってから、午後3時を過ぎていたけど滑り込んだ。「shanti nivas cafe(シャンディ ニヴァース カフェ)。田園地帯を貫く道端に、ポツンと立っている古民家を改装したかわいいお店。見過ごしそうになる。

どこを切り取ってもインスタ映えしそうだけど、このロケーションは文句なしに素晴らしい。北海道に来たなーと実感できる。このランプとショップ看板だけでも嬉しくなる。

映画に出てきそうな外観のお店。わくわくしながら木製のドアを開けると、これまた北海道らしく、室内に続くドアまではちょっと距離がある。落ち着く。

日本人の舌に合うようにつくられた、オリジナルのインドカレー。いくつか好きなルーと、好きなお米を選べるのも◎。そしてめちゃんこ美味しい。カレーって普段から進んで食べることはないけど、繊細で丁寧で、それでいてあっさりしすぎない味。これはリピートしたくなるわ。

どこに座っても居心地のいい空間。座席はもちろん、トイレも。子ども用の絵本も多くて、子ども用のカラトリーもかわいくて、家族づれでぜひ行きたいお店。

厨房手前のレジまわりもかわいい。

札幌や旭川からわざわざ行きたいなー。地元の人が強烈にオススメするのも納得。

木工ワークショップからほろ酔いでススキノへ

いま住んでいる旭川市の永山地区というところには、好きな人にはたまらない「旭川デザインセンター」がある。旭川家具の工業共同組合が運営していて、自慢の商品を並べている。ここはいつも見るだけだったけど、ときどきは木工ワークショップをやっていると前回お邪魔した時に聞いて、さっそく申し込んだ。

10月27日、「アイスプロジェクト」の小助川さんによる「巣箱型の貯金箱」をつくる催しがいよいよ開催。すごく楽しみだったー。なので、この愛らしい相棒を初出動させて、デザインセンターへ急行いたしました。

瀟洒な建物にも似合うキャリイ君

机に座ると、ちょっとずつたくさんの種類の木片が置かれていく。下の写真はまだその途中だけど、なんだか映える。

今回のワークショップは、小助川さんたちの指導をうけて、この木片にヤスリがけし、ボンドで接着し、オイルを塗り、組み立てて形にするというシンプルなもの。傾斜がかった屋根部分の細長い木片は色とりどりなので、つくる人によって個性がでる。次男・陽己(はるき)を連れていったけど、予想に反して没頭してくれてびっくりやら、うれしいやら。

時間がおしてしまって小助川さんにご挨拶できなかったけど、次回もまだまだあるので、また来ようー。

お昼は、春から転勤で同じ永山(しかも歩いて行けるほどのご近所)に住んでいるご夫婦のお宅にお邪魔して、昼飲み&ランチ会。自分でお菓子とか料理とかできちゃう凄腕ままで、息子さんも我が子たちと年が近いし、もっともっとお付き合いを深めていきたいなー。

夕方には妻の運転で札幌に移動し、翌日のステキイベントに参加する準備を。北海道胆振地震の対策でできた「ふっこう割」なのか、ホテルで6000円引きのクーポンが出てて、ゲストハウスの個室よりも安かったのでやむなくホテルへ。5人で8000円台なら高くない。痛いけど。

大都会。ミニ東京だ

申し訳ないけど子どもたちは妻に任せ、自分はいそいそとススキノへ!  石川県で勤務していたころにつながった行政関係者と久々に会い、近況を報告しながら、ああでもない、こうでもないと。地元の生の声を聞けて有意義だったー。大人しく一軒目でホテルに帰って、すぐ撃沈。

移動の車中でずっと寝てしまって、寝つきが遅かった子どもたち。いつも振り回して申し訳ない

森ビルつながりで森いっぱいの下川町ざんまい

浜松にいたころのはなし。東京の森ビルで六本木ヒルズのタウンマネジメントをされて浜松へUターンし、「丸八不動産」に入ってまちづくりの面白い仕掛けをされている高林健太さん(34)と知り合った。いろいろ話すうちに、北海道・下川町で頑張っている同期がいると聞いて、さっそく紹介してもらうことに。それが、下川町産業活性化支援機構のプロジェクト統括部長、長田拓さん(34)。自分と同い年で、しかも大阪出身。これは間違いない‼️

下川のすべてを教えてくれた長田さん

下川町は森林が町域の9割を占め、林業・経済・エネルギーの「地域内循環」を時間をかけて進め、移住者が増えてきているまちであります。近年は転入超過(2017年は32人のプラス)で、人口減少は緩和されてる。地域づくりの分野では全国的に有名で、しかも旭川からは80キロしか離れていない。北海道の感覚では、ちょっとそこのコンビニに行くくらい、すぐ近く。

自分の旭川のゲストハウス予定地からすぐの里山で木こりをやっている清水省吾さんたちも、伐った木を乾燥させるときは下川町まで持って行ってるし、この辺の林業集積地といえば下川は外せないので、旭川でそれっぽいことに首を突っ込むなら、下川を見ずして暮らせないのです。

なので10月25日にさっそく下川へ。この2日前に納車されるはずだった軽トラ(スズキ・キャリイ)が車検を通らず、この日はやむなく列車で行くことに。それはそれでもちろん楽しいけど、時間のロスは大きく、名寄駅からは長田さんに迎えに来てもらうことに。

最寄りの永山駅(旭川)から普通列車に乗って、和寒(わっさむ)という駅で一回おりて、後から来る特急「宗谷」に乗り換え。新婚旅行以来、5年ぶりくらいだなぁ、あの時はまだ「スーパー宗谷」で本数ももっとあった。 力強く唸るディーゼルエンジン音、軽快で小気味よいジョイント音、適度な揺れ。そのどれもが生命力にあふれていて、楽しいことこの上ない。旭川〜札幌の速達特急電車「カムイ」「ライラック」にはない楽しさがあるわ。

和寒駅にて。かっこいい。4両編成で、ぱっと見で5割くらいの乗車率。観光や都市間輸送が多いイメージ

名寄駅にて。かわいい!

「宗谷」を降りた名寄駅は、売店も旅行会社も撤退してしまった寂しい雰囲気で、駅前から続く商店街もなかなかにひっそりとしていた。道路が広い分、その辛さをより感じてしまう。名寄はスノボで来たことあるくらいだけど、下川を含めこの辺りの拠点都市なので、もうちょっとガヤガヤしてるかと思った。郊外のイオンは違うかもしれないけど。。。

11時45分、長田さんの運転するスイフトが名寄駅に。それから20分しないくらいで下川町の中心部に着いて、そのままランチ。そば屋さんの看板がかかっている「やまと屋」の暖簾をくぐる。ここ、もともと後継者がいなくて店を閉じたけど、商工会長さんが一念発起して自分で店を買い、曜日限定で開くようになったとか。

人口3400人のまち。一つの店がなくなることがまちにもたらすインパクトは大きいし、中心街の「景色」を保ちたいという志はなんともかっこいい! しかもこの日は、この店で移住者の方がチャレンジショップを開いた初日だとか。こんなステキな動きがあるなん、さすが!とさっそく感じ入ってしまった。みんな顔を知ってるんじゃないかと思うくらい、お客さん同士が楽しくワイワイガヤガヤしてて、よそ者のこっちまで嬉しくなる。しかも生姜焼き定食、味がしっかりしていてめちゃ好み。

ランチの後は、長田さんの職場である、まちおこしセンター「コモレビ」へ。NPO法人の観光協会や興業協同組合が入居して、交流スペースがあるところ。かつて駅があった場所で、バスターミナルが目の前だからめちゃ便利。

子どもたちの遊ぶ姿もあった。自分が高校生ならここでダベりたいなーと思っていたら、すでに実践者がいた

 

ちょっと分かりにくいけど、黒っぽい外壁の板には、木炭を作るときにでる煙を燻して防腐・防虫効果を持たせた「燻煙(くんえん)」処理をしている。これも、余すところなく使う精神から。

下川のこれまでとこれからについてレクチャーをいただく。2003年、北海道で初めて、流通や加工のプロセスを国際的に認証する「FSC」を取得するなど、循環型の林業経営をやってきて、2007年に町自治基本条例で「持続可能な地域社会の実現を目指す」とうたい、2008年に環境モデル都市、2011年に環境未来都市に選定。全国で徐々に知られるようになって、ことしはSDGs未来都市にもなった。SDGsは国連で採択された、「持続可能な開発目標」を示す国際的な目標で、町でも代表者がいろんな観点から現状と目標を話し合い、「誰ひとり取り残されず、しなやかに強く、幸せに暮らせるまち」を目指している。

基幹の林業では余すところなく使うことを徹底し、森林バイオマスを活用しての熱自給率は49%にのぼる。バイオマスボイラーを次々と導入し、公共施設の熱供給の68%を再生エネルギーに転換。年間で1900万円の費用を節約して、子育て支援にも回す仕組みを整えているらしい。すご!

コモレビを出た後は、森林組合の加工部門を株式会社化した「下川フォレストファミリー」さんを見学させてもらう。道北トップクラスの加工技術があり、シラカバやカラマツと幅広い樹種を扱っていて、集成材からクラフト用までいろんな製品を生産している。木材工場に入ったのは新聞記者のとき以来。丁寧につくられていて驚きだったし、木くずはボイラーに集めれらていて、やっぱり徹底してるなあとしみじみ。

木くずをボイラーに集めるための大きな配管。乾燥機の熱源になっているそう。

羽目板やフローリング材。広葉樹ならナラやシラカバ、タモ、針葉樹ならトドマツやカラマツなど多様な道産の材を使っている

フォレストファミリーさんの後は、役場で挨拶させてもらい、ボイラーを見せてもらい、チップ工場を見学。

チップに加工される、径の細い丸太が集められる「土場(どば)」

土場に集められたチップ加工用の木材。なかなかにフォトジェニック

このどデカイドイツ製の機械で、チップに加工される。間違っても、巻き込まれたくない

暮れなずむ空と役場庁舎

そしていよいよ、新しい地域づくりの動きが相次いでいるエリア「一の橋」へ。

役場を中心に半径1キロ圏内に8割の世帯が集中するコンパクトなまちだけど、限界集落はあったので、一の橋に「バイオビレッジ」をつくりだした。

お年寄りが集まって暮らせる長屋風のしゃれた「集住化住宅」、カフェ(地域食堂)、地域熱の余熱を使うシイタケ栽培施設、障害がある人の支援施設を一ヶ所に集約して、バイオマスボイラーや太陽光でエネルギーを自給している。地域おこし協力隊の方々が、買い物代行とかで暮らしやすい地域をつくろうと活躍しているのもステキ。ビレッジをつくる前と比べて、この集落の人口はほとんど変わらず、移住者が増えたことで高齢化率が下がってるのだとか!

集住化住宅のエントランス。しゃれてる

冬も暮らしやすそう。お年寄りが除雪しなくてもいいようになってる

カフェはお年寄りが使いやすいイスやテーブル。普段使いしやすいお値段とメニュー。地元のおもしろいものも置かれていた

有機ハーブやコスメを製造販売している」ソーリー工房」さんの小屋。好みドストライクでキュンキュンしてしまったー。営業時間中にまた見に行こう。同世代の地元の大工さんが手がけ、オフグリッドらしい。すご!

この「一の橋」というエリア、まだまだ面白くなりそうで。ライフスタイルに合わせて家具を修理する「家具乃診療所」というのができてくる予定だし、近くの廃校ではベルシステム24が、障害をもつ人が働けるチョコレート製造所をつくるらしい。タッグをくむのはこの分野では有名な久遠チョコレートさん! 愛知県の豊橋市に、よく買いに行ったなぁ。

他にも移住者が新しい構想を温めていて。外からでもかなり感じられるけど、「おもしろいことやってそう」という匂いがプンプンする。SDGsの流れで企業からの注目も高まっているみたい。

もともと、名寄市とくっつくかどうか、平成の大合併のころに町内で熱い議論があり、自分たちの地域を見つめ直し、やっぱり林業だ、じゃあ循環だ、と段階をへてきた。当たり前かもしれないけど、その長い間のプロセスや下地があって、いま下川町はここまで来たんだと痛感。そこを理解しないとうわべだけ真似してもダメだろうし、町民3400人のまちだからこそできた部分も見逃せないと思う。

せっかくここまで来たので、夜もじっくり楽しむことにする。コモレビから歩いて10分くらいのとこに、地域おこし協力隊の立花美咲さんがやっている民泊「アナグラム」に投宿。民家を改装した宿で、周りは普通の住宅街だし、おうちに帰ってきたようですごく落ち着く。センスあふれる空間で、江別(札幌から旭川方面にちょっといった所)のレンガで囲った薪ストーブも最高!  ここで、道内各地の木や森の現場を訪ね歩いている無職の大工さん・深田康介さんと出会い、この後の3日間連続して会う不思議な縁ができた。

日本や道北の未来について語り合う、立花さん(右)と深田さん

夜は焼き鳥屋で長田さん、立花さん、深田さんと一杯やって、アナグラムの共同スペースのソファーで撃沈!

下川町は手延べうどんで有名なので、シメにいただきました。んまい!飲んだあとに合う喉越し

次は、ここ行こ

ふかふかベッド。午前3時に入りました

朝から元気いっぱいの深田氏

朝はバスターミナルから始発バスに乗って名寄駅まで。460円。小学生から高校生、お年寄りまでほぼ満員(小学生は立ってる子もいた)。地元の公共交通に乗るとやっぱり気持ちいいし、子どもたちの元気な声にほっこりする。さすが地元の「名士バス」。

下川町のバスターミナルにて

かなり濃厚に勉強させてもらった下川ツアー。今回お会いできなかった人やお店、行けなかった場所もまだまだあるので、次回を楽しみにしよ。クラウドファンディングの返礼スツールをつくる時も下川町で木材を乾燥させる予定だけど、これからどんな形で絡ませてもらえるか、どんどん具体化してこー。楽しみ。

 

キムチホルモンラーメンからの、旭山動物園かじり

10月21日のお昼は、近くにあるそば・ラーメンの「鬼はそと」。地元をよく知る人によると、ここは昔「福は内」というお店だったそうで。おもしろい。

妻はどんぶりからはみ出した巨大なのが乗っている「鬼かき揚げ丼」を頼み、子どもはもりそば、自分は「キムモン」(1000円)をオーダー。文字通り、キムチと、モツ煮込みの入ったラーメンであります。

写真では伝わりづらいけど、すごいボリューム。辛さとモツのバランスが絶妙で、麺とも相性がいい。すくってもすくっても、どんどんモツが溢れてくる。「えっ、まだ?!」とびっくりすること請け合い。こんなにたくさん入ってるの、見たことないわ。妻の鬼かき揚げ丼も三分の一くらい食べたので、お腹はパンパン。この辺、個性的なお店が多いわ。地元の人で店内もずっと混み合ってる。

そのあとは細々と買い物とか要件をすまし、夕方4時前に旭山動物園へ駆け込み。いつでも来れるし、何度も来たいので、1020円の年間パスポートを入手!イラストは市内の清掃車とか旭川大学とか、いろんなところで目にする、あべ弘士さん。マガンがデザインされていて、かわいい。

ちょうどぺんぎん館で「もぐもぐタイム」をやっていたので、ちょうどタイミングよかった。ペンギンのもぐもぐ見るのは初めてかも。

園内はどの館でもそうだけど、飼育・展示してある動物とその暮らしを通してなにを考えてほしいかを徹底的に考えてる。分かりやすいのがほっきょくぐま館で、温暖化とか気候変動でシロクマの餌や生息地がどうなってしまうか。環境の変化は何によって引き起こされているか。爬虫類館なら、マウスのよこにヘビを置いてるし、ヘビのもぐもぐタイムではマウスを餌にする。「残酷」「かわいそう」ではなく、生き物がどうしたってほかの命をいただいて生きているので、それはヘビも人間も同じだということ。子連れできて、そのポップを見るだけでも、生きた教育になるなぁ。

近くにこんな動物園があるって幸せ。時間が空いたら連れてくるようにしたい。

ゆったり落ち着く「層雲峡ホステル」と「緑丘蔵」

(つづき)

さて層雲峡ホステルの紹介であります。

元ユースホステルというだけあって、建物はしっかりと大きい。立派なボイラーもついていて、クラウドファンディングで改修の費用を集めたんだとか。(ちなみに浴場はシャワーだけの利用になります)。

フロントもしっかりしている。共同スペース(下の写真)は広々としていて、暖房がついてあったまる。外国からのお客さんが多くて、自分たち以外に日本人客は見当たらず。翌日の計画を練るのにぴったりの雰囲気。北海道や山にまつわる本もいっぱい置いてあるー。

 

登山客の利用が多いってのがよく分かるフロントの壁!

家族で泊まるので、和室を手配してくださった。6人では窮屈かも・・・と言われていたけど、全然そんなことなく、11時間近く熟睡しました。(途中、咳のしすぎで肋骨が痛くなって何度も目が覚めた以外は)。シーツ類はセルフで敷いて、翌朝に一階へ自分で持っていくスタイル。

朝ごはんは共同スペースで。名前が書かれていて、なんかいい感じ。ここに射し込む朝の光が優しくて、外の冷気が美しく感じられる。ご飯は別料金だけど、これで税込み3000円ちょっと。めちゃコスパ高い。大ぶりな建物っていうのもあるけど、スタッフさんの雰囲気もあいまって、妙にゆったり落ち着ける空間だった。周りは高額なホテルが多いので、ゲストハウスで選択肢が増えていくのって重要だわ。

帰り際、ここ上川町と隣の愛別町でした売っていない緑丘蔵(上川大雪酒造)の日本酒「神川」をセブンイレブンで入手。道産の酒造好適米と、大雪山系の麓でとれる天然水にこだわっていらっしゃる。地元の活性化をしようと三重から移ってきた方が興した酒蔵で、地域で応援しようという機運がある。旭川市内では手に入らないってのがいいわ。自分のゲストハウスでも置いてみたい。雑味がなく、風味が強すぎず、適度にきりっとしていて、めっちゃ好きな味。

大雪森のガーデンの絶景と、「すがわら」の塩はホンモノだった

森のガーデンの周辺からの絶景!

!旭川には、元祖といえるゲストハウスがあって、その名は「宿・レトロハウス銀座」と言う。そこ出身の志水陽平さんが今、層雲峡の旧ユースホステルをリノベーションして今年6月からゲストハウス「層雲峡ホステル」をやっている。旭川では有名な方なんです。

層雲峡は旭川の奥座敷みたいなところで、温泉郷として有名なところ。大きなホテルがひしめいていて、昔から知られている観光地だし黒岳(大雪山系)の登山口としても人気。

で、その層雲峡ホステルの今シーズン営業が10月19日で終わるということで、オーナーの志水さんに連絡して、家族5人と母の6人で急きょ宿泊することにしたのです。この日は移住してきてからダントツで大雪山系がキレイに見えたので、もっと近くにいけると思うと、ドキドキ。

仮住まいアパートの近くからの絶景!(下の写真はアパート裏手)

この日は午前中に旭川市立病院で長男・大滋(たいし)の受診。その間、下の子ども2人を駅近くの子ども施設で母に見てもらい、お昼に合流して塩ラーメンの名店「すがわら」でお食事。やっと来れたー!

日本初の歩行者天国・買物公園通りから一歩入ったところに本店があって、すこし駅からは歩くけど、ビルの中から見た店舗外観はご覧の通り味があっていい感じ。

ぜいたくにも、特上の塩(930円)をいただく。すごく澄んでいて、あっさりながらも、しっかりと余韻を残すスープ。正直、麺は好みではないけど、このスープと味玉はバツグンだった。近くのゲストハウスオーナーさんは「旭川で一番うまい塩」とおっしゃっていて、さもありなん、と。

一度帰宅して身支度して、高速道路(無料区間)をスイスイ通って、上川町というところに入る。もう日が暮れる寸前だったけど、せっかくだからと「大雪 森のガーデン」へ。ここは著名人もお忍びで通うとか噂されるハイクオリティのヴィラとか、ミクニさんのレストランとかが有名で、広大な「北海道ガーデン」も人気。あとカフェも。めちゃ残念なことにカフェのラストオーダーが終わり、ガーデンもシーズンが終わってしまってけど、周囲の眺望は超一級。雑誌とかで見てて憧れていたけど、その期待に違わぬ絶景でありました。

ここに見えるのがヴィラ。宝くじが当たったら泊まってみたい

おシャンティーなヴィラです

こちらがレストランです。懸賞が当たったら食べに来たい

そして暗くなって午後6時前くらいに、層雲峡ホステルに到着。森のガーデンからけっこうな距離があり、上川町の中心部から温泉郷まで20数キロあったので、その広さにびっくりしながら。

夜になるにつれて、体調はどんどん悪くなり、食事も楽しむ余裕がなく、8時台にはバタンキュー。志水さんたちと飲むこともかなわず、大変失礼なことをしてしまった。。。温泉郷にきたのに近くのホテルにある温泉にも入らず、トホホな夜になってしまった。                             (つづく)